── もう「さむし」ですよ。
これでもまだ8月末ですよね。
9月のあたままでですね。
── 「粛(さむし)」っていう字は
つつしむ、きびしくする、おごそか、
そんなような意味ですね。
「粛々」の「粛」ですね。
── ああ、もうかなしい、この頃(笑)。
考えるだけでさびしいですが、
ご飯がおいしくなってきますよね。
そうですね。
「鯣烏賊(するめいか)」や
「鯊(はぜ)」が出てくるし。
鯊はうまいですねえ。

鯊って食べました?
食べました!
やっぱり、江戸のものなのかしら。
唐揚げをずいぶん食べました。
鯊って「ハゼドン」でしか
知らなかったなあ。
── 鯊の子ハゼドン。昭和40年代のアニメですね。
見てました見てました。
懐かしいですね。
「♪ハーゼ・ドンドン!」っていう
テーマソングを覚えてます。
── 鯊が主役のアニメって、
なかなか珍しいですよね。
ほんと珍しい。
鯊は北斎漫画にも登場するんですが、
ユニークですもんね。
形がね。
── 愛されてますよね。
それからくだものは「無花果(いちじく)」。
もうちょっとすると安くなるけど、
この時期はまだちょっと高いですよね。
無花果はもうちょっと待ってから
買って、煮ます。
── そうですね。ジャムにしたりね。
そのままより圧倒的に
おいしくなりますよね。


「八朔(はっさく)」もこの季節ですね。
── くだものの。
くだものの名称でもあるんですが、
この場合は旧暦の八月一日(朔)のことなんです。
稲の初穂を刈って神にお供えして
豊作を祈願する風習ですが、
農村では重要な日でした。
あと、この日に徳川家康が
江戸城に入ったということで、
幕府でも行事があったみたいです。


京都もあります。
松尾大社で?
はい。「おついたち」っていうんですよ。
あ、おついたち。
必ず赤飯食ってましたよ。
やっぱりお祭りっていうか、
めでたいことなんですね。
この間、京都で買った本を
新幹線で読んだら
京都の商家は翌月を迎えられて
よかった、よかった、っていうので
お祝いをする風習があると。
やっぱり、ついたちっていうのは
おめでたいことなんですね。
『和漢三才図会』には、
八朔に新穀や太刀を贈り合う
風習があったとわかる絵があります。
ミニ正月的な位置づけを
うちの親はしてましたよ。
服をおろす時は、
おついたちから、とか。
それも8月の1日ですか。
八朔に限る?
いえいえ、8月だけじゃなくて毎月なんです。
朔日(さくじつ)ってことですね。うんうん。
── 何か新しいことがあると、
「ついたちにしなさい」と。
そうです。
うちもおついたちと15日、
15日は特に呼び名はないけど、
神棚のお水とか、掃除したりとか。
なんかたぶん、めでたい。
田中さんがおっしゃったように
区切り目って意味だと
思うんですけど。
特にこれ旧暦8月は稲作と関係があって、
特にめでたいとされたようですね。
── ちょっと話が戻りますが、
「鯣烏賊(するめいか)が季節と言われても
ちょっとピンと来ないところも。
烏賊はなんか、
一年中食べてる気がするから。
そんななか、鯣烏賊を刺身で食べるには
この季節がいいんでしょうね。
はい。鯣烏賊は。
この間、寿司屋で赤イカを食べたんですよ。
それがまさに、烏賊属のなかでも
今が旬らしくって。
ちょっとずつズレていくんですって。
鯣の旬とか、ヤリイカとか、赤イカとか。
── 真イカとか。
一年中、すこしずつ旬がある。
ホタルイカも含めて。
「イカセンター」行くと
烏賊の豊富さに驚きますよね。
── 神楽坂とかにもありますよね。
新宿にも。

行きたいです、イカセンター。


行ったことないですか?
ないです!
テンション上がりますよ。
たのしいですよ。
日本人って、イカの消費量が多いんですよね。
世界一なんですって。
── タコも好きですけど、
たしかにイカのほうが食べる機会が多いです。
特にタコ派、烏賊派で
争ってる感じもないですもんね。
どっちも好きなんでしょうね。
── 煮たり焼いたりすると
烏賊の方が。
料理のレパートリーが
ありますよね、烏賊の方が。
あと、タコ丸ごとっていうのは
ちょっとデカい。
それにひきかえ、イカを1ぱい
買ってくるのは、よくありますね。
そんなに調理もむずかしくないですし。
皮むいてワタ抜くのめんどくさいな、ぐらいで。
魚1尾に比べたら楽です。
寿司ネタとしても
圧倒的にイカの方が好きです。
タコよりも。
納豆巻きに烏賊を
ちょっと入れてもらうのも。
── すっかりイカ談義になってしまいました。
次回は「禾乃登(こくものすなわちみのる)」です。
9月2日にお会いしましょう。
2012-08-28-TUE

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