── | すすきの種と書いて「ぼうしゅ」。 あ、すすきじゃないんだ。 「のぎ」なんですね。 「イネ科植物の穂の先で、 針のようにとがっている部分のこと。 穀物の種まきや麦の刈入れ、 稲の植えつけに適した時期とされました。 一方で、そろそろ梅雨入りの報も 聞かれる頃。 雨空を見上げる日も増えてきます」と。 |
そんな時期に蟷螂が。 |
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── | 生ず! |
蟷螂の卵、あの泡みたいなやつから‥‥。 |
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── | ぐわ~っと出てくる。 |
草むらでみつけるとちょっとね。 モワッとした気持ちになりますよね。 |
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蟷螂の卵だって知らないで つかんじゃったことがあります。 |
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── | うわぁ~‥‥。 |
なんだろう、この泡? みたいな。 |
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── | あわわわわ~~~。 |
だいたい小学校の頃ね、 男の子が好きな女の子に 蟷螂つけたりするんですよね。 |
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ぺちゃっ! ってね(笑)。 そうそうそう。 |
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── | するする。 |
カミキリムシよりは蟷螂でしょうね。 |
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── | 秋のうちに生みつけた卵が、初夏に、 って、あんがいサイクルが長いですね。 |
そもそも蟷螂って 生まれたときから、蟷螂? |
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── | 蜻蛉はね、ヤゴだったりしますからね。 |
蟷螂は最初からその姿ですよね。 |
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生まれた時から鎌がある? |
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ええ。 |
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── | 蟷螂ってきれいですよね。 寄ってきても、まあ、いいかなって。 イヤじゃない。 |
イヤじゃないです。確かに。 |
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── | 「蟷螂は一生の間に大量の小昆虫や、 まれに蛙などまで捕食します」。 雌が雄を食べちゃうんですよね。 魔性の女のたとえです。 |
昔ありましたよね。 蟷螂‥‥って言われていた女性って 誰でしたっけ? |
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── | 『かまきり夫人』! 五月みどりですよ。 |
五月みどりの映画がありましたよね。 あと、政治家の嫁かなんかで‥‥。 |
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── | それは「蜂の一刺し」で榎本三恵子。 |
蜂かー! あははは。 ひどいな、自分の記憶。 蟷螂とか蜂とかそのへんの。 |
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ロッキード事件の方ですよね。 |
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そうです、そうです(笑)。 |
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── | かまきり夫人は五月みどりです。 |
日活ロマンポルノですね。 |
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── | 1975年だそうです。 |
へえー。 |
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── | 「ロマンポルノ」って名前が すごいですね。発明ですよね。 |
そうですよね。 |
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── | ロマンをつければソフトになる。 「熟女ヌードのさきがけとも言える」 とWikiに書かれています(笑)。 |
でもその頃熟女といっても‥‥。 20代とか? |
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── | 1975年で、彼女は1939年生まれ。 それなりですね。 今は熟女の低年齢化が進んでますけど。 |
そうですよね。 |
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── | 当時は五月みどりさんは ちゃんとした、「熟した」女性でいらっしゃった。 ‥‥なんだか季節の感じから、 すっかり遠ざかりましたね。 梅雨どきっぽい話題にも、思えなくもありませんが。 |
たまには食べ物以外の話題も ふくらまさないと(笑)! |
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── | そうなんですよ。 ツイートをいただきまして。 「食べ物の話題ばっかりだ」と。 まあ、いいじゃないですか。 食べ物で季節を感じるのです。 |
そうです。旬の魚は 「真魚鰹(まながつお)」ですよ。 |
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── | 真魚鰹って鰹? |
ずいぶんかたちが違う気が。 |
