『人間は何を食べてきたか』は
誰が観るのか?
あ、オレか。
小山薫堂さんと、軽めに食を語る。

第1回 小山薫堂さん、自分の生っちょろさを知る
 
  (小山薫堂さんプロフィール)

糸井 小山さんとは、間接的には
色々とご縁があるんですよね。
フジテレビでやっていた
「テレビブックメーカー」(※註1)とか。
あのときは小山さんですよね?

※註1 テレビブックメーカー
1991年4月〜1992年3月まで放映された
フジテレビの深夜番組。
出場者は「カノッサ」と言う単位の架空の貨幣をもらい
その貨幣を使って ある出来事の結果を予想しギャンブルをする
といった内容であった。
ちなみにdarlingはレギュラー出演者の一人。
最終的に、最高カノッサを獲得したことが本人の自慢。
また、ツキのないときに、芸名として
「糸井重里7」だとか「糸井重里777」などという
みもふたもない名前を名乗っていた。
小山 そうです。
糸井 あれは、えっらい大変だったでしょう?
小山 ええ。でも、けっこう楽しかったですけどね。
糸井 フジテレビの、深夜枠を開拓する部隊の…。
小山 の、ひとり、みたいな。
ええ。そういう感じです。
糸井 いや、その話はあんまり関係ないかもしんないけど、
ちょっと面白いなと思って。
深夜にこう、荒野があったわけですよね。
そこの砂漠みたいなところに、
パイオニア部隊が乗り込んで行ったわけですよね。
小山 ええ(笑)。
糸井 あのときがデビューなんですか?
小山 あのときが、まあ、デビュー直後ぐらいですね。
大学卒業したときが、
大学4年のときに放送作家になったんですけど、
そのとき最初、
「11PM」(※註2)だったんですよ。

※註2 11PM
お若い読者の方のためだけにあえて説明すると

1990年3月に終了した
日本テレビ放映のあまりにも有名な深夜番組のこと。
大橋巨泉さんによる
「野球は巨人、司会は巨泉」のフレーズは
ここで生まれた。
シャバダバシャバダバ〜♪
糸井 誰の司会のとき?
小山 吉田照美さんですね。
で、僕、吉田照美さんのラジオ番組を
ずっとやってたんですよ、
その縁で「11PM」をやることになって。
糸井 はぁー!
小山 で、しばらくしたら、深夜で。
糸井 深夜開拓部隊に?
小山 ええ開拓部隊に(笑)。
なんか、入ることになり。
今もずっと深夜やってるんですけどね。
糸井 え?今はなんですか?
小山 今はフジテレビ、
「禁じられた遊び」
(※註3)っていう、
篠井英介さんっていう役者さんがやってる…。


※註3 禁じられた遊び
毎週木曜日フジテレビ系列で
深夜24時40分より放映中。

http://www.fujitv.co.jp/jp/b_hp/kinasobi/
糸井 観てます!
小山 え?ほんとですか?
糸井 僕は、深夜はつけっぱなしですから。
スポーツニュースの「すぽると!」後は。
ずっとつけっぱなしで、基本的には何があろうが、
ずーっと8チャンネル(フジテレビ系列)でフィックスです。
「カノッサの屈辱」(※註4)あたりは
作家としてやってたんですよね?

※註4 カノッサの屈辱
1990年4月から1991年3月までフジテレビで
放映された深夜番組
現代風俗を歴史の教科書風に紹介するという伝説的深夜番組。
記念すべき第一回目は日比谷エジプト文明から始まる
「近代ホテル文明の成立」であった。
小山 ええ、「カノッサの屈辱」は
やってました。
糸井 データマン的な人は、いた?
小山 各回でいましたね。
ビールやるときは、ビールの専門家に、
やっぱり入ってもらって。
それはやっぱり、そういう方がいないと、
なかなかわかんなかったりしましたし。
糸井 ふーん。その流れで
「料理の鉄人」(※註5)みたいな深夜っぽいやつが、
ゴールデンに移動していったりもして。

※註5 料理の鉄人
あえて説明すると
“美食アカデミー”の
主宰・鹿賀丈史が国内外から
超一流シェフをキッチンスタジアムに招き、
和・フレンチ・中華・イタリアンの鉄人に料理の腕を競わせる。
毎回、異なるテーマ素材が与えられ、
1時間で料理を完成させるのがルール。
1999年9月に終了。
小山 そうです。


日本中の人が観るべきだっ!
糸井 僕が小山さんの名前をテレビのエンドロール字幕で
気にするようになったのっていうのは、
やっぱり深夜だったと思うんです。
そこでこの「人間は何を食べてきたか」という
ビデオの登場について顛末をお話すると・・・。
同じように夜中にテレビ観る人っていう中に、
たまたま宮崎駿さんがいてですね。

これを観ちゃったんですよね、この番組。
すげぇ!って思って。ぜんぶ観た、と。
で、これがそのまま、
オンエアされて消えて行くのか、
って思ったら、
「日本中の人が観るべきだっ!」
っていうふうに思ったらしいんですよ。
小山 はぁー!
糸井 で、「あれの権利はどうなってるんだっ!?」
「うちで買えっ!」
ってことになって。
で、普通だったら、
まあ、シルクロードとかは別として、
ビデオやDVDにならないようなものだと思うんですけど。
小山 ええ
糸井 あの、宮崎さんが、
えらく気に入っちゃったのが原因で、
「糸井さん、あれは観ましたか?」
とか言われるようになって。
ジブリとつき合いのある人たちの間で、
大評判になったわけです。
そしてついに、こういうかたちで出ることになった。
僕も、
「観たら面白いだろうな」
って思ったんですけど、観る機会が無いじゃないですか。
で、こうやって発売されることになって、観たら、
「ほんとだ!、面白い」と。

