クマちゃんからの便り

赤土の距離走る

3月29日AM8:30<HOTEL出発>

八時半出発だというのに
ゾマホンのアフリカ時間はキッカリだった。
昨夜は高級ホテル<マリーナ>泊もタッチアンドゴー。
たちまち出発の時間だ。
日本から喜望峰を回ってきた
船便のコンテナは着いているけどまだ触れないという。
受け取り側が大枚のゼニを払わなけりゃ
開けることも出来ないとゾマホン。
アフリカの始まりの朝だ。
キマジメも、チローもスケジュールが滅茶苦茶になったと
ゾマホンに食いさがる。

『こりゃアフリカでなくてもよくあることだ。
 オレがヴェネチアでやった個展もそうだった』

五十トンの<鉄のオブジェ>を積んで
湾岸戦争のスエズ運河を通過して30日。
何とか会期初日に間に合ったコトを思い出した。

ゾマホンはその都度港の税関に出掛けたり電話をしたり。

「もうお金払ったのに急いでも明日になります」

「アフリカだということを忘れるな。
 ダメだったら二つ、三つの別の方法を考えるんだよ。
 諦めるな。ここはジャパンじゃない」

チーム最年長のオレは呟いた。

「たけし小学校への出発は明日にして、
 これから井戸掘り会社に出掛け、
 井戸の実態取材します」

キマジメとチローも決断した。
ロケスケジュールは初日からズタズタになった。
オレのゲージツプランも前途多難を予感するが、
『ここはジタバタしてもはじまらない』。
絶対的なことなどなく、必ず方法はその空間にあるはずだ。

ロケ車が通過するヒト等の生活景色に<遠山の目つけ>だ。
Moleskinにプラン・スケッチをメモる。
井戸掘り屋をゾマホンと訪ねた。
その道中プランも幾つか。これから変化していく筈だ。
みんなの頭蓋も通過して大地の土の力を得て、
<水>のイメージにたどり着く旅だ。
Cotonueに戻り街の定食屋でクスクスとカレー。
これが美味い。

さて西へ西へ。
二時間の予定が四時間。
TOYOTAの四輪駆動はメインストリートから脇道へ。
赤土舞い上がるいか にもガタガタ道は果てなく続く。
頭に水を入れた大きなホーローの金だらいを乗せた
オンナやこども等。
<命の素>を頭に押し頂いて一日6、7Kmを歩く。
しかも片道。現れては消える。
貧しい集落を往く。ゾマホン辻辻に降りては
「シェフ、井戸はどっちかい?」尋ねる。
「ダンナ」と話しかけるゾマホン活躍だ。

荒れ地にパイプの頭が50センチほど。
大人も子どもも集まってきた。
「おーい水」叫んでみた。
底から「おーい水」虚しいオオム返し。
それでもオレのゲージツプランは進んでいる。

夜中ホテル着。
明日こそ<たけし小学校>へ向かうつもりだ。
北野武巨匠が私費で建てた学校はすでに六校ある。
大した男だ。
ゼニのないオレの頭蓋は
ゲージツするタマシイに遊んでいる。

クマさんへの激励や感想などを、
メールの表題に「クマさんへ」と書いて
postman@1101.comに送ろう。

2010-04-04-SUN
KUMA
戻る