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── | 鮃を縦にしたみたいな不思議なかたち。 ナポレオンフィッシュにちょっと似てます。 真魚鰹、これ西の海なんですね。 「紀州沖を限界として まれに伊勢湾に入ることはあっても 東海へはめったに姿を現さない。 西海に鮭なく東海に真魚鰹なしと言われる」。 名前だけは知っていましたね。 鰹というから赤身かと思ったら白身なんですね。 |
どうやって食べるんですか。 |
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── | 「西京漬け、幽庵焼きなどの付け焼きに合う」 ‥‥ということは 京おとこさんは馴染みがある? |
ちっさい頃から食べた覚えはあります。 確かに味つけして 焼くイメージがありますよ。 |
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── | やっぱりそうですか。 あんまりシンプルな 感じじゃないんですね。 そして旬の野菜。 「茗荷」でございます。 |
茗荷いいですよね~。 |
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茗荷ね! |
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茗荷は常備しておりますよ。 |
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茗荷、ぼくも好きですね。 |
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このまんま食べますもん。 味噌つけて。 |
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あ、そのまんま!? |
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はい(笑)。 |
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── | 刻んで冷や奴にかけてもおいしいし、 味噌汁にしてもおいしいし、 漬け物にしてもうまいですね。 |
素麺もね。 |
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── | あ、素麺の薬味もいいですね。 「夏!」って感じがしますよね。 からだ冷やすんですかね。 |
物忘れするから食べちゃいかん! って言われましたよね、昔。 |
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── | そうだった! 茗荷を食べると忘れっぽくなる‥‥。 |
そうそうそう。 |
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── | 団栗食べると、どもると言われました。 |
あ、言われましたね。 |
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へえー。 |
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でも昔はね、それこそ 縄文時代くらいから 団栗食ってたんですけどね。 |
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── | そう。昔は主食なみに食ってるから いずれにしても迷信ですね。 |
仏教と関係ある? |
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── | はい、そんな感じです。 「通説。釈尊の弟子に周梨槃特という聖者があり、 生まれつき物覚えが悪く 時に自分の名まで忘れるので 彼は釈尊の名を大書きし 身につけるようにと与えたところ、 それを常に背負って歩いた。 やがて世を去ったが その墓所にみも知らぬ草が生えたのを 彼が名を背に負うて歩いたのにちなみ、 茗荷と名付けた」。 名を背負う! 自分の名前すらも忘れちゃう 釈尊の弟子が。 シャクソン・ファイブ。 |
瀬戸内シャクソン。 |
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こらこらこら。すぐだじゃれを言う。 |
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── | それがこの野菜と何の関係が? 墓所に生えたと。それだけ‥‥。 だからまったく 関係がないといえばない。 |
だからこの字なんですね。 茗荷の「が」って荷物の「に」だから。 |
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── | 東京に茗荷谷という素敵な地名がありますね。 茗荷が生えてるんですか。 昔はあったんですかね。 |
生えてたんでしょうね。 |
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── | 早稲田に早稲の田んぼがあったように。 千駄ケ谷では日々千駄の茅を刈り取ったように。 |
そうです、そうです。 |
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── | じゃあ、江戸っ子はあのへんで 採れた茗荷を食べていたんですね、 きっと。 茗荷には胃を健康にする働きがあるそうです。 いいですね。 だから薬味にいいのか。 |
そう、夏場にね。 |
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── | 食欲が減退した時に いいかもしれないですね。 メキシコ育ちのもと同僚が 茗荷だけは意味がわからないと言って 食しません。 |
やっぱり口に慣れないですか。 |
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── | 「不思議な味がする」と。 |
逆にニューヨークに 住んでいる日本の人は 「茗荷に困る」っていうのを 聞いたことがありますね。 |
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茗荷ほしくなるでしょうね! |
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日本人が住んでいるところでも 少ないという。 |
