朝しか咲かないんですね。 |
|
── | 完全に開くのは明け方で 昼過ぎに閉じちゃう。 「3日繰り返し、4日目、花びらは 閉じることなく散っていく」。 不思議な! |
儚いですよね。 |
|
── | 上野に行きたくなりますね。 |
不忍池ね。 蓮って、散った後は気持ち悪いんですよね。 穴ぼこだらけで。 |
|
── | そうそう。蓮の花のアイコラとか ありましたよね。 気持ち悪いですよね。 美しさと醜さは、 本当に紙一重だなと思いますよ。 蓮茶とか蓮の実は、ベトナムに行くと よく食べたり飲んだり。 |
「ロータスティ」ね。 |
|
── | そうそう。 それはなんだろうと思ったら 普通のお茶に蓮の花のにおいを つけるというものでした。 |
お香にもありますよね。 |
|
── | 蓮の芯のお茶は、よく眠れるお茶なんです。 すっごい苦いんですよ。 |
へえー。 |
|
── | 超~苦い。 蓮の芽の部分だけですよね。 よしもとばななさんに教わったんですけど。 |
実から芽が出たところですか。 |
|
── | 発芽する気配の、芽のもとがあるんですが、 それがすごい苦味があるので お茶に加工する時に取って捨てるんですって。 それがいいというので。 ちょっと分量間違うと 苦くて飲めないんです。 |
へえー! |
|
── | さて極楽浄土の蓮の花を愛でた後は、 「鮑」ですよ。えらい現生的な。 |
来た来た~! |
|
── | 欲望的な感じがしますね。鮑って。 |
どうやって食べるのが好きですか。 |
|
── | まず刺身! |
刺身おいしいですよね。 |
|
── | コリコリ。白と黒で。 |
食感がたまんないっすよね。 |
|
蒸しもいいですよね。 |
|
── | 蒸しもいい。やわらかくなってね。 |
千葉の漁師料理らしいですけど バターと大蒜で身をソテーしたり。 |
|
そうそう、洋風にしても おいしいですからね。 鮑のステーキ。 うちの母親を伊勢神宮へ連れて行って 志摩観光ホテルで鮑のステーキをご馳走した時は すごい親孝行しているぞ、俺! って思いましたよ(笑)。 |
|
── | あの有名な! 『エンディング・ノート』にも 出てきましたね、映画の。 |
鮑といえば、カレーも。 |
|
そうそう、資生堂パーラーの 1万円のカレーってあるんですけど、 それには鮑が入ってましたね。 |
|
── | チャレンジしてみたいです。 いつか! |
ひとりやふたりじゃ、かなり躊躇しますが、 大人数で行くと負担が減るから イベントとしていいかもしれませんね。 ぼくもその時5人くらいで行きました。 ほかのものも頼みつつ、 1皿だけ鮑のカレーを頼んでシェア。 |
|
── | なるほどね。 そういう食べ方するのも いいかもしれないですね。 上海蟹のチャーハンみたいなものですよね。 5千円するけど、みんなで 食べればっていう。 |
ところで鮑が 「常節と似ている」って 書いてありますけど。 |
|
仲間ですよ。 でもありがたみが全然違いますよね。 |
|
── | 常節もおいしいんですけどね。 |
おいしいですけどねえ。 あと、「『熨斗』(のし)の起源」! |
|
やっぱり古代から珍重されて。 |
|
── | 「伊勢神宮の神事では 薄くそいだ鮑を乾燥させ熨したものが 奉納される。 進物に付される熨斗の起源である」と。 |
そう、だからいまも 伊勢神宮では奉納しているんですよね、 鮑を。 |
|
── | それどうしてるんだろう。 食べちゃうのかな。 |
『神饌』っていう本があって、 いろんな神社の 神にお供えするものが写真で紹介されているんですが、 おもしろいですよね。 |
|
おもしろいです! |
|
