紅色の染料や食用油をとるために栽培されるベニバナは、 古代エジプト時代から染料として利用されていたようです。 日本でも、『万葉集』にすでに 「末摘花」としてその名が見られます。 この頃に橙色の花をつけはじめ、 日が経つにつれ花の色は濃い紅に変わります。 一面のベニバナ畑は夏の風物詩ともいえるでしょう。
あすま女 朝しか咲かないんですね。


── 完全に開くのは明け方で
昼過ぎに閉じちゃう。
「3日繰り返し、4日目、花びらは
 閉じることなく散っていく」。
不思議な!
京おとこ 儚いですよね。
── 上野に行きたくなりますね。
あすま女 不忍池ね。
蓮って、散った後は気持ち悪いんですよね。
穴ぼこだらけで。
── そうそう。蓮の花のアイコラとか
ありましたよね。
気持ち悪いですよね。
美しさと醜さは、
本当に紙一重だなと思いますよ。
蓮茶とか蓮の実は、ベトナムに行くと
よく食べたり飲んだり。
京おとこ 「ロータスティ」ね。
── そうそう。
それはなんだろうと思ったら
普通のお茶に蓮の花のにおいを
つけるというものでした。
あすま女 お香にもありますよね。
── 蓮の芯のお茶は、よく眠れるお茶なんです。
すっごい苦いんですよ。
京おとこ へえー。
── 超~苦い。
蓮の芽の部分だけですよね。
よしもとばななさんに教わったんですけど。
あすま女 実から芽が出たところですか。
── 発芽する気配の、芽のもとがあるんですが、
それがすごい苦味があるので
お茶に加工する時に取って捨てるんですって。
それがいいというので。
ちょっと分量間違うと
苦くて飲めないんです。
あすま女 へえー!
── さて極楽浄土の蓮の花を愛でた後は、
「鮑」ですよ。えらい現生的な。
あすま女 来た来た~!

── 欲望的な感じがしますね。鮑って。
あすま女 どうやって食べるのが好きですか。
── まず刺身!
京おとこ 刺身おいしいですよね。
── コリコリ。白と黒で。
京おとこ 食感がたまんないっすよね。
あすま女 蒸しもいいですよね。
── 蒸しもいい。やわらかくなってね。
あすま女 千葉の漁師料理らしいですけど
バターと大蒜で身をソテーしたり。
京おとこ そうそう、洋風にしても
おいしいですからね。
鮑のステーキ。
うちの母親を伊勢神宮へ連れて行って
志摩観光ホテルで鮑のステーキをご馳走した時は
すごい親孝行しているぞ、俺!
って思いましたよ(笑)。
── あの有名な!
『エンディング・ノート』にも
出てきましたね、映画の。
あすま女 鮑といえば、カレーも。
京おとこ そうそう、資生堂パーラーの
1万円のカレーってあるんですけど、
それには鮑が入ってましたね。
── チャレンジしてみたいです。
いつか!
京おとこ ひとりやふたりじゃ、かなり躊躇しますが、
大人数で行くと負担が減るから
イベントとしていいかもしれませんね。
ぼくもその時5人くらいで行きました。
ほかのものも頼みつつ、
1皿だけ鮑のカレーを頼んでシェア。
── なるほどね。
そういう食べ方するのも
いいかもしれないですね。
上海蟹のチャーハンみたいなものですよね。
5千円するけど、みんなで
食べればっていう。
京おとこ ところで鮑が
「常節と似ている」って
書いてありますけど。
あすま女 仲間ですよ。
でもありがたみが全然違いますよね。
── 常節もおいしいんですけどね。
京おとこ おいしいですけどねえ。
あと、「『熨斗』(のし)の起源」!