だいたい、ドキュメンタリーのソフトを、
うちで買って観るっていうのは、
かなりの冒険だと思うんです。
小山 これ、幾らするんでしたっけ?
糸井 DVD8巻、全巻合わせると39,480円。
小山 (笑)かなりの投資ですよね。
糸井 うん。「北の国から」だったら
買いやすいんですけども。
小山 ええ(笑)。
糸井 これを買うっていうのは、
常識的には、ありえないくらいのことですよ。
でも、発売したいって、
宮崎さんが熱をこめて言ったときに、
みんなが、ほんとかなぁ、と
とりあえず観たんです。
ここで、大人たちに興奮が「おおっ!」と感染した。
発売元は
ブエナビスタホームエンタテイメントなんですけど、
ここをも巻き込んじゃったわけですね。
僕も、これがどう売れるかっていうのが、
ものすごく楽しみになっちゃって。
実際にいいものだけど、売るってのは常識の外ですから。
小山 ええ。
糸井 で、ちょうど時代が、
「食い物」に向いてるんだ、
っていう気がすごくするんですよ。
小山さんは放送作家って立場だけど、
やっぱり「食い物」のところに、
知らず知らずのうちに寄ってきてるよなぁ
って思って。
小山 あぁ(笑)。
糸井 で、「食い物と私たち」について、
ここでは話をしようと。
小山 はい(笑)。
糸井 で、まあ、総論的なことを先に言っちゃうと、
ひとつは、食いしん坊の流れがありますね。
小山 ええ。
糸井 で、もうひとつは、
エコだの農業だのの絡んだ、
こう、「食い物」の生産現場の話で。
小山 はい。
糸井 これはどっちかっていうと
生産現場寄りのシリーズなんですけど、
どっちからでも食い物に行っちゃうっていう、
いま時代のムードがあるんですね。
小山 ええ、ええ、ありますね。
糸井 で、これ、ご自分の体験に合わせて、
「食い物と私」の話から入ってこうかな、って。
小山 (笑)はい。

女を口説くための武器
糸井 で、小山さん、もともと、
「食い物」との繋がりは、
何かこう、大転換点みたいなものはありましたか?
小山 えー、ま、転換点、
ふたつ自分の中にあると思うんですけど、
ひとつは、ホイチョイの馬場さんの
あれ
(※註6)じゃないですけど、
女を口説くための武器になるっていうところの
「食い物」、が最初ですね。


※註6 ホイチョイの馬場さんのあれ
『東京いい店やれる店』/小学館
誰と食べるかという視点を欠いたレストラン本と、
デートの基本である食事を軽視した
マニュアル本を、統合。
デートアイテムとしてのレストラン本、
54章360店を網羅。
糸井 なるほど。「店」からですね。
小山 店というか。ええ。
デートの舞台としての店というところと、
で、そのあとに「料理の鉄人」という番組をやって、
料理人の生きざまという意味での「食い物」。
糸井 はぁ、はぁ。
小山 で、あの、
絵画を鑑賞するようなもんだと思うんですね。
糸井 うん、うん。
小山 芸術家の作品を鑑賞するのに
近い楽しみ方があると思い、
それで、最近はずっと、
ま、それ以来、
ずっとそういうふうに来てたんですけど。
この「人間は何を食べてきたか」を観てですね、
いかにその、自分がこう、
生っちょろいところで、
生きてきたのかっていう(笑)。
糸井 これを観たら
みんな思うと思う(泣笑)。
小山 と思いますよね。
糸井 思う!

小山 これ観ると。
だから僕、半分面白いと思う反面、
すごく後悔したんですよ。

これを観てしまったら、
「じゃあ明日は、ロブション
(※註7)のとこ行こうかな?」
っていう気には、ならないですよね(笑)。


※註7 ロブション
超がつくほど有名なフレンチシェフ、
ジョエル・ロブション氏のお店である
東京は恵比寿にあるシャトーレストラン
「タイユバン・ロブション」のこと

http://www.global-rights.co.jp/ROBUCHON/
糸井 それ、だけど、
矛盾そのものなんだけども、観てしまう。
その、方向に行ってますよね、状況は。
小山 ええ。
糸井 観たいんですよね、また。
小山 観たいですね。
糸井 やっぱりその、
鉄人よりも、ナンパ…。
小山 ですね、最初は。
糸井 ナンパ・グルメっていうか。
それは、気づくきっかけとか、
あったんですか?
小山 気づくきっかけですか?
糸井 やっぱ、「女は食いもん」だ、みたいな。
小山 「女は食いもん」(笑)。
「女は食いもん」だ、はですね、
デートするという言い方を、よくしますけど、
じゃ、デートっていうのは、
いったい何なんだって、
突き詰めていくじゃないですか。
そうすると結局、
男は最後にセックスに持っていくための
過程でしかなくて、

その、途中で、
車に乗ってる、映画を観ている、
とかっていうときに、
結局クライマックスっていうのはその、
食のところになると思うんですよ。

その食が、うまくいくかどうかで
次の、最終目的にいくことを考えたときに、
いかに良い映画を観せるかとか、
いかに良いドライブコースとかっていうのも
大切なんですけど、
結局はその、
最後のホップ・ステップ・ジャンプの
ジャンプが食なんで、
そこをいかに押さえるかという。
糸井 そうですねー。
そんなことを思うには、失敗があったという…ことも?

(つづきます)

ジブリ学術ライブラリー 人間は何を食べてきたか』
「腰を据えて食べることを考える。
NHKのドキュメンタリー番組が、人々を動かした。」

2003-02-21-FRI


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