クマちゃんからの便り

[小学館児童出版文化賞]を受賞しちまっただよ

<小牧橋>を渡り、二本目の農道を左に曲がった。
イチゴジャム工房への矢印。
稽古着の背に竹刀袋を袈裟掛けにゆるやかに登る。
しかしジャム工房も見付からないまま、
また左に曲がるとすぐに途切れそうになる。
それでもここまではよかった。

しかし鏡は魔界の入り口である。
もと畑だったらしい草深い田園に唐突に建っていた
妙な装置だ。
何のためだが分からないが嵌っている鏡に
<甲斐駒ヶ岳>が映っていた。
それを横目にみて『少し早いし、遠回りでもイイか』と、
林の中へ這入っていった。
引っ返すには遠くまで来過ぎてしまったわい。

道はなくなり獣が踏みしめた細い道だけになり、
オレの背丈を超す草むらである。
そしてウッソウとした森になっている。
剣道袴はこんな藪を歩くには向いてない。
足首はイバラで傷だらけ。
顔は蜘蛛の巣だらけ、
蛾や小バエが張りついて大変なことになった。
往けども往けども森は深まっていく。
掻き分け掻き分けなんとか進んでいた。
そしてやっとガードレールが見えた。

何とかよじ登ったら甲斐駒が目の前に現れた。

今日の箕輪道場の稽古もオレは素振り摺り足。
肩胛骨を意識し汗だく。

何とオレが書いた初めての児童小説[走れUMI]が
大変な賞を受賞してしまった。
[小学館児童出版文化賞]の最終選考に
残っていたのは聞いていたが、
今日はその発表日だったのはすっかり忘れていた。
箕輪道場から戻って稽古着を、
のんびりと水洗いしていた。
藍染めはいつまでも青が落ちるで肌は真っ青になる。
タライの水に浸け足で踏み洗いしていたら、
マネージャーからの電話だ。

公の賞なぞ無縁にきた人生だったから、
どう嬉しがったりしてイイものやら。
今朝から出ずっばりの甲斐駒に、
取りあえず挨拶したら、ちょっと嬉しくなった。

umi

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2009-09-13-SUN
KUMA
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