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(小山薫堂さんプロフィール) |
糸井 |
米は、今ね、「僕はこれだな」、
っていうのがあるんで
その米を小山さんに送りますね。 |
小山 |
ええ、シェフが炊きますよ。 |
糸井 |
いろんなとこで、ご飯を美味しく炊く人もいるし、
美味しいご飯をみんな仕入れているんだけど、
ああいう基礎的な何かっていうのがね、
やっぱり、基準値ですよね。
その後で、枝葉のところは変化していくんだよね。
小山さんにとって
事務所にシェフを入れるってことの
次の時代っていうのは、あるんでしょうか? |
小山 |
個人的にっていうことであれば、
それはやっぱり、自給自足じゃないですかね。 |
糸井 |
はぁー…、やっぱりっていう感じですね。
今は僕が農業関係の仕事を
やってるせいもあるんだけど、
話をすると、みんなそういう話になるんですよね。
都会に住居を1ヶ所持ってて、
もうひとつそういう場所を持ってて。
そこで、全部とはいわなくても、
作ったものを食うような生活。
そのもう一軒にあたる場所はね、
ものすごくいっぱいあるんですよ。
捨てられた土地がいっぱいありますから、
そういった土地を使えばいいんですよね。
ほんとに流行るかもね。
今、僕、貸し菜園みたいなもの(※註1)を、
インストラクターを育てながら
作っていくっていうのを、
やろうとしてるんですけども。
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小山 |
へぇー。 |
糸井 |
「どうやって育てると美味しいのができるか」
っていうのは、やっぱり指導員が必要なんですよ。
その指導員を育てるために、
家庭菜園を切り売りして、
そこで採れた作物を、営業する
っていう循環を作っていく指導員を
作って行こうと思ってるんですよね。
それともう1コはね、
小山さんなんかの側から言うと、
ぜひ、そっちを発展させてほしいんですけど
素材の名産地に、料理人がいないんです。 |
小山 |
うんうんうん…あっ!(パンッと手を叩いて)
それはそうですね。ほんっとそうですね。
素材が良すぎるが故に、
料理人が生まれないというか。
僕も天草出身なんですけど
天草の魚とか、ものすごく美味しいんですけど…。
結局は、そのまんまが
いちばん美味いという結論になって
料理人がやっぱ育たないんですよね。 |
糸井 |
それとやっぱりカツカツで生きてたことも
影響していると思うんです。
30年前にコレステロールが足りない時代には、
採れた魚を食うっていうときに、
醤油に金かけちゃったら、もうコストになるし、
料理をする時間のコストもかかるしっていうことで、
やっぱりカツカツで生きていた時代の名残があって。
つまり、料理番組でコーディネートを
する人はいても、産地をコーディネートする人は、
いないんですね。
僕、生まれは上州なんですけど、
小麦の産地なんですよ。
うどんは旨いんだけど、「つゆ」がまずいんです。
みんな「旨い」って言ってるけど、
あれはうどんが強すぎるから、
話が「つゆ」にまで及ばないんですよね。
お店に置いてある七味も
そこらのスーパーで買ってきたような七味で
あることも多いですし。
あれを鉄砲伝来みたいに、
やったらいいなぁと。
海のものを扱ってた人たちには、
山国に行って料理を作らせるとか、
そういう、料理技術の流通っていうのが
どうも僕の手に余るんで、
小山さんに何か考えてもらいたいと。 |
小山 |
(笑) |
糸井 |
もったいなくて。
「素質に甘えるな!」みたいな感じなんです。
地肩の強いやつにコントロールを教える、みたいな。 |
小山 |
それは、あるかもしれないですね。 |
糸井 |
そういうときに、料理人たちが、
さっきのフードコーディネーターの方の
恩返し的な気持ちで、
「じゃあ僕は、この地域でやってみます。」
みたいなことをやったら、いいねえ。
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幸せな食のために |
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糸井 |
そういえば、さっきから話に出ている
永田先生が自分で作った野菜があるんですよ。 |
小山 |
へぇーっ(笑)。それは、すごそうですね。
ワインで言うと、ドメーヌものっていう(笑)。 |
糸井 |
これはね、ひどいんだよ。 |
小山 |
ひどいって何ですか?もう、硬派? |
糸井 |
もう、買えっこない、
つまり、売りようもないし、すぐダメになっちゃうし、
大根も、すごく小っちゃかったりするんですけど、
これがもう、ほんっとうに旨いです!
葉ものなんかは、
生でも調味料加えたくらいの味がしますね。
それってほんっとになんでもない狭いとこで、
遊び程度に作ってるんですけど
本人が手を下してるんじゃなくて、
近所の大工さんがやってるんです。 |
小山 |
へぇー。 |
糸井 |
だから、ノウハウとして、
手練手管がいるわけじゃないんです。
永田先生に言われたことを
その通りに守ってるだけなんで。
その意味ではね、
あれをみんな日本中がやるっていうのが、
僕の夢なんですよね。
今、うちのサイトで連載している大学生が
弟子入りで行ってるんですけど(※註2)。
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小山 |
ハハハッ、ほんとに? |
糸井 |
そこで朝飯っていうは、
ボールいっぱいの野菜らしいんだけど、
食えちゃうらしいんですよ。
美味しいから。 |
小山 |
へぇー! |
糸井 |
今そこで、すっごく雑に作った
カモミール・ティーを、
永田先生から貰って。
これがビニールの袋に、
ただ詰ってるだけなんですけど。
このカモミール茶の2番ダシが効くんですよね。
他にいいのを探しても
あれほどの強さはないんだよ。 |
小山 |
へぇー…。 |
糸井 |
だから、生命力なんでしょうね。
素材は、まだ研究のしようがないですもんね。
いま名産地って言われてるとこって、
たくさん作ってるところが
名産地っていうことになるんですよ。
適地で、こういう時期にこういう育て方で、
っていう意味での名産ではないんで。
だから、みんな南高梅、南高梅(※註3)といっても、
梅を作ってる人がいっぱいいるという意味が強い。
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※註3 南高梅
梅の最高品種の一つ。
母樹選定調査に深くかかわった
南部高等学校の園芸科の生徒たちの
努力に敬意を表し、
南部高校を通称「南高(なんこう)」
と呼ぶことから、
この梅を「南高梅」と命名したのだとか。 |
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小山 |
(笑)へぇー。 |
糸井 |
じゃ、最後に一言ずつ言いましょうか。
現在、奇形的にさえ発達した食文化と、
食うっていうことが、
生きることそのものだったものっていうのが、
ホントは繋がる。
別の道だと思ってたら
大間違いじゃないかなと思うんです。
お互いがお互いを知るっていう時代が来てるんで、
そこは繋がるといいなっていうのが、
僕の結論ですね。
そのためにもこの「人間は何を食べてきたか」を
やっぱり、怖がんないで見たほうがいいよね。
小山さんはどうですか? |
小山 |
僕は、さっき言ったこととおんなじなんですけど、
「生きるために食べる」ということを、
これを観て、知った上で、
「食べるために生きていく」のが幸せかな
という気がしますね。 |
糸井 |
いいね。ありがとうございました!
今日はホントに面白かったです。
(おわりです。)
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