クマちゃんからの便り |
サイト・スペシフィック <火山フォーラム二〇〇六>が開催された三宅島は、 はるか洋上にある東京都に所属する三宅村である。 <サルビア丸>は夜一〇時半タケシバ桟橋を出港。 翌朝五時の到着予定だ。 少々吹く風は予報では<木枯らし一号>の前触れか。 レインボーブリッジを潜ってもまだ広い東京湾内は 穏やかな航海だった。 しかし湾から外海に出ると、風も強まり大きな <サルビア丸>も左右にピッチングを始め、 船室の丸窓の外はすでに沿岸の灯りもいっさい無い 暗黒の海になっていた。 風裏になる島の反対側の三池港に変更して接岸。 <天気晴朗なれど浪高かし>である。 講演が始まる前に平野村長の車で島中を案内された。 火口付近まで登っていく路の両側は、 ガスで白く立ち枯れた木々。 溶岩流で覆われ砂漠のようになった元牧草地と、 真っ青に高い空とのコントラストは、 幾臆年前の始原的な景色に違いない。 枯れたままで立ちつくす枝は風や雨ですぐに折れる。 枯れ枝のように白く乾燥した牛の骨が散らばっている。 すぐ脇に小さな草の芽が溶岩の隙間から出ていた。 風と砂がぶつかり合う音しかなかった サハラ砂漠で過ごしたジカンを想いうかべていたのだが、 圧倒的なマグマのチカラの痕跡には、 風に混じって時おり名も知らない鳥の声が 混じって聞こえている。 こんな風景のなかでただ<耳>と<目>だけになって 過ごす<今>。 雄山に降り積もった火山灰が雨で泥流となり、 鳥居の頭だけを残して埋まってしまった椎取神社。 活火山の<サイト・スペシフィック>を浮遊した。 富士火山帯に所属している三宅島は火山の博物館だが、 列島自体が火山帯の上に乗っかっているのだ。 ホームページの内容が大充実にリニューアル。 充実した作品群をお楽しみください。 http://www.kuma-3.com/ |
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2006-11-15-WED
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