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 『MIRROR』
 Mr.Children

 
1996年(平成8年)
 アルバム『深海』収録曲

今だからこそ、
この恋が分岐点だったと
わかります
(S)

鏡となり 傍に立ち あなたを映し続けよう



恋愛の欠片もなく、
ただ「古田選手、かっこいいよねー!」
と言っていた高校時代。
ところが大学進学のため静岡から東京に出てきた途端、
恋愛的な要素が自分の周りにあふれ出しました。
自分は全く変わってないのに、
「好き」とか「いいと思ってる」とか
言われることが多くなりました。

自分は全く変わってないのに。

「東京の男の人って、
(自分みたいな人を好きになるなんて)
 何考えてるかわかんないなー」
って思ってました。

そうは言っても「好き」と思われるのは
もちろん嬉しいことで、
告白してくれた方とお付き合いを始めて3年、
バイト先の2つ下の後輩から告白されました。
「あなたに彼氏がいることは知ってる、でも‥‥」と。
きっと私をなんとか振り向かせようと、
運転免許をとってドライブに誘ってくれたり、
とてもストレートに愛情表現をしてくれたりしました。
そして彼氏が入り込む隙ができないくらいに
一緒にいたその後輩を、私も好きになっていました。

そのドライブ中にかけてくれたり、
一緒にカラオケに行くと歌ってくれたのがこの歌でした。
結局このお付き合いは
2年と続かずに終わってしまったのですが、
今でもこの曲を聴くと、
デートが終わった後に必ず鳴らしてくれたポケベルや、
「今の僕の気持ちだよ」と恋歌ポイントの歌詞を
少し照れながら言ってくれた彼の表情を思い出します。

それから15年弱経った数年前。
彼らしき人と山手線で偶然隣になりました。
他人の空似かもしれない。
でもそれにしては似すぎている。
声をかけようか、と思いましたが
その人の左手の薬指に躊躇してしまい、それきりでした。

この2つ下の後輩に出会わなければ、
きっと私は今頃最初に付き合っていた人と
結婚していたと思います。
多分小学生ぐらいの子供がいて、
幸せに暮らしていたことでしょう。
そんな将来が、見えていました。
今だからこそ、この恋が分岐点だったとわかります。
でも、ずっと心のどこかで
「この恋はそんなに大きなものじゃなかった」
と思いこみたい自分もいました。
そんなどこか引きずってしまっている自分に
決別するために送らせていただきました。
つたない文章で、他の投稿のように
ドラマティックな展開などなく申し訳ありません。

(S)

じつは、この投稿、
最後のブロックがまるまる、
投稿文のあとの「追伸」として書かれていました。
おかしな言い方ですが、
ぼくはそこにいちばん、
この方の気持ちが込められている気がして
投稿文の最後に掲載させていただきました。
(勝手にすみません)

「今だからこそ、この恋が分岐点だったとわかります。」

そう、好きになったり、離れたりしているときの恋愛は、
とてもとても客観視できるものではありません。
そして、ある程度距離を置いてみることができるほど
年月が過ぎたときには、それはもう、
自分の深いところに封じ込めてあったりする。

15年が過ぎて、偶然その人を見かけて、
それをこうして書いてみてはじめてわかった
自分にとっての「分岐点」。
ああ、なんだか、全体にミスチルの歌詞みたいですね。

彼氏が入り込む隙がないほどに
その人のことを
好きになっていたのだから、
それはもう、次の人のところに行って
よかったのです。素敵です。
恋は、していい。かえがたいしおもしろい。
そう思います。
でも‥‥昔つきあっていた人と
山手線で再会は‥‥ああ、こわいこわい!
なんつーか、どうしていいか、わからない!

だから、それは、私はきっと
他人の空似だったと思うことにしたいです。
そうです、
なぜか「引きずってしまっている」ことに
決別するために見た、まぼろしです。
そして、恋歌くちずさみ委員会の最後のほうに
こうしてご紹介できて、うれしいです。

こわい! たしかにこわい!
昔の恋人と電車で隣になるなんて。
むこうは気付かなかったのかなあ。
気付かなかったんだろうなあ。
そう思いたいですよね。

ぼくもまったく同じ境遇の
「大学進学のため静岡から東京に出てきた」
わけなんですけれど、
恋愛的な要素にはとんと気付かず
きらっきらにあふれた
音楽的な要素に囲まれておりました。
ものすごくたのしかったなあ。
あの感じが「恋」に向いていたら、
‥‥ああ、それはもう想像しただけて、
なんか、照れちゃうようなことですね。

恋って大きさじゃないかもしれないし、
ひきずっても、いいんじゃないかなって、
ぼくは思います。
きっぱり決別って、なかなかできないです。
したフリをしてるけど!

山手線での偶然の再会。
‥‥うん。
ぼくも、うちの紅一点が申し上げている、
「他人の空似だったと思うことにしたい」
に賛成したいです。
そのまぼろしのおかげで、
2つ下の後輩との恋を良い思い出として
タンスにしまえるのではないでしょうか。
ひきずることをきっぱりやめるのは
なかなか難しいことでしょうから、
タンスの奥の方に、そぉっとしまう感じで。
『MIRROR』を聴くときだけ取り出して‥‥。ね。

このコンテンツでたくさんの投稿を読んでいて
つくづく思うことがあります。
「後悔しています」という、後ろ向きの内容がすくない。

(S)さんの投稿も、
後悔しないようにと静かにこらえている気がして、
そのことに胸を打たれます。
「分岐点」を肯定的にとらえて、
しっかり前を見ようとしていらっしゃる。
その決意をぼくらに伝えてくださった。
光栄に思います。

コンテンツは、残すところ数回となりました。
やっぱり、ちょっとさみしいですね。
あと何回このごあいさつ↓ができるのでしょう。

それではまた! 次は水曜日にお会いしましょう!!

2015-02-07-SAT

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