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 君が僕を知ってる
(『雨あがりの夜空に』
 カップリング曲)
 RCサクセション

 
1980年(昭和55年)

少しでも心に思うことがあるならば
何もないようなふりをしてはいけない。
(キリンさん)

何から何まで君がわかっていてくれる
僕の事すべて わかっていてくれる


私は、ずっと本当の恋を知らずに生きてきました。

私は、欲が深くて、猜疑心が強くて、
自己愛が過ぎるから、恋愛ができないのだろう、と、
もう諦めていました。
恋はできなくても、
友情や家族愛に恵まれているから、
それで生きていけると。

そんなとき、大事な友人が、病で亡くなりました。
いつか会えると、その機会をうかがっているうちに、
その人との時間を永遠に失いました。
なぜ会いに行かなかったのだろうと、
激しい後悔の念に苦しみました。
自分のまわりにある大切なことがらが、
持続しないことを実感し、衝撃を受けました。
相手を気遣うという言い訳を盾にして、
自分が傷つくのがこわくて、
会うことを避けていたのかもしれない、と、
ひどく自分を責めました。
ものごとには逃せないタイミングがあり、
「いつかそうすればよい」
「自分がしたいと思えばいつでもできる」
という考えは、ほとんど幻想だと、悟りました。
今までの自分をリセットしたくなりました。
もう、こんな後悔をしてはいけないと、
心に誓いました。

そんなとき、出会ったのです。大好きな人に。

出会いは、高校の同窓会で
幹事として慌ただしく立ち働いているときでした。
メールの交換がはじまり、
思い出話やお互いのブランクを埋め合うように、
自分自身のことを書き交わしました。
昔なじみではあるものの、
その人は私にとってとても新鮮で、透明でした。
その人は、私の楽しいことも、悲しいことも、
全部吸い取り紙のように吸い取ってくれました。
そして私も、毎日のメールで、
一ヶ月もたたないうちに、
私のことを一番わかってくれようとしてくれる人は、
その人で、
その人を一番わかってあげられるのは、私だ、
と思うようになりました。

私は、心が普段と違って、
落ち着かなくなってくるのを感じました。
でも、それを恋と呼ぶのかどうかわからず、
混乱しました。

ただ、思ったのです。
何もないようなふりをしてはいけない、
少しでも、心に思うことがあるならば、
後悔をしたくないなら、
何かを伝えなければならないと。

そして、
「人間愛か、恋愛か、わからないけれど」
「返事はいらないけれど」
と、前置きを付けて、
「好きです」と送りました。
自分から初めてした、告白です。
すぐに「大好きです」と返事が来ました。

彼と私はもうすぐ50歳です。
お互いにいろんな経験をしてきたので、
周囲の友人は、私たちを大人のつきあいとみて、
静かに見守ってくれています。
でも私たちは、やっぱり高校の友人で、
気持ちは高校生のまま。
自分で書くのも恥ずかしいですが、
大人げない、かわいい恋愛をしていると思います。
今まで耳をかすめるだけだったラブソングに、
ひどく心を動かされ、
今日はこんなすてきな曲を発見した、
と報告しあったりするのです。
日々増えるレパートリーは、
そのときどきの私たちの気持ちの結晶のようなもので、
ベストソングはあげられないのですが、
その中で、この曲は、
マイソング(=私のことを歌った曲)として、
とびっきりの一曲です。

(キリンさん)

この歌は2度めの登場です。
私もこの歌が大好きです。
子どものころからずーっと、いつ聞いても
ははあああああ、となるほど、いい。
恋人というのはこういう人たちのことを言うんだろう。

わかってくれようとしているし、
わかってあげようとしている。
ほんとうには、わからなくて、
ときどきガッカリさせたり
諍いもあるだろうけれども‥‥。
「あ、この人は私のことを知ってる」と
思える瞬間がたいせつだと実感します。

だから、最後の二行で、
涙がぼわっとあふれました。
よかったなぁよかったなぁと思います。

ほんとだ、2回めの登場。
1回めはもう3年以上前でした。
これです。
ああー、熱く語ってますねぇ。
大好きです、このナンバー。
今回も投稿内容にぴったりで、
また聴きたくなっちゃいました。
YouTubeで探すと、清志郎とチャボがふたり
草原の樹の下で歌っている動画があるんです。
これがまたサイコー。
いつまでもYouTubeにありますように。

さて、投稿。
「好きです」に「大好きです」の返事。
大きくてしっかりとした歯車が、
がっちりと噛み合ったイメージがわきました。
すこしずつ育んで、確かめて、悩んで、意を決して‥‥
がっちり。
恋がはじまったんですね。
よかった。
おめでとうございます。
「大人げない」とおっしゃいますが、
いやいやそんな、おとなもこどももありません。
もう、どんどん、バラ色になっちゃってくださいよー。

ぼくはいま48歳ですが
10代のころから
格段の進歩をしたかというと
そんなことはぜんぜんなくって、
年月が経ったぶんだけの
いろんな知識や経験は増えていても、
あたまのなかはそんなにかわらないです。
ただ「大人」と見てもらえるのが
ラクといえばラクなのかもしれないです。
(キリンさん)たちも、
外見はすっかり大人、
でも中身は高校生のまま。
それでいいのだ! と思いました。

「この曲知ってる?」
「知ってる! いいよね。
 じゃあこの曲は?」
「知らなかった! もっと聴きたい」
みたいなやりとりを、
しているのでしょうねー。
うらやましいな、とても。

この週末は久しぶりにRC、聴こうかなー。

日々、くるくると表情を変えるような
活性の高い恋愛というのは
若いころに多く経験するもので、
年を重ねるとどうしても
それは遠ざかっていきます。
ここに寄せられる投稿の傾向としても、
やはり、大人の恋愛は、重く、
動きがとりづらいものが多い。

ですから、こういった、
大人たちがきらきらする時間を
過ごしているお話を読むと、
とてもうれしく感じてしまう。
うまくいけばいいなと応援してしまいます。

若いときにふと耳にして
ぱっと風景が変わってしまうような
刹那な恋歌もいいけれど、
大人になって、何度も何度もくり返し聴いて
やっぱり自分はこういう歌が好きだと
しみじみ感じる恋歌は、格別です。

どうぞよい恋がますます進展しますように。
それでは、次回の更新で。

2014-11-15-SAT

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