あすま女 やっぱり古代から珍重されて。
── 「伊勢神宮の神事では
 薄くそいだ鮑を乾燥させ熨したものが
 奉納される。
 進物に付される熨斗の起源である」と。
京おとこ そう、だからいまも
伊勢神宮では奉納しているんですよね、
鮑を。
── それどうしてるんだろう。
食べちゃうのかな。
京おとこ 『神饌』っていう本があって、
いろんな神社の
神にお供えするものが写真で紹介されているんですが、
おもしろいですよね。
あすま女 おもしろいです!
京おとこ 神社によって
え、こんなもの奉納してるの?
というおどろきがあったりとか。
やあやあ、日本の神は
なかなかやるな! っていうね。
あすま女 生ものって多いですよね。
魚介類。
ちなみに鮑って、
熨斗袋にちゃんと鮑つけてる
パターンありますよね。
三角の紙で包んで
ぴゅっていうあれ。
京おとこ ありますね。
── 神道の話はね、掘り出すと
えらい深いことになりますね。
さあ、お魚「鱸」でございます。
鱸っていうとわたしたちは
「どうぶつの森」という
ゲームがありまして
海釣りをすると必ず鱸が釣れて、
しかも売っても安いので
「またスズキか!」って。
その印象ばかりが。
でも、じっさいは、おいしいですよね。
あすま女 おいしいですよね。
どうやってもおいしい、鱸は。
名の由来もおもしろいですよ。
ススミ説というのがあって、
── 出世魚だから「ススミ」、
口が凄まじく大きいから「スサマジグチ」、
すすけた色なので「ススケ」、
鱗がすすいだように白いから「ススギ」。
すずしく清らかな身であるから「ススジ」。
へー!
京おとこ 世の中のスズキさんは
鱸食べる時に複雑な気持ちに
なってるんですかね。
── 知り合いの「鮎川さん」の家では
鮎を食べないって言ってました。
京おとこ きっとそういうのが
あるような気がするんですよね。
── さあ、旬の野菜は「大蒜」。
大蒜の旬ってあったんだー!
あすま女 夏に穫れるんですね。


── 青森の田子町がまさに
6月末から7月上旬に
収穫時期、と。
あすま女 確かに、青森産って
よく見ますね。
京おとこ 本当に青森行くと
大蒜のお土産物がいっぱいありましたよ。
あすま女 大蒜をたくさん食べる方法って
ないですかね。
においとか気にせずにね。
── 大蒜、おいしいですよね。
一番におわないのは素揚げかな?
丸ごと揚げちゃうとホクホクして。
お肉や野菜のグリルのつけあわせにいい。
ポテトみたいに。
京おとこ おいしいですよね。
大蒜の消費量って
ここ20~30年で
絶対上がってますよね。
── そう思います。
日本人は大蒜が好きになってると思います。
大変、大変、これを注文すべきじゃない?
あすま女 「生大蒜」「超限定品」!
── 6月下旬だから、今でしょ! と。
京おとこ 今でしょ!
── 流行語を使いましたね。
収穫したてのが、ほんの少量、
限定期間で出回るらしいです。
「産地だけに出回る貴重品」とのことですよ。
あすま女 高温乾燥処理をしていないんですね。
── だから年中出回ってるんだ。
乾燥したのを我々は食べてるんだ。
生大蒜は違うんだ!
あすま女 そうかあー。
── みずみずしく、
もちもちした食感!!
って書いてありますね。
あすま女 食べたい!
── 食べたい!
京おとこ 生大蒜っていう言葉に
ぐっとくるものがありますよね。
── これを生肉と一緒に食べたい。
自己責任で。
京おとこ ああー、それはおいしいでしょうね。
あすま女 いいですね。
薄くスライスして
生肉の上に‥‥。
── もう、辛いの、くさいの我慢で。
あすま女 やや、もう。うん。
ちょっとオイル、トゥルトゥルッと。
── いいですねえ。おいしそうですね。
探して絶対買います!
ところで、大蒜の語源がすごいですよ。
「しのぶ」「はずかしめる」と書いて
「忍辱」、にんにくですよ。
京おとこ なんかのプレイかっ。
── SM四十八手のひとつ、みたいな感じです。
あすま女 こらこら。男子。
── これはどういうことなんですか!
