クマちゃんからの便り |
百花園で遊ぶ 三宅島で仕留めたデカ・カンパチのブロックを手土産に、 自分のイモショーチューを下げて向島に向かう。 二〇〇年の歴史がある<百花園>前での待ち合わせだ。 まだ三〇分ほど時間があった。 そんなに広くない園内の草木はこの時期枯れているのだが、 大名好みのいじくり回した庭園と違って、 植物のサイクルを感じるこんな空間はイイものだ。 池で大きな白黒の鯉がゆっくり浮上してきて 水面に大きな孔を空けた。 小さな雑記帳にコトバの断片を書き込んで正門に戻る。 藁谷博士が現れ、彼が高校時代から本を読み 論文をまとめてきたアズマヤに案内され、 天才的な頭蓋内武勇伝を聞く。 いいエン会への序章である。 園内にある落ち着ついた<芭蕉の間>に、 ふろふき大根が運ばれてきた。 程よい料理に博士はワイン、 オレは持参してきたイモジョーチューがすすむ。 クレーについて、エッシャーについて話がとんでいった。 そのうち博士は鞄からノートを出して 二色のボールペンを使って、 ラセンや式の解き方を書きながら説明してくれのである。 「バッハの音楽なぞ暗記してしまえば、 簡単に半音的数列が分かってしまうんだよ」 と言う。この誠実で世界的な数論学者の頭蓋内は どんな構造になっているのだろうと思うオレの頭蓋は、 心地イイ混沌状態になっていく。 いつか俳句の話になっていた。 そういえば俳句は素数の字数で出来た コトバの短い詩じゃないか。 閉店時間になると、主人が顔を出し、 差し出す名刺に<佐原>とあった。 入口で貰ったチラシに載っていた 創始者の佐原鞠塢に生き写しの顔である。 藁谷博士の墨田高校の後輩らしい。 自転車を押した主と生真面目な数学者、 スキンヘッドのゲージツ家の三人は、 東向島の薄暗い路地に繰り出した。 とある古い酒場に辿り着くが客は誰もいない。 何を呑んで何を喰ったやら。 もう相当な時間だった気がした。 一時間ほど歩いて帰ると言っていた博士は、 鞄とカンパチのブロックをぶら下げて 墨堤を歩きながら<数論>を思案するのだろう。 ゲージツ家は新宿にタクシーを飛ばす。 藁谷博士からのメールが入っていた。 発信は朝4時前だ。 √2について数首添えられていた。 オレも百花園散策での句をメールした。 < 枯 れ 園 や ジ ュ ラ 紀 の 海 を 踏 み し め て > ホームページの内容が大充実にリニューアル。 充実した作品群をお楽しみください。 http://www.kuma-3.com/ |
クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。
2006-11-28-TUE
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