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── | ロックシンガーの遠藤賢司さんが お庭で茗荷を育てているのを 鈴木慶一さん経由で頂いたことがあります。 |
一同 | ははははは。 |
── | 太ったおいしい茗荷でした。 さて、次はお花。 「紫陽花」です。 |
あら、いいですね。 梅雨時ですからね。 |
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── | 水が好きですよね。 これって、花っていうけど、 萼でしたっけ。 萼の部分が色が変わるので 花に見えるという。 大変きれいな。 |
偏見かもしれないですけど、 おばさんはだいたい紫陽花好きっていう イメージがあるんですけど(笑)、 気のせいですかね。 |
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おばさんになると好きになる? そうかも。 |
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── | そうかもしれない。 紫陽花、いまいちこどもの時は。 |
良さがわからないじゃないですか。 |
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わかんない。 |
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── | 紫陽花は「土壌のpHによって花の色が変わる」そうですよ。 |
聞きますね、それ。 |
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── | 「酸性なら青、アルカリ性なら赤」。 リトマス試験紙みたいな萼なんですね。 |
なぜか蝸牛がいますよね、葉っぱに。 |
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── | 季節だからですかね。 |
京都だと三室戸寺っていう 宇治にあるお寺なんですけど、 最近はライトアップしているらしいです。 |
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紫陽花のライトアップ。 |
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きれいなのかなあ。 |
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夜に見る感じしないですけどね。 |
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あんまりしないですよね。 暗いところで 青っぽい紫色の花を見るって なんかこう‥‥。 |
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熟女好みなのかしら(笑)。 |
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その趣味が渋いですよね。 1万株もの紫陽花が。 |
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── | あ、そんなにあるんですか。 |
関東では鎌倉ですかね。 |
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── | 「紫陽花寺」で調べましたら 全国津々浦々に山ほどあることがわかりました。 鎌倉は明月院。 紫陽花が観光の対象になったのは 第二次世界大戦以後のことらしいです。 それまでは一般的なお庭の花だったんですね。 なぜ寺にいっぱい生やしているかというと、 紫陽花の咲く頃は気温の変化が激しくて、 むかしは多くの死者が出たんだそうです。 だから、お葬式のための花として お寺で育てたんだそうですよ。 なんと、悲しい歴史が。 |
そう考えるとあの色、 仏事でもオッケーですもんね。 |
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── | 湿気は、不衛生な時代は、ものが腐り、人も‥‥。 先日、カッパというあだ名の福田利之さんという イラストレーターさんが 湿気が多いからとても寝やすいと仰ってました。 |
さすがカッパさま(笑)。 |
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── | 「お肌潤う」って。 |
個人差があるでしょうね。 湿気の反応については。 |
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── | バリ島とかに雨期に行くと悪くないですよね。 あのもわっとした湿気、素敵です。 |
たしかにお肌には良さそう。 |
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── | 湿気が悪いと言いながら 季節のたのしみは「薬降る」です。 「陰暦五月五日(現行暦でだいたい六月上旬)に 雨が降ることを『薬降る』という」と。 「この日を『薬日』と呼ぶ」んですね 「竹の節にたまった雨水は神水で、 これを飲むと薬効があるといわれた」 ということです。へえー。 |
うんうん。 |
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── | 「この日は悪魔が降りてくる日ともいわれ、 厄除けに麝香や丁字などを入れた」 ‥‥ずいぶん中国っぽいですね。 「薬玉を吊したり、 野山で薬草をとったりしました」。 「中国では陰暦五月を『悪月』と呼んでいました。 邪気を祓うとされる菖蒲や 厄除け効果がある蓬が、 端午の節句に登場するのもそのためです」と。 |
なるほど。 全体に香料も殺菌っぽいですね。 においもね。 |
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── | そうですね。法隆寺の宝物殿には 丁子があったといいますものね。 やっぱり全般的に この湿気が悪さをするので それを退治するものが好まれた。 茗荷もそうですもんね。 ということで、ありがとうございました。 次回は「腐草為蛍(くされたる くさ ほたると なる)」。 6月10日にお会いしましょう。 |
2013-06-05-WED |