水の旅人
リムジンバスはガラガラに空いていて
しかもNARITAには一時間弱で着いた。
カメラマンのコバヤシさんとは初対面。
甲府出身だという。
ディレクター・キマジメ、
海外渡航初体験のADチロー、
みんなもう揃っていた。
ビジネスクラスはスペイン人、フランス人、
パラパラと日本人で席は全部埋まっていた。
メシを食って暗い機内の闇に
剣道でいう<遠山の目付け>を這わす。
部分ではなく全体。
今突然、両隣のスペイン人が
ハイジャックに起ち上がっても対処できる構えだ。
しかしそんな気配は最初っからない。
座席前の液晶では飛行機の時速やら距離が点滅している。
『ニジェールのサハラ砂漠に
<風の樹>を建てたのは12年前になるのか』と
[時の流れ]について考えだした。
機内の真っ暗闇に閉じ込められると
ちょっとは哲学的になる。
<時>は[水]のように流れていくものなのか。
<時>とはどんなものなのか。
流れる<時>はどんな速度なのか。
<距離÷時間>の時速など、
<時間>の正体が分からないオレには
どうだっていいことだ。
オレは車の運転さえ出来ないのだ。
飲み過ぎたミネラルウォーター。
そうしてるうち<時の流れ>は身体を巡り、
小便となってシベリア上空にばらまかれた。
そして眠ってしまった。
気が付けば早朝のシャルル・ドゴール空港である。
空港に近いせいか[ホテル・ホリディイン]まで
行ってくれるタクシーはなかなか見つからない。
大書きした紙を振りかざしてチローとキマジメ君が交渉。
やっと黄色系のドライバーのOKを取った。
コバヤシ・カメラさんはさっそくロビーで
アップル・PCでスイスイとネットサーフィン。
オレのウィンドウズを彼の指導でチロー君が繋いでくれた。
めでたしめでたしと思ったが、またまた中断。
面倒だから眠る。
まだ旅は北半球だ。
六時間後にはアフリカBENINへ直下。
3月28日PM12:10<パリ時間>
シャトルバスでシャルル・ドゴール空港。
オレ以外は喫煙者だから何処行っても不自由している。
ジャパンよりきつそうだ。
出発まで2時間以上港内のベンチ。
PM16:14<アフリカ上空に入る>
予定より一時間ちかく遅れて
小雨のシャルル・ドゴールを
Coconue空港に向けて飛び立った。
免税品を買う金持ちそうなベナン人と、
小商人風ビジネスマンのフランス人で満席。
ジャパニーズはオレ一人。
アフリカ上空にかかると途端に雲はなく
赤土の大地が拡がった。
一回二十五円也の昼メシを喰っている
SABI君等子ども達のまえで
オレはどんなコトが出来るのか。
ないないづくしのBENINに、
大地の赤土だけはふんだんにある。
硬い鶏肉と固いバンの機内食をワインで流し込む。
機内に閉じ込められているオレは、
空に封じ込められた鳥と一緒だが
システムに取り込まれている分だけオレは不自由だ。
ま、上昇する子ども等と下降するオレは、
つかの間楽しくクロスするのである。
まっ赤なアフリカの夕陽。
Cotonue空港着陸。
ムッとする空気。すでに汗だく。
ゾマホンの迎えだ。懐かしい。
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