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 『最強のこれから』
 奥田民生

 
2010年(平成22年)

私たちもなにか
ひとつ変えたら
こうじゃなかったかもしれない。
(書きしるすのがカギ!)

森をぬけたら 山をこえたら 遠く海が見えたら
君と変えたら 君とこえたら 君と海が見れたら


今から3年ほど前に離婚しました。
会話がなくなって、
「おはよう」すらもいわなくなって、
一言も話さない日が続いていた時、
民生さんが公開レコーディング
「ひとりカンタビレ」が配信されると聞いて
ファンの私はパソコンの前でかじりついて見ていました。
音楽が好きで、ピアノを弾き、
自主アルバムも作っていた彼も興味を示し、
違う部屋でそれぞれ見ていました。
民生さんの使っていた機材や音の取り方など
「今のすごい!」「かっこいい!」とか言いながら、
気がつけば2人で話しながら並んで見ていました。
しかしふと、
「あれ? 今二人で一緒に見てしゃべってる」
と気がついた時、私は背中をまるめて黙り込み、
体中で彼を拒否しました。
その様子に気がつくと、
彼は静かに隣の部屋へと帰っていきました。
そのときに出来上がった歌がこの曲でした。
現場配信をとりこみ、初め聞いたときは
曲の出来上がりに感動していたのですが、
「ひとつ変えたら・・・」の部分を聞いたら
胸がつまって息ができなくなりました。

私たちもなにかひとつ変えたら
こうじゃなかったかもしれない、
二人で一緒にこえたら海がみえたかもしれない。

繰り返される「最高はこれから 最強はこれから」
という歌詞に涙があふれてとまりませんでした。
でも彼には泣いてることがバレないように声を殺して、
流れてくる鼻水はかまずに拭き続けました。

一人で生きていくと決めたけど、
とてつもない不安に押しつぶされそうになっていた私は
何度も何度も繰り返して聞き、
民生さんの雄叫びから力をもらい、
「大丈夫。最高の最強はこれからだ。」
と心の中に何度も刻み、
その後も踏ん張っていくことができました。

今でも仕事などで悩んだり行き詰まったときに聞いて
「よし!」と気持ちを切り替えます。
まだまだ「最高のこれから」はあるぞ、と。

(書きしるすのがカギ!)

「ひとつふたつぬけ」て
「ひとつひとつこえ」ると、
たしかに、次の段階に進みますよね。
ものごとって。
恋も仕事もそう。
で、越えるときって、
もう必死の形相でこけつまろびつ、
傷だらけになることもあれば、
知らず知らずにひょいって越えちゃって、
「あれっ? 違う場所にいるよ?!」
ってこともあるんですよね。
そして、思えば、
そんなことばっかりを繰り返してる。
そういうことがふたりでできたら、
っていうのが奥田民生さんのうたう
「最強のこれから」っていうビジョン。

もうほんとによけいなお世話ですが
「一人で生きていくと決め」ることは
ないと思います!
「方針変更!」あり、あり。
まだまだ「最高のこれから」はあるですよ。

おふたりのあいだにあった出来事と、
奥田民生さんのこの歌ががっちりとシンクロした、
そう、その意味で、これも恋歌と言ってよいのでしょう。

聴くことはつらいかもしれないけれどでも、
同時にこの歌に強く励まされている。
そこもすばらしいと思いました。

それにしても民生さんのすごさ。
「今のすごい!」「かっこいい!」と、
微妙な関係のふたりを無我夢中にさせて引きずり出す、
その音楽の腕力たるや‥‥。

そしてそうですね、
ぼくも武井さんに同意。
無責任に言い放つのもどうかとは思いますが、
まだまだ「最高のこれから」はあるぞ! だとすれば、
これ、当然、
未来をともにつくる誰かがあらわれる、
そんな「最高のこれから」も可能性としてはあるわけで!

挨拶しなくなって、全身で拒否オーラを出して‥‥
別れのリアリティにひりひりしました。
なにかひとつ変わったら
いっしょに乗り越えるなにかがあったら、
と思うし、
そういう物語はたくさんあるけれども、
あともどりは、なかなかできないですよね。
当事者にしかわからないし、
それでいいと思います。
あとは前を向くだけですね!

最高の最強は、
投稿に書いてくださったような毎日、
つまり、今日も明日も
気持ちを切り替えて、
踏ん張っていくことなのかもしれません。

民生さんの歌って
孤独なのにつながっている感じがして、
私もしょっちゅう勇気づけられています。

心を通わせることがなくなっていた二人が、
ある日、奥田民生さんの曲を、
いつの間にか二人で聴いてわくわくして‥‥。

ハッピーな展開をのぞむなら、
この曲をきっかけにして、
二人が互いを思う気持ちを取り戻す‥‥
ということなんでしょうけれども、
現実は、むしろ、逆だったんですね。

「体中で彼を拒否」していることを
お互いが、確認することになった。

恋に落ちた場面の描写、告白の克明な記憶、
真空パックしてある別れの場面、などなど、
いくつもの恋の場面がここには描かれましたが、
同じ家庭のなかで、ここまで
「気持ちが離れてしまったこと」が
表現されたことはなかったように思います。

それが、お互いの、そのときどきの気持ちや
心の揺れみたいな領域をとっくに超えて、
「どうしようもない事実」だということが
重く、リアルに響きます。

そういえば、奥田民生さんの曲は、
メロディーも歌詞も楽器も録音も
ふわふわと曖昧に浮いてるようなところがなく、
がっしりと噛み合っていて、
たとえ冗談のようなことを
歌っていたとしても、
「どうしようもなく現実的」ですよね。

印象的な投稿、どうもありがとうございました。
それでは、次回の更新で。

2014-11-26-WED

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