クマちゃんからの便り |
自然の<数学> オウムが鳴くはずもない 富士山麓は雲に覆われていて、 墓石だけが規律正しく行軍するように整列していた。 晴れていれば目の前に富士山がかぶさってくるような ロケーションの霊園である。 母親を連れて親父の 十三回忌をこじんまりと済ませる。 坊さんが経を読んでるあいだ、 富士を隠している乳白色の雲の スクリーンを見上げながら、 オレは見えない富士のカタチを点線で描いていた。 ゲージツの合間に今さらながら 中学数学を復習しているのだが、 因数分解を教わっていたあの時期は、 <家出>を決心した頃だったコトを思い出したり、 分数や平方根の計算は<ヨモギになってしまいたい>と 本気で思った頃をよみがえらせてくれた。 オレはこんな計算問題ばかりが数学とは思ってないし、 数学の計算上手になりたいワケでもない。 ヒマツブシの節々に、計算問題を解いていると、 隠れていたあの予感に充ちたジカンが しみ出してくるのである。 それにしても夏の朝四時二十五分になると、 アカマツの同じ枝でさえずるあの山鳥でさえ、 同じ回数と同じ間を数えているのだろうし、 工場の軒下にぶら下がっている 規則正しい六角柱の集合であるキイロスズメバチの巣は、 日に日に出来上がっている。 複雑で膨大な構造計算を ノートにしている筈もない一匹一匹が、 合理的で美しい多角形群を建造しているのだ。 鳥も昆虫も植物などがやっている<自然の数学>は、 計算だけではなくパターンを読んでいるのだと 子供の科学雑誌で読んだことがある。 パターンについての学問が数学なんだろうし、 生命そのものがパターンだという。 椎間板ヘルニアと格闘している藁谷博士から、 数列の解答が送られてきた。 周波数の比が美しく一定になっているという 音律のパターンだった。 そして有名なバッハの<半音階的幻想曲>。 バッハは美しい音律を数学していたのだ。 オレは<数学>の言語である記号や数字と戯れながら、 人生の初期へ時々トリップしている。 そして砂漠や草原や海で見聞きした 自然の秩序のシステムから、 未だ見ぬ<美>を探す旅を続けていくのだろう。 ホームページの内容が大充実にリニューアル。 充実した作品群をお楽しみください。 http://www.kuma-3.com/ |
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2006-10-29-SUN
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