神社によって え、こんなもの奉納してるの? というおどろきがあったりとか。 やあやあ、日本の神は なかなかやるな! っていうね。 |
|
生ものって多いですよね。 魚介類。 ちなみに鮑って、 熨斗袋にちゃんと鮑つけてる パターンありますよね。 三角の紙で包んで ぴゅっていうあれ。 |
|
ありますね。 |
|
── | 神道の話はね、掘り出すと えらい深いことになりますね。 さあ、お魚「鱸」でございます。 鱸っていうとわたしたちは 「どうぶつの森」という ゲームがありまして 海釣りをすると必ず鱸が釣れて、 しかも売っても安いので 「またスズキか!」って。 その印象ばかりが。 でも、じっさいは、おいしいですよね。 |
おいしいですよね。 どうやってもおいしい、鱸は。 名の由来もおもしろいですよ。 ススミ説というのがあって、 |
|
── | 出世魚だから「ススミ」、 口が凄まじく大きいから「スサマジグチ」、 すすけた色なので「ススケ」、 鱗がすすいだように白いから「ススギ」。 すずしく清らかな身であるから「ススジ」。 へー! |
世の中のスズキさんは 鱸食べる時に複雑な気持ちに なってるんですかね。 |
|
── | 知り合いの「鮎川さん」の家では 鮎を食べないって言ってました。 |
きっとそういうのが あるような気がするんですよね。 |
|
── | さあ、旬の野菜は「大蒜」。 大蒜の旬ってあったんだー! |
夏に穫れるんですね。 |
|
── | 青森の田子町がまさに 6月末から7月上旬に 収穫時期、と。 |
確かに、青森産って よく見ますね。 |
|
本当に青森行くと 大蒜のお土産物がいっぱいありましたよ。 |
|
大蒜をたくさん食べる方法って ないですかね。 においとか気にせずにね。 |
|
── | 大蒜、おいしいですよね。 一番におわないのは素揚げかな? 丸ごと揚げちゃうとホクホクして。 お肉や野菜のグリルのつけあわせにいい。 ポテトみたいに。 |
おいしいですよね。 大蒜の消費量って ここ20~30年で 絶対上がってますよね。 |
|
── | そう思います。 日本人は大蒜が好きになってると思います。 大変、大変、これを注文すべきじゃない? |
「生大蒜」「超限定品」! |
|
── | 6月下旬だから、今でしょ! と。 |
今でしょ! |
|
── | 流行語を使いましたね。 収穫したてのが、ほんの少量、 限定期間で出回るらしいです。 「産地だけに出回る貴重品」とのことですよ。 |
高温乾燥処理をしていないんですね。 |
|
── | だから年中出回ってるんだ。 乾燥したのを我々は食べてるんだ。 生大蒜は違うんだ! |
そうかあー。 |
|
── | みずみずしく、 もちもちした食感!! って書いてありますね。 |
食べたい! |
|
── | 食べたい! |
生大蒜っていう言葉に ぐっとくるものがありますよね。 |
|
── | これを生肉と一緒に食べたい。 自己責任で。 |
ああー、それはおいしいでしょうね。 |
|
いいですね。 薄くスライスして 生肉の上に‥‥。 |
|
── | もう、辛いの、くさいの我慢で。 |
やや、もう。うん。 ちょっとオイル、トゥルトゥルッと。 |
|
── | いいですねえ。おいしそうですね。 探して絶対買います! ところで、大蒜の語源がすごいですよ。 「しのぶ」「はずかしめる」と書いて 「忍辱」、にんにくですよ。 |
なんかのプレイかっ。 |
|
── | SM四十八手のひとつ、みたいな感じです。 |
こらこら。男子。 |
|
── | これはどういうことなんですか! |
強壮作用があるから、精進には数えないんでしょう。 修行僧は禁欲しないといけないので。 |
|
── | 韮なんかもそうなんですよね。 |
精が付くのがNG。 |
|
── | 忍辱は仏教用語で 「六波羅蜜の第三。種々の侮辱や苦しみを耐え忍び 心を動かさないこと。 他者からの迫害に耐え忍ぶこと」。 |
きっと食べたいのね。 忍辱。 |
|
── | なんだか、かえってエロスを感じますね。 |
平安時代にも女子のエチケットとして 回避されたらしいですよ。 |
|
── | やっぱりくさいから? |
はい。 |
|
── | 全員食べればいいのにね。 |
ああ、みんな食べてればわかんない(笑)。 韓国はみんな食べてるから平気。 |
|
── | 韓国に遊びに行くと全然平気。 |
日本だけ独特なんですかね、これ。 |
|
── | やっぱり香りについては かなりうるさいですよね。日本。 |
『源氏物語』にですね、 「いかに薬用とはいえ これを食った女に接するより 鬼を抱いた方が良いとまでいわれた」って。 |
|
ははははは! |
|
── | ははあー! 嫌われてますね。 鬼を抱く。 抱くんだ、抱かれるんじゃなくて(笑)! |
鬼女(きじょ)ってやつですね。 |
|
── | やがて鬼婆になる人? 鬼女を抱くって恐ろしいです‥‥。 光源氏に言われたら女性は食べなかったでしょうね。 ところで先日スペイン産大蒜というのを 通販で買いまして。 これがくさいのなんの! |
あ、強いんですね。 |
|
── | 日本のって、 とりあえずむかなければ くさくないじゃないですか。 ところが、部屋中が匂う。 困ったので野菜新鮮袋に入れて冷蔵したんですが、 においがしみ出て、もう冷蔵庫中、たいへんなことに。 こりゃ、いかんと、 面倒ですが全部むきまして、 オリーブオイル漬けにいたしました。 密閉瓶ですが、それでも匂います。 スペインのひとも大蒜好きですよね。 |
これをアテにカヴァとかを がばがば飲むっていう 感じですかね。 |
|
── | そういうことですね! ‥‥さて、くさい話はこれくらいにして、 京おとこさん、ぜひしゃべってください。 「祇園祭」ですよ! |
京都の夏といえば祇園祭ですね。 |
|
── | 「全国3千の八坂神社で いっせいに祭りが行われます」。 総本社が京都八坂神社の祇園祭。 |
‥‥ものすごいイヤミなこと言っていいですか。 (京ことばで) “よそでもあるんですか。” |
|
一同 | うはははは!(爆笑) |
── | もーう。出たよ、いけず。 博多祇園山笠だってあるじゃないですか。 |
厄除け、疫病除け? 八坂神社って、 そういう神様なんですね。 |
|
素戔嗚尊(スサノオノミコト)ですね。 7月の1カ月間、ずっと祭りなんですよ。 7月17日が山鉾巡行なんですけど その後も祭りがあるんですよ、 それを「後の祭り」と 京都のひとは言うんです。 |
|
── | まさしく、後の祭り。 |
そうなんです。 実はそのお稚児さん、 やったことあるんですよ。 |
|
おっ! |
|
── | それは、名誉‥‥。 |
幼稚園の時に。 |
|
── | すごいじゃないですか! |
馬に乗って京都の街をぶらぶら。 祭りの列をなして。 |
|
すごいじゃないですか! |
|
── | 神様扱いですよね? |
八坂神社から四位っていう 位をもらいました。 |
|
── | ちょ、ちょっと。 位をお持ちでいらっしゃったんですか。 |
ちょうど山鉾が通るところが 学区だったので。 本当に祇園祭はみんな好きです。 小学校、中学校、 街中も休みになるんですよ。 |
|
── | 山鉾を管理しているエリアの 商売屋のひとは その時期宅配便のトラックが 入れなくなって困るって。 |
ああ、そうでしょうね。 |
|
渋滞ですものね。 |
|
本当に鉾町に生まれたひとはね、 ずっと、特に男は 祇園囃子をやらないといけないから。 |
|
── | 葵祭の後くらいから もう囃子の練習の音が聞こえてきますよね。 そっかー。ずーっとお祭りかあ。たのしいなあー。 |
御輿も出るんですよ。 |
|
── | えっ? おみこし? |
7月の17日、朝から山鉾巡行があって、 夜は御輿がまわってくるんですよ。 いわゆる八坂神社の氏子のところには。 |
|
── | 今日の御輿って、江戸とはちがって、 やっぱり「はんなり」した? |
いや、荒っぽい感じですよ。 |
|
「わっしょい」ってやってるんですか。 |
|
やってます。 |
|
── | 荒事なんですね。 |
ええ。 |
|
すり足とかじゃないんだ(笑)。 |
|
(笑)意外とその御輿を 知らないひとが多いんですよね。 |
|
── | 知らないです! |
だから、せっかく祇園祭で 宵山に来て、山鉾巡行見て 帰っちゃうひとが多いと思いますけど、 ぜひ夜、見るといいと思います。 |
|
京都の御輿、見たーい。 |
|
未だに長刀鉾は 女性は乗れないじゃなかったかな。 |
|
── | 女性ができるものもあるんだけど 禁止のものもあるらしいですね。 |
最近はやってないのかもしれませんが、 昔はね、ちまきを捲いたんですよ。 ちまきをもらうっていうことで、 こどもは盛り上がるんですよ。 |
|
── | 燃える(笑)! 甘いお菓子のちまき? |
しょっぱいご飯のほう? |
|
いえいえ、ちまきって魔除けなので、 それを家に飾るんですよ。 |
|
── | 飾るちまきでしたか! |
それが加熱して、盛り上がりすぎて、 一回禁止になったんですよ。 また復活していると思いますが。 うちも長刀鉾のちまきを 家の玄関につけてます。 |
|
── | あっ、目が点になるようなことが 書いてありますよ。 「かつては船鉾の鉾に 10歳前後の少年が稚児として乗っていた。 2千万円ともいわれる費用がかかるため、 京都の資産家の家庭から選ばれた」。 |
そう、だから長刀鉾とかは ものすごい金がいるんですよ、これ。 |
|
── | 葵祭りもそうだって言ってましたよ。 斎王代。 あれ、着物を全部しつらえるって ことですか。自前なんだ? え、じゃあ、京おとこさん家もそうとう‥‥? |
いえ、全然。 うちは貸衣装でした。 |
|
なるほど? |
|
── | こっちの鉾に乗るっていう稚児さんは 特別なのかもしれない。 |
そう。鉾に乗るのは ちょっと別格です。 位でいうと正一位とかだと思いますよ。 |
|
── | この時期の京都は ホテルが取れなかったりするので 避けちゃうんですけど。 山鉾巡行、一節によればインドの‥‥。 |
インドの遺跡にありますよね。 山車みたいなかたち。 |
|
── | そういう山車みたいなのを もとにしているのではないか説が。 |
そうそう。 いろんな説があるんですよね。 イスラエルの古代の祭りだとか。 |
|
けっこう世界中の祭りに こういうのありますよね。 |
|
あとやっぱり音楽には ガムランとかインドネシアの影響もあるとか。 |
|
── | はあー、おもしろいなあ! |
祇園祭の音について書いた本が 平凡社ライブラリーにありますよ。 |
|
『平安京 音の宇宙』ですね。 |
|
そうそうそう! あれ、おもしろいです。 平安朝時代に どんな音が聞こえていたかという。 |
|
あれ、いい本。 |
|
これはリンクを張られても いいくらいいい本です。 |
|
── | はい、わかりました。 Amazonはこちらです。 |
祇園祭の話も出てきますよ。 サントリー学芸賞をとったんです。 |
|
── | ありがとうございます。 京都、深いなー! では次回は「鷹乃学習」。 7月17日にお会いしましょう! |
2013-07-12-FRI |