心の支えになるもの。
- 園田
- 私、そういう風に「しんどい」って思った人が、
当たり前に休める社会になったらいいな、
って思っていて。
- 金沢
- 何がしんどいかって、人によってぜんぜん違うし。
- 園田
- そうです、そうです。
「電車乗れなくなっちゃったから、遅れます」
って言える世界だったら、
なんかいいなぁって思って。
風邪になった時、ゆっくり休むじゃないですか、
それと同じで、しんどくなったとき、
ゆっくり休める場があったほうがいいなって。
「休めるんだ」って思えることが、不安を少なくして
結果的に症状がでる人も減るんじゃないかなって。
最近、そんなことを考えてます。
- 金沢
- なるほど‥‥。
それは、園田さんがそういう苦しさを
経験した人だからこそ、
考えられることだと思う。
- 園田
- 自分が楽になって、
ちょっと周りの人とかも考えられる余裕が
やっと出てきたんだと思います。
- 金沢
- 苦しんだからこそ、
やれることとか、気付けることって絶対あって。
きっと、過去をやり直せるとしても、
パニック障害じゃない自分に
なりたいとは言えないよね。
- 園田
- 言えないですね。
本当に、苦しんだ分、
今ひとりで苦しんでいる人の
重みはすごくわかるので。
なんかその、本当に、
なんだろうな、うーん‥‥。
冷たく突き放したりせずに人の話を聞けたり、
相手のためを思って出せる言葉の
バリエーションが増えたりして、
そうなって、味方が増えたんですよ。
そんな、今の自分のことが好きだし、
まぁ、投資期間だった、
ってことでいいかなって(笑)。
だから、無駄な時間だったとか、
遠回りをしたと後悔してはいないですね。
- 金沢
- 味方が増えるって感覚はすごくわかる。
この病気になったことで知れたことがあったり、
今日のこの場もまさにそうだけど、
新しい出会いがあったり。
- 園田
- ああ、はい。
- 金沢
- あとは、音楽とか本とか
作品の受け止め方も変わってきた気がします。
「パニック障害の自分」
っていうフィルターができたというか、
そのフィルターを通して、
いままでと違う感じ方ができるようになった。
- 園田
- 苦しいときって、小説でも音楽でも、
そこに「救い」とか「答え」を
探そうとしているときがありますよね。
中村文則さんの『土の中の子供』っていう小説の、
クライマックスのシーンなんですけど。
ずっと恐怖に抗い続けて、
抵抗し続けてた主人公が、いきなり、
「もううんざりだ」って言って
一気に体の力を抜く瞬間があるんですね。
- 金沢
- うんうん。
- 園田
- で、その瞬間に、「私はこれだ!」と思って。
「今までずっと不安と戦って、
抵抗して苦しかったけど、
この不安を受け入れてしまえば、
楽になるんじゃないか」って思って。
症状が出るたびに、毎回、
あのワンシーンが頭に浮かんで、
それで落ち着くようになっちゃって。
私の中で、一番、効果てきめんだった小説ですね。
「ありがとう、中村さん」って何回思ったか(笑)。
- 金沢
- 僕は、パニック障害の人が作った作品や、
パニック障害と向き合いながら
がんばっている人が好きで。
たとえば、プロ野球選手の小谷野栄一さんが、
パニック障害の発作で
汗びっしょりになりながら打席に向かう姿とか、
そういうものに勇気付けられるんです。
- 園田
- あー、そうですね。
- 金沢
- あとは、パニック障害を公言している
KinKi Kidsの堂本剛さんとか。
自分がパニック障害になってから
聴き始めたんですけど、
堂本さんはパニック障害者の目線の曲を
いくつか作っていると思っていて。
- 園田
- それは、KinKi Kidsの曲?
- 金沢
- ソロの曲で、作詞作曲が堂本剛さんなんですけど。
『ORIGINAL COLOR』って曲があって。
「胸の高鳴り」とか、「鼓動の数」とか、
歌詞を拾っていくと
パニック障害のことだと思ったんですよ。
実際、堂本さんがどういう想いで
作ったのかは分からないけど、
僕にとってはパニック障害のテーマ曲で。
で、オリジナルカラー、
「それも人それぞれの色だから、
それでいいんだよ」って言ってくれてる気がして、
なんというか、
寄り添ってもらえたような気分になるんです。
- 園田
- うんうん。
そうやって、心の支えになるものが、
人それぞれにあるんですよね。
- 金沢
- うん、それは家族だったり友達だったり、
自分の中の決意とかみたいなものかもしれないし。
他人の作品とか、それから、小谷野選手みたいに
プロの世界でがんばっている人の姿とか。
そうやってがんばっている人や、
寄り添ってくれるモノを知って、
強くなってきた自分がいるんだと、
最近は思ってます。
- 園田
- さっき話した中村文則さんの小説とか、
音楽とか本とか、
とにかく、いろんな人から
たくさんうれしい言葉を貰ったなっていう感覚が、
やっぱり自分の中にあるんですよね。
(次回からオリックス・バファローズの
小谷野選手にお話をうかがいます。)
2018年7月11日(水)