◆◆第3回 ガラスも結構大変だぞ ◆◆
溶解炉 「鉄」は「金を失う」と書くだろ。だから鉄のゲージツをやっていた15年で、マンション1戸買えるくらいは損をした。ガラスをやって2年だけど、もうすでに同じくらいは損をしているな。「硝子」は「石を消す」と書くだろ。大昔、石はお金だったからな。銭は完全に消えたね。溶解炉の設備にはお金がかかるんだ。溶解炉の温度を上げるために1万円札をジャンジャン燃やしているようなもんだ。熱いだけじゃなく、冷や汗もかくぞ
溶かしたガラスを入れる鋳型(CAST・キャスト)は、耐火石膏で出来ている。粘土をゲージツして石膏で型をつくるのには、大体1ヶ月半はかかる。耐火素材だけど、ガラスを流し込むと割れてしまうこともある。失われるのは金だけじゃあない。石膏を作った時間も失われちまう。 キャストからしみ出している
作業 時間といえばガラスは一気に冷やすことは出来ないんだ。オレの作品は、50キロとか70キロとかの、でかいゲージツが多い。鋳型に流し込み、完全に冷やす「除冷」という作業には、約1ヶ月かかるんだ。コンピューターで「1日に3度」とか制御して落としていく。完全に「除冷」が終わって、石膏を砕いてみたら、中で割れていた、なんて事は何回もあった。鋳型を作るのに1ヶ月半。除冷に1ヶ月。合計2ヶ月半の無駄。生きてることさえむなしくなるようなショックを受けるぞ。
溶解炉もガラスの方が設備がいっぱいいるんだよ。ガラスは鉄と同じように、600度くらいから柔らかくなるんだけど、ドロドロになるのは12、300度だ。それでも溶解したガラスの中には、アブクが入っていて、具合がよろしくない。そのアブクを取り除くには1400度まで温度を上げるんだ。1000度を超えてからの、「1度」というのは、なかなかあがんないんだ。最初のうちはそのエネルギーが出ないわけさ。カーボン棒に電気を通したり、ガスを使ったり、3回くらいやり直したかな。 ドロドロのガラス

1998-06-20-SAT

KUMA
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