頭蓋浮遊の一日
台風崩れの雨。
朝10時開館にあわせて世田谷美術館。
ダニ・カラヴァン展と、
アウトサイダー・アート展を観にいく。
砂漠の風の音が流れていた客もまばらな館内、
カラヴァンのオブジェ群を眺めるオレの頭蓋は、
たちまち、サハラ砂漠に遠征して
鉄のオブジェを建てた10年前にトリップしていた。
そのままアウトサイダーの絵画展に繋がっていった。
朝の真新しい頭蓋にパラレルな色を入れるのは心地よい。
雨の隙間をついてテアトル新宿へ。
待ちに待った[アキレスと亀]である。
館内の暗がりで補聴器と眼鏡を装着して開演を待つ。
主人公・真知寿は飼い馴らされることのない動物
<バカボンのパパ>だ。
そして樋口可南子はパパの言うとおりに従う家庭的な
<バカボンのママ>である。
娘は身体を売ったゼニさえ、
バカボンのパパの絵の具代に取られてしまい、
命まで亡くしてしまうケナゲな<ハジメちゃん>か、
いや<バカボン>かな?
満席の観客に、真知寿の性懲りのない創作活動に
笑いが蔓延していた。
オレも暗がりに拡がる切ない滑稽の世界に、
久しぶりに笑った。
読み違いかもしれないが、
奇しくも先日亡くなった赤塚不二夫の
[天才バカボン]と重ねていたのだ。
ゴダールを越えてしまった意表をつく真知寿のラスト。
北野監督のこれからの強い覚悟さえ感じた。
「それを買うわ」
ラストの樋口可南子の<ママ>は絶品だ。
いつもながら、潔いカットの省略や、
暴力的な色が美しくも哀しい。
[アキレスと亀]は、
KITANO映画第一期の集大成だと思う。
第一級の新しいギャグ映画だった。
北野武はやっぱり天才監督である。
また始まっていく第二期が待ち遠しい。 |