京おとこ 強壮作用があるから、精進には数えないんでしょう。
修行僧は禁欲しないといけないので。
── 韮なんかもそうなんですよね。
京おとこ 精が付くのがNG。
── 忍辱は仏教用語で
「六波羅蜜の第三。種々の侮辱や苦しみを耐え忍び
 心を動かさないこと。
 他者からの迫害に耐え忍ぶこと」。
あすま女 きっと食べたいのね。
忍辱。
── なんだか、かえってエロスを感じますね。
あすま女 平安時代にも女子のエチケットとして
回避されたらしいですよ。
── やっぱりくさいから?
あすま女 はい。
── 全員食べればいいのにね。
あすま女 ああ、みんな食べてればわかんない(笑)。
韓国はみんな食べてるから平気。
── 韓国に遊びに行くと全然平気。
あすま女 日本だけ独特なんですかね、これ。
── やっぱり香りについては
かなりうるさいですよね。日本。
あすま女 『源氏物語』にですね、
「いかに薬用とはいえ
 これを食った女に接するより
 鬼を抱いた方が良いとまでいわれた」って。
京おとこ ははははは!
── ははあー!
嫌われてますね。
鬼を抱く。
抱くんだ、抱かれるんじゃなくて(笑)!
京おとこ 鬼女(きじょ)ってやつですね。
── やがて鬼婆になる人?
鬼女を抱くって恐ろしいです‥‥。
光源氏に言われたら女性は食べなかったでしょうね。
ところで先日スペイン産大蒜というのを
通販で買いまして。
これがくさいのなんの!
あすま女 あ、強いんですね。
── 日本のって、
とりあえずむかなければ
くさくないじゃないですか。
ところが、部屋中が匂う。
困ったので野菜新鮮袋に入れて冷蔵したんですが、
においがしみ出て、もう冷蔵庫中、たいへんなことに。
こりゃ、いかんと、
面倒ですが全部むきまして、
オリーブオイル漬けにいたしました。
密閉瓶ですが、それでも匂います。
スペインのひとも大蒜好きですよね。
京おとこ これをアテにカヴァとかを
がばがば飲むっていう
感じですかね。
── そういうことですね!
‥‥さて、くさい話はこれくらいにして、
京おとこさん、ぜひしゃべってください。
「祇園祭」ですよ!
京おとこ 京都の夏といえば祇園祭ですね。
── 「全国3千の八坂神社で
 いっせいに祭りが行われます」。
総本社が京都八坂神社の祇園祭。
京おとこ ‥‥ものすごいイヤミなこと言っていいですか。
(京ことばで)
“よそでもあるんですか。”
一同 うはははは!(爆笑)
── もーう。出たよ、いけず。
博多祇園山笠だってあるじゃないですか。
あすま女 厄除け、疫病除け?
八坂神社って、
そういう神様なんですね。
京おとこ 素戔嗚尊(スサノオノミコト)ですね。
7月の1カ月間、ずっと祭りなんですよ。
7月17日が山鉾巡行なんですけど
その後も祭りがあるんですよ、
それを「後の祭り」と
京都のひとは言うんです。
── まさしく、後の祭り。
京おとこ そうなんです。
実はそのお稚児さん、
やったことあるんですよ。
あすま女 おっ!
── それは、名誉‥‥。
京おとこ 幼稚園の時に。
── すごいじゃないですか!
京おとこ 馬に乗って京都の街をぶらぶら。
祭りの列をなして。
あすま女 すごいじゃないですか!
── 神様扱いですよね?
