第4回病気が一番の個性。
- 園田
- パニック障害を、
完治させようって思ったことはありますか?
- 小谷野
- ないですね。
これが僕自身だって、個性として認められたから。
今の、こっちの自分の方が好きだし。
- 園田
- あぁ‥‥。
- 小谷野
- 過去の僕に戻りたいとは思わない。
この経験があって、
弱い部分、恥ずかしい部分出せてるから、
今の自分のほうが好きですね。
- 園田
- なるほど。
- 小谷野
- これが個性だってわかってもらえれば、
もう全然いいと思うから。
今の僕は変わりたいとも思わないし、
完治させようという気持ちもないですね。
やっぱり、今のほうが楽しいです。
- 園田
- 治す治さないって次元じゃないんですね。
個性ってなったら、もう病気じゃないし。
- 小谷野
- 僕は、パニック障害が
一番の個性だと思ってますから。
- 園田
- 「完治させよう」ってなると、
逆にプレッシャーになるのかなって思うんです。
- 小谷野
- だから、しなくていいなと。
いや、逃げてるわけじゃないですよ(笑)。
僕も、20代の時に発症して、
そこから、1つずつこうやって、
いろいろなものをステップアップしていって、
過去の自分を超えている自信があるから。
- 園田
- なるほど。
- 小谷野
- たとえば、僕、日ハムにいた時は
もっと気張ってたから、たぶん、
周りに好かれていない人間だったと思うんです。
でも、オリックスに来て、
後輩にいじってもらったりとかすると、
「いじられるって、気持ちいいな」って(笑)。
- 金沢
- ああ(笑)。
- 小谷野
- 今、すごくいい。
オリックスに来て本当によかったなって思うのは、
新しい自分の発見もあるし、
新しい人との出会いも増えたから。
- 金沢
- 後輩の指導もされていますよね。
一緒に自主トレしたり。
- 小谷野
- そうですね。
「やろう」って言われたりしたら、全然やります。
- 金沢
- 後輩のほうから、
「小谷野さんと一緒にやりたい」
って言ってくるんですか?
- 小谷野
- そう言ってくれる子もいるんで。
僕、ある程度、力のある選手よりも、
一軍を目指している選手とやるのが
すごく好きなんです。
- 園田
- そうなんですね。
- 小谷野
- 彼らから学ぶことって、たくさんあるから。
僕も今、37歳で、ちょっとでも怪我したら、
もう来年契約してもらえるかどうか
わからない年齢になってきてるじゃないですか。
「あとがない」っていう意味では
一緒の立場でやれるから、
彼らの必死な姿を見ていると。
- 金沢
- 感化されるようなところも?
- 小谷野
- そうですね。本当にいい刺激を受けて。
だから、彼らは今、二軍にいますけど、
一軍に上がれるように、
毎日必死に練習してるんだなって勇気付けられるんで、
ああいう子たちとやるのはすごくいいです。
- 金沢
- ああ‥‥。
なんか、慕われてらっしゃるんだろうなと、
いま聞きながら思いました。
- 小谷野
- 慕われてるかどうかわかんないですけど、
なにか訊かれた時に応えられるように、
周りをなるべく見るようにしていないとな、
っていうのは、思ってますね。
- 金沢
- 「自分のことよりチーム」っていう、
そういう気持ちなんでしょうか。
- 小谷野
- チームのことを考えるようになってから、
僕は成長できたんです。
1年間やった個人の成績は、
チームへの貢献度とは、また違うので。
個人成績以外のところで、
後輩の心の支えになったりとか、
そういうものを大切しながらやっていきたいなと、
今は思ってます。
- 金沢
- パニック障害になってから
チーム内での変な競争心がなくなった
っていうお話を、
インタビューで拝見したんですけど、
それも、「チームを支える」
っていう想いがあるからですか?
- 小谷野
- あぁ。
それは、人と比較して、行動するのをやめたんです。
- 金沢
- 「自分は自分」っていう。
- 小谷野
- 団体スポーツの中で、
競争というか、ライバルみたいなものは絶対、
必要な部分はあると思うんですけど。
自分のプロセスに対して、人は関係ないと思うんで、
そこに競争は生まれないんですよ。
自分が思い描く目標設定を作ってみたら、
僕の中での長期的な目標って、
「日本一」とか「優勝」なんです。
そこに他の選手との競争は関係ないから。
- 金沢
- ああ、なるほど‥‥。
見据える先がしっかりあると、
周りに引きずられないんですかね。
あの、僕は、周りの人を見ていて、
「なんで、みんなは満員電車に乗れるのに、
自分は乗れないんだろう」
とか思って、そこで落ち込んだりするんです。
やっぱり、周りの人を気にしすぎなんでしょうか。
- 小谷野
- もうそれは、
自分は、周りの人たちよりも繊細というか、
色々なものに気付きがある、すごい人間だって
思っちゃえばいいんですよ。
周りの人たちは、あんまり大したことないから、
平気な顔して生きてるんだって。
言い方悪いですけど(笑)。
- 金沢
- はい(笑)。
- 小谷野
- 「お前ら、テキトウにやってるから
そんなに寝てられるんだろうが。
こっちは、いろいろ考えて、
いろいろ準備してるんだよ」
と思っておけば、別に平気でしょ?
- 金沢
- なるほど、いいですね(笑)。
(つづきます)
2018年7月15日(日)