クマちゃんからの便り |
クルブシ受苦 痛めたクルブシの腫れは、 梅雨時のせいかなかなか退いていかなかった。 体重を支える右足だったせいなのか。 腹が立ちまぎれに、 いっそこんな足はチェーンソーで 切り落としてやろうとも思った。 しかし腹が立てばいっそう腹が減って、 ヌカヅケでメシを喰う始末だ。 間もなくまたクルブシに心臓が移動したように痛みだす。 今までだったら、道具を手にして 闇雲にジタバタと対象にむかうことで、 痛みを越えようとしたものだが、 今回の痛風はそれすらもどうにもならない痛みだった。 こうなりゃ、押し寄せてくる<痛み>をただ受け入れ、 無骨な激痛攻撃に耐えているしかない。 これも受苦なのかもしれない が、<痛い>が充満した生存自体は、 歩行不能の<痛いカタマリ>になっていた。 激痛を丸ごと受け入れてしまうと、 もう痛みさえ快感にちかくなって、 今まで見聞きしてきた世界の印象や、 感触の無数の断片が 頭蓋内を高速で回転していたのである。 退屈にはなかなか馴染めない質で、 読み散らかしていた本でも読むか、 過ぎてきた20世紀のことや 最近アプローチが多くなってきた<森>や、 <砂漠>のイルージョンを巡るしかなかった。 万葉の里のピッカリ君やKORYAからメールが届く。 点在する森の集落で、 間伐した枝を大量に収集するの頼んでいるのだ。 樹皮を剥ぎ小骨のようにした<森>の断片を、 トラック3台で奈良の都に運び込み、 一晩で組み合わせていくつもの <ヒカリヤカタ>を創り出すのだ。 <2006第3弾>である。 受苦に書き連ねたオートマチズムが部厚くなっていた。 ページをくくるとデタラメな記号や図がほとんどだった。 脈絡のないメモにヒントも含まれていたのはアリガタイ。 いつの間にか、クルブシの痛みも腫れも去り、 すっかり自在に動くようになって元の足に戻っていた。 なんだか焦りもなく平安なジカンだった。 こんな荒療治も悪くはないものだわい。 作業机の下の壺では、岩塩で漬け込んでいた文吾梅に、 カビひとつない綺麗な液が浮いているではないか。 岩塩のミネラルと同化した梅酢は ひっそりと日々成長していたのだ。 間もなく陽射しが安定したら土用干しである。 ミサイルが飛び交う南西方面は、 垂れこめた黒い水分で水田の緑も霞んでいた。 チャリンコで久しぶりに村に降りていく。 やっぱし植物が蔓延した空気はイイわい。 自在継ぎ手のように完全復活したクルブシは、 昇り勾配も難なく登り切る。 ホームページの内容が大充実にリニューアル。 充実した作品群をお楽しみください。 http://www.kuma-3.com/ |
クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。
2006-07-13-THU
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