パニック障害になった日。
- 金沢
- 僕がパニック障害になった日は、
忘れもしないんですけど、
大学4年の時、池袋の映画館に1人で行って、
観てる途中に、なんか息苦しくなって。
だんだんひどくなって、
途中で映画館を出たんですけど、
意識が半分飛んで、
駅前で倒れ込んでしまったんです。
- 園田
- え、倒れたんですか?
- 金沢
- はい。
いわゆる過呼吸なんですけど。
「このまま死んでしまうんだ」っていう恐怖と
息ができない苦しさで倒れちゃって。
その発作自体は30分くらいで収まったんですけど、
その日から、「また起きたらどうしよう」
って不安が消えなくなってしまった。
次の日から、電車も、映画館もライブハウスも、
ひどいときは風呂場も怖いし、
とにかく身動きがとりにくい
狭い所は全部ダメになって。
- 園田
- 予兆はなかったんですか?
- 金沢
- 予兆、まったくなかったんですよね。
だから余計ビックリしちゃって。
園田さんは、きっかけはどんな感じでした?
- 園田
- 私は、逆に、まったく覚えてないんですよ(笑)。
というか、「このときから」っていう
はっきりしたきっかけがなくて。
- 金沢
- そうなんですか(笑)。
- 園田
- 私、集団行動がとにかく苦手で、
学校に行きたくない子だったんですよ。
「ちょっとお腹痛いなぁ」
って仮病つかって休んだりして。
それが大学に入ったら、
本当にお腹が痛くなるようになっちゃったんです。
でも周りに「そんなの誰でもなるよ」って言われて、
そうなのかなあって。
- 金沢
- 言われますよね、「よくあること」って。
- 園田
- ただ、そのあたりから、熱中症で倒れるとか、
熱出して倒れるとか、たまたま重なって。
あと、人間関係のいろんなことが重なったりとか。
それまで、ずっとほんのり息苦しくて、
「生きづらい、生きづらい、生きづらい」
と思っていて、
大学4年生で、一気に体調に表れ出したんだと思います。
- 金沢
- うんうん。
- 園田
- 朝ご飯食べてると、もう意味もないのに、
泣けてきちゃうんです。
涙がボロボロ、ボロボロ出てきちゃって。
それで、さすがに病院に行ったら、
症状は言われないんですけど、
「ちょっと疲れちゃったね」
って言われて、薬をもらいました。
- 金沢
- そこで、お医者さんからパニック障害みたいな言葉が。
- 園田
- それは一切言われてなくて。
- 金沢
- 言われてないんだ。
じゃあ、今まで、そういうふうに診断されたこともない?
- 園田
- えーっと、「病名は言わない」って言われました。
- 金沢
- ああ、なるほど。
- 園田
- 私、うつも併発してたので、うつの薬も飲んでたし。
だから、処方箋をみて調べれば、
どういう診断をされているかはわかるんですけど。
先生は「言わないよ」って。
「ただ、1つ言えるのは、絶対死なないから大丈夫」
って言われましたね(笑)。
- 金沢
- 僕も病院に行ったんですけど、逆にハッキリと
「典型的なパニック障害だね」って言われて。
得体のしれない不安から、
形あるものとして理解できた感じで、
かえって病名がついたことで安心しましたね。
- 園田
- あぁ。
- 金沢
- だから、そこであんまり落ち込まなかった。
- 園田
- そうなんだ。
- 金沢
- パニック障害って、うつを併発しやすいらしいんですよ。
僕は、パニック障害だけで。
- 園田
- 金沢さんは「病名がついたことで安心した」
って言ってましたけど、
私は逆に、症状がひどいときは、
そういう病気に関する情報を見るのもつらくて。
だから、「パニック障害」っていう言葉も
なるべく使いたくないんです。
- 金沢
- 人によってそれぞれ違うんですね。
- 園田
- そうですね。
金沢さんは、一番しんどい時を言葉にすると、
どんな感じなんですか?
- 金沢
- うーん。
「息ができなくなる」っていうか、
とにかく本当に苦しくて。
じつは過呼吸の大きい発作って、
その大学4年の最初のときだけなんですよ。
息ができなくて倒れるくらいになったのって。
でも、それがあまりにも苦しくて、
それ以降は、「また起きたら、どうしよう」っていう。
- 園田
- 息ができなくなる苦しさ、に対する恐怖?
- 金沢
- そうですね。
不安が、動悸とかめまいを引き起こすんです。
すごく汗かいたり。
- 園田
- それは私もいっしょですね。
「動悸と息切れで、死ぬかもしれない」って。
普段は全然気にしない呼吸が、
いきなり、バクバク、バクバクって。軽い酸欠状態で。
何がなんだかわからないみたいな瞬間が
苦しさで言ったらピークかな。
- 金沢
- 物理的につらいんだよね、呼吸ができないって。
どうやって息したらいいか分からなくなる‥‥。
- 園田
- でも、それはほんとに物理的なことで。
その後、家を1歩も出られなくなるっていうのが、
本当は一番つらかったかも‥‥。
- 金沢
- そうなってしまった自分自身に対する
気持ちがつらいってこと?
- 園田
- そうですね。
今までできたことも、びっくりするくらいできなくなって。
赤ちゃんか、ってぐらいに、
本当に、なにもできない。
たとえば、外で症状が出たらどうしようって思って、
家から出られなくなった時があって。
その時は、まず3分かかるコンビニに行けるようにして。
で、そこが慣れたら、5分かかるスーパー。
次は10分かかる最寄駅。
最終的には、電車に乗って遠くに行ってみる。
みたいに、少しずつできることを増やしていきました。
- 金沢
- すごくわかる。
僕も電車に乗れなくなって。
急行電車は怖いから、まず各停に乗れるようになろうって。
- 園田
- 私も症状つらい時は、まったく一緒でした。
あえて各停に乗る。
- 金沢
- ほんと、一緒ですね。
- 園田
- で、本当に苦しくなったら、各停から降りて。
- 金沢
- あとは、たとえば、最初は、誰かと映画館に行って、
大丈夫だったら、1人でも行くとか。
誰かと一緒だと多少は落ち着くので。
できることをちょっとずつ増やすっていうのは、
園田さんと一緒ですね。
(つづきます)
2018年7月9日(月)