第9回
特集「モテる」
永田
燃え殻さんは、
ツイッターについては、どうですか。
燃え殻
ツイッターって、
知らない人に、伝えることですよね。
で、本当に悲しい話でも、
友だちとか自分の近くの人たちには、
笑い話にして、
ごまかしちゃうこともあるんだけど、
ツイッターには
「悲しい」って書ける気がします。
糸井
本当は、悲しいんだもんね。
燃え殻
だから、糸井さんが今日の最初に言った
「なんで書くの? 見返りもないのに」
という質問に答えるとすれば、
近しい人には言えない感情だったりとか、
そういうものを‥‥吐き出したい。
糸井
なるほど。
燃え殻
そうじゃなかったら、何だろう、
ちょっとモノを置いてみましたというか、
ハンカチ落としみたいな感じで、
ツイートしているような気がしますね。
糸井
学級新聞みたいに、遊んでほしいんだね。
どこかの誰かに。
燃え殻
そうかもしれないです。
糸井
俺の気持ちと、すごく近いなぁ‥‥それ。
つまり、たとえば「仕事ですよ」という、
ひとつの形式があるおかげで、
「恥ずかし気なくやれる」んですよ。
燃え殻
ああ、なるほど。
糸井
それは、とってもありがたいことですね。
たとえば、お葬式ってものがなかったら、
いつまでも悲しがれるんだけど、
お葬式があったおかげで、
「今日から、悲しむのはやめよう」って
思えるじゃないですか。
田中
それ、「締切」も似た構造ですよね。
全員の原稿が「ほぼ日」に届いたあとに、
担当の奥野さんから
「4人分、さぁみんなで読みましょう」
って、全員分の原稿が
全員に送られてきた日があったんです。
糸井
ええ。
田中
それがね、メチャクチャうれしかったんです。
糸井
あぁ。
田中
この4人は、一度だけみんなで飲みに行って、
グダグダと真夜中まで話をして、
解散して、
次に会ったのは、その原稿で会ったんですよ。
糸井
そうか、そうか。そうか。
田中
で、全員の原稿を読んだら、
書いてる内容はみんなバラバラなのに、
『小ネタの恩返し。』に
書かれていることに対する「思い」は、
ピタッと一緒だったんだよね。
つまり「世の中、世知辛い」の逆。
糸井
ああ‥‥なるほど。
永田
で、そのときのメールのやりとりがね、
ものすごいテンションで(笑)。
田中
4人とも、興奮しまくってるんですよ。
永田
「俺たちはアベンジャーズだ」(笑)。
田中
「4人だから、ビートルズだ」(笑)。
糸井
その時代その時代で
「会うに決まってる人」っていうのが
いると思うんですけど、
僕は、この4人プラス浅生鴨さんは、
「会う人たち」だと思ったんです。
ネットでは、毎日のように会ってるけど、
リアルにつながったほうが、
もっとおもしろいのにって予感があって。
燃え殻
そんなふうに思ってくださってたんだ。
糸井
だから、思いついてうれしかったです。
種類の違う仕事してる人たちだけどね。
田中
バラバラですよね。
糸井
まったく女っ気がない集まりだけどね。
田中
ないですねえ(笑)。
糸井
ま、女っ気があったら
燃え殻さんだけモテちゃうからダメか。
田中
燃え殻さん‥‥あんた、
ひとりだけモテようとしてませんか!
会場
(笑)
燃え殻
トイレ‥‥。
会場
(笑)
糸井
でも、モテの研究を、
いちばんしてきたのは田中さんでしょう?
田中
してないですよ。
糸井
いや、ものすごい研究家だと思います。
いちばん深みがあるのは田中さんだし、
少なくとも、
東京に引っ越してきたらモテると思う。
田中
大阪があかんのか‥‥(笑)。
永田
いやいや、すでにモテてるんじゃない?
