クマちゃんからの便り
クマちゃんは、よくテレビの画面に映っている人だ。
たいていは、あたまをピカピカさせながら、
他の出演者たちが遠慮して言わないようなことを言うから、
なんか「自称ゲージツ家」のタレントだと
おもっている視聴者も多そうだ。

ところが、どっこいなのである。
クマちゃんは、じっさいホントに、ゲージツをしているのだ。
それも、じぶんの肉体のパワーをフルに活用した、
おおきくて重い作品を制作することが多い。

こんどの、鉄のシリーズのあとの、
ガラスという素材との格闘は、
ちょっと並々ならぬ決意を感じる。

「なんで、ガラスをやってる(アーティストが)
いねぇのかと不思議だったんだけどよ、
熱いからなんだな。具体的によ、
人間には耐えられねぇんだよ、あの熱はよ 」
って、自分は人間じゃないのか?

クマちゃん(篠原勝之さん)のホームページ
KUMA'S FACTORYはこちら


さいなら、アフリカ

Cotonueの町にもどり、
つかの間ゾマホンと骨董屋を冷やかした。
ほとんどはよくあるアフリカのお土産を並べている
小さな屋台村だ。
オレは一軒の店の奥。男女の木彫りに惹かれていた。
きっとブドゥー教の儀式用なのだろう。
観光用のツルリと磨き上げた木の飾り物と違って、
生な削り跡の彫像が<円空>を思わせた。
値札は倍から三倍だ。
それを値切るのが交渉というものだ。
半値以下の希望価格を言う。
「ノーノー。それは無いぜ、ダンナ、これでどうだ」
小さな紙にちょっと下がった値段を書く。
「ハハーン、バカ言ってるゼ」
オレもちょっと上げた金額。
「それじゃこっちの取り分は無くなっちまうだよ、ダンナ」
泣く振りをしながら下げてくる。
「そうやって泣いてナ」オレもちょっと上げる。
「ダンナ、最後だよ」書く。
「そんなら要らないや」オレが帰る振りをする。
「ダンナ、これでどう?」
「時間がない、話しにならないわい」店を出る。
ここからはゾマホン登場。
「一回帰る振りしてから来た方がいい」
かといって欲しいものはない。
今度はゾマホンが店の奥でやりとり。
ときどき「あーあ”」と叫び声がきこえる。
「これ半値になりました」
「ありがとう。やっぱりベナン語で脅したり
 すかしたりしなきゃナ」
新聞紙にくるんだ木彫り人形。
あとは<たけし小学校>ドラゴンにつかった
赤土の一握りをペットボトルに入れてきた。
この国ではクリスチャン、イスラムもいるが
半数以上の大半がブドゥー教を信じている。
病、もめ事、結婚、出産。葬式。生活の全ての基盤である。

暑い夜中11時BENINを発つ。
「ゾマホン、ありがとう。楽しかったよ。
 またニッポンでナ」

時差一時間北上してパリ空港に早朝6時過ぎ着。
いきなり3℃で息が白い。
オレは機内でウインドブレーカーを羽織っていた。
初めての海外ロケのピンク・ゲロッパは
半袖テーシャツ一枚でビンボー臭く震えていた。
世界を視る感覚がBENINのままなのが敗因だ。
ケチらずに長袖シャツを買えばイイのだが、
ま、子どもじゃないから放っておく。
ロケ費用を会社からいくら持参したは知らないが、
BENINで精算した段階でニッポン円にして
残金600円也だという。
イイ取材撮影が出来たと思う。
「お見事」。
デレクターの<チョクセンぱぱ>も
<ピンク・ゲロッパ>も食事については触れないはずだ。
パリの<カルチェ美術館>で半年間開催されている
[北野武の個展]を
トランジットの都合で観ることが出来なくなった。
彼の絵は最近また注目されだした
<生の絵画>な気配が伝わってくる。
説明のイラストレーションとは違う。
<アールブリュット>の提唱者は
ジャン・デュビュフェだったと思うが、
そのお膝元のパリ空港にいるというのに
観ることが出来ないなんて、
残念を超えて悔しいわい。
インターネットの24時間使用のカードを
日本円で買ってサロンにて、
コバヤシ・カメラと回線が無くて溜まっていた
ブログやメールを整理する。
エールフランスに乗り込むと、
ワゴンにあった日本字新聞に手が伸びた。
週刊誌の見出し広告を斜め読み。
出発する前のトワイライトな状態に変化なし。
今や、自ら命を絶つヒトが
年間三万人だというジャパンの仏教界も、
原始仏典や大乗仏典を読み直して
<死>についてを分析しはじめたという。
こんなに大勢のヒトが
<死>を選ぶ<要因>を探ることも重要だと思う。

クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2010-04-14-WED
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