京おとこ 八坂神社から四位っていう
位をもらいました。
── ちょ、ちょっと。
位をお持ちでいらっしゃったんですか。
京おとこ ちょうど山鉾が通るところが
学区だったので。
本当に祇園祭はみんな好きです。
小学校、中学校、
街中も休みになるんですよ。
── 山鉾を管理しているエリアの
商売屋のひとは
その時期宅配便のトラックが
入れなくなって困るって。
京おとこ ああ、そうでしょうね。
あすま女 渋滞ですものね。
京おとこ 本当に鉾町に生まれたひとはね、
ずっと、特に男は
祇園囃子をやらないといけないから。
── 葵祭の後くらいから
もう囃子の練習の音が聞こえてきますよね。
そっかー。ずーっとお祭りかあ。たのしいなあー。
京おとこ 御輿も出るんですよ。
── えっ? おみこし?
京おとこ 7月の17日、朝から山鉾巡行があって、
夜は御輿がまわってくるんですよ。
いわゆる八坂神社の氏子のところには。
── 今日の御輿って、江戸とはちがって、
やっぱり「はんなり」した?
京おとこ いや、荒っぽい感じですよ。
あすま女 「わっしょい」ってやってるんですか。
京おとこ やってます。
── 荒事なんですね。
京おとこ ええ。
あすま女 すり足とかじゃないんだ(笑)。
京おとこ (笑)意外とその御輿を
知らないひとが多いんですよね。
── 知らないです!
京おとこ だから、せっかく祇園祭で
宵山に来て、山鉾巡行見て
帰っちゃうひとが多いと思いますけど、
ぜひ夜、見るといいと思います。
あすま女 京都の御輿、見たーい。
京おとこ 未だに長刀鉾は
女性は乗れないじゃなかったかな。
── 女性ができるものもあるんだけど
禁止のものもあるらしいですね。
京おとこ 最近はやってないのかもしれませんが、
昔はね、ちまきを捲いたんですよ。
ちまきをもらうっていうことで、
こどもは盛り上がるんですよ。
── 燃える(笑)!
甘いお菓子のちまき?
あすま女 しょっぱいご飯のほう?
京おとこ いえいえ、ちまきって魔除けなので、
それを家に飾るんですよ。
── 飾るちまきでしたか!
京おとこ それが加熱して、盛り上がりすぎて、
一回禁止になったんですよ。
また復活していると思いますが。
うちも長刀鉾のちまきを
家の玄関につけてます。
── あっ、目が点になるようなことが
書いてありますよ。
「かつては船鉾の鉾に
 10歳前後の少年が稚児として乗っていた。
 2千万円ともいわれる費用がかかるため、
 京都の資産家の家庭から選ばれた」。
京おとこ そう、だから長刀鉾とかは
ものすごい金がいるんですよ、これ。
── 葵祭りもそうだって言ってましたよ。
斎王代。
あれ、着物を全部しつらえるって
ことですか。自前なんだ?
え、じゃあ、京おとこさん家もそうとう‥‥?
京おとこ いえ、全然。
うちは貸衣装でした。
あすま女 なるほど?
── こっちの鉾に乗るっていう稚児さんは
特別なのかもしれない。
京おとこ そう。鉾に乗るのは
ちょっと別格です。
位でいうと正一位とかだと思いますよ。
── この時期の京都は
ホテルが取れなかったりするので
避けちゃうんですけど。
山鉾巡行、一節によればインドの‥‥。
あすま女 インドの遺跡にありますよね。
山車みたいなかたち。
── そういう山車みたいなのを
もとにしているのではないか説が。
京おとこ そうそう。
いろんな説があるんですよね。
イスラエルの古代の祭りだとか。
あすま女 けっこう世界中の祭りに
こういうのありますよね。
京おとこ あとやっぱり音楽には
ガムランとかインドネシアの影響もあるとか。
── はあー、おもしろいなあ!
京おとこ 祇園祭の音について書いた本が
平凡社ライブラリーにありますよ。
あすま女 『平安京 音の宇宙』ですね。
京おとこ そうそうそう!
あれ、おもしろいです。
平安朝時代に
どんな音が聞こえていたかという。
あすま女 あれ、いい本。
京おとこ これはリンクを張られても
いいