クマちゃんからの便り
薄い彫刻

今ひとつパッとしないまま
カレンダーは十一月も終わりだ。

FACTORYに引きこもったクソ暑い夏。
来る日も来る日も、
ブリキの小箱に一〇〇番紙ヤスリを掛けては
塗装を剥がし、第一次製品である
<鉄>そのものに引き戻す
<BOXシリーズ>を作っていた。

書斎机(メシも喰うし本も読む)でのシゴトは夜。
銅板のうえにニードルで細密な線を刻み込んでいく。

尖った火先は鉄板を裂き、
研いだドライバーの先で溝を刻むオレの
<ドライポイント製版>。

地道で熱い<鉄三昧>は、
オレを鉄に引き戻す夏でもあった。

もう冬なんぞ来ないと思った山岳地帯にも、
灯油の値上がりとともに遅れ馳せの冬がやってきた。

武川村米の刈り入れを済ませたスダさんが
手伝いに来てくれ、
FACTORYの片隅に二台のプレス機を備えた
立派な版画工房を完成させた。

薄い彫刻としてのエッチングは<鉄のオブジェ>である。

オレのオブジェを刷る援軍は、
美術学校でエッチングを教えている永澤君という
若い版画家だ。
何度かエンストを起こしながら
福生からポンコツ自家用車で駆け付けてくれた。
ありがたい。しかもイイ腕前である。

溜まっていた版を刷る。



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2007-11-30-FRI
KUMA
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