田中
あの、大阪って、ほんと恐ろしい町で、
大阪港とかで夜景を見ながら、
男が女に、
「きっと‥‥人生ってやつはサ」
とかなんとか言ったら、
後ろを歩いてる見ず知らずのオッサンが、
「へぇ、お前が、人生か」って。
会場
(笑)
田中
みなさん本当ですよ。マジです。
糸井
だから、人は横浜に行くのかね。
田中
そうですね。神戸とか。
糸井
その点、燃え殻さんは、
三の線ギリギリのところでカーブを描いて、
「ストラーイク!」って
二枚目のところにうまく落としてますよね。
永田
わかります。
田中
そのあたり問い詰めていきたいですね。
燃え殻
超トイレ行きたい‥‥。
会場
(笑)
糸井
でも、率直に聞くんだけど、
「燃え殻さん、好きです」みたいのって、
今、たくさんあるでしょう。
燃え殻
ないです、ないです。
今は、本当になくて、
連載をはじめたころのほうがありました。
糸井
あ、そうなんだ。出はじめのほうが。
燃え殻
僕、今43なんですけど、
学生時代に、まったくモテなかったので、
「モテる」については、
それこそ田中さん以上に考えてるんです。
どうやったらモテるんだろう‥‥って。
糸井
いいねぇ(笑)。
燃え殻
間違った努力もメチャクチャしてました。
高校の授業が終わったら、
文芸坐に行って、
オールナイトの映画を朝まで6本観たり。
古賀
それでモテようと‥‥?
燃え殻
その映画評を、例の学級新聞に書いたら、
モテるんじゃないか‥‥とか。
古賀
それ、何を書いても、空しさが残りそう(笑)。
燃え殻
実際、空しかったです。
田中
本当の意味で「燃え殻」じゃないですか。
糸井
わかった。
田中
はい?
糸井
わかりました。
ここにいる4人のバラバラな個性を、
どうやって発揮させたら
おもしろいんだろうなってことを考えて、
『小ネタの恩返し。』の解説を、
それぞれに、書いていただいたわけです。
燃え殻
はい。
糸井
で、次なる展開として
今度は「みんなで力を合わせる」何かが、
いいんじゃないかなと思ってました。
というわけで、キミたちは、
「モテる」特集の雑誌をやったらどう?
田中
あー‥‥おもしろそう!
糸井
ここにいる4人が、
原稿を書いたり、編集したり、会議したり。
みなさんの取り柄である
「書きたいから書いている」という部分が
ベースになった、
売れようが売れまいが関係ない雑誌。
古賀
同人的スタンスですね。すごい楽しそう。
糸井
しかも「モテる」のテーマがいいのは、
第2号の特集で
「続モテる」とか、いくらでもやれるところ。
創刊号、特集「モテる」。
第2号、特集「続・モテる」、
第3号、特集「続々・モテる」みたいな。
燃え殻
どこまでも「モテる」を考える雑誌。
糸井
それこそ『イトイ式』で
俺が言ってたことなのかもしれないけど、
最後は「わかんないですねぇ」。
田中
結論はない、と(笑)。
糸井
で、第3号くらまで「モテる」でいって、
4号目の特集は「幸せ」。
田中
大きい(笑)。
急に、ものすごく大きい(笑)。
糸井
「モテる」「モテる」「モテる」「幸せ」、
で、第5号で再び「またモテる」‥‥。
会場
(笑)
古賀
帰ってきた(笑)。
田中
「幸せ」は小休止にすぎなかった(笑)。
永田
本当だ(笑)。
燃え殻
それ、ほんと読みたい‥‥し、やりたい。
糸井
「僕、それ、タダでも参加したいですよ」
という人、いっぱいいると思うよ。
ほら、浅生鴨さんを、
うまく仲間に引っ張り込んだりして‥‥。
あ‥‥‥‥はい、はい。時間ね。
こんな話で時間が来てしまいました(笑)。
田中
大丈夫だったんでしょうか(笑)。
糸井
僕自身は、すごく楽しめました。
きっとお客さんも同じ思いだと思います。
ただ、今日ここに集まってくれた4人が、
久米宏さんより有名でなく、
松本隆さんより
風采が上がらなかっただけで‥‥(笑)。
会場
(笑)
田中
そんな僕らの話を、
2時間半も聞いていただきまして‥‥
ありがとうございました。
糸井
ありがとうございました。
<おわります>
2016-12-30-FRI
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN