第6回「楽しむ」は最高の準備。
- 園田
- 私も同じようにパニックや不安で
苦しんだ時期があったのですが、
一番つらかったのが、
人に言いだせないことだったんです。
病気をカミングアウトした瞬間、
周りの人の反応はどうでしたか?
- 小谷野
- 親に関しては、言えてよかったなって思ってますね。
「いつでも家に帰ってこい」って言ってくれて。
ほかにも、本当に、
よくしてくださった人はたくさんいます。
まぁ、でも、なかには、
心ないひどいことを言う人もいて。
- 金沢
- あぁ‥‥。
- 小谷野
- どんな人に何言われたかって、
忘れないんですよね‥‥。
「この人は‥‥」と思ったことも、正直ありました。
- 園田
- なるほど。
落ち込むっていうより、怒りで。
- 小谷野
- 怒りを覚えるときもありましたね。
- 園田
- てっきり、周りがすごくいい人たちで、
うまくカミングアウトというか、
受け入れられたのかなと思っていたんですけど。
- 小谷野
- もちろん理解してくれる後輩もいたし、
首脳陣の中でも、心の方面で、
どうやってアプローチしていいかって
真剣に考えてくださる方もいますし。
- 園田
- そうですよね。
でも、必ずしも全員が
すんなりやってくれるわけじゃない。
- 小谷野
- 全員じゃないですね。
でもまあ、そういう人も、もういいやって(笑)。
- 金沢
- なんか、思い出させてしまって、すみません(笑)。
- 小谷野
- いや、大丈夫です(笑)。
でも、ある意味、野球を長くやれてるのは、
そういう人たちへの意地もあるのかもしれないです。
「俺は野球選手なんだから、野球で戦うしかないでしょ」
って思えたから。
- 金沢
- 「俺はまだまだやれるぞ」って。
- 小谷野
- そうです、そうです。
「戦う」っていうのは、続ける年数もそうだと思うし。
- 金沢
- ああ、なるほど。
たしかに、いい成績をあげるというだけでなく、
長く活躍するということもあるんですね。
お話聞いていて、「野球を続けること」を
大切にされているのかなと思いました。
やっぱり、悪い状態から抜け出すためにも、
なにかを「続けること」は大事なことですか?
- 小谷野
- いや、そんなむずかしく考えなくていいんですよ。
楽しいと思ったことを
ちょっとずつやればいい、と思っていて。
- 金沢
- ああ、なるほど。
- 小谷野
- あんまり、「続ける」って言葉が重くなると、
無理するから。
- 金沢
- 続けられなくても、ちょっとずつ。
- 小谷野
- 楽しめる範囲でいいんです。
100パーセントでやろうとしないで、
1日1分でも続けられるような、
興味を持ったところからやればいいから。
- 金沢
- はい。
- 小谷野
- 僕にとっては、そう思えるのが、
たまたま野球だったってことですかね。
だから、気軽に楽しむ感じで
「打席立ったら、全然簡単に打てるっしょ」とか(笑)、
そういう言葉を使って。
後輩たちに「なんでそんな悩んでるの?」って言ったり。
- 金沢
- 考え過ぎないってことですかね。
- 小谷野
- 「もっと楽しめ、簡単だから」って言って、
プラスになることを言うようにしてますね。
僕自身にも、後輩にも。
- 金沢
- そのプラスになる一言は、
野球が大好きで楽しんでいる小谷野選手に言われたら、
すごく安心するかもしれない。
- 小谷野
- でしょう?
- 金沢
- そう思います。
- 小谷野
- ですよね。まぁ、好きなこと以外でも、
仕事でも何でも同じだと思いますけどね。
やろうとしてる人に対して、
別に、「がんばれ」って言葉は要らないと思います。
- 金沢
- もうがんばってますし。
- 小谷野
- 十分にがんばってる。
心の準備、体の準備もできてるんだったら、
あとは、球場はそれを表現する場なので、
「楽しんだほうがいいんじゃないの?」
と思いますけどね。
だから、僕は、
いつも最高の準備をして、球場に行けるんです。
- 園田
- そうか。「楽しむ」が準備に入るんですね。
- 小谷野
- もちろんです。「楽しむ」は最高の準備です。
「今日も楽しめた」って思えるようにしている。
あんまり自分を追い詰めない方がいいんですよ。
(つづきます)
2018年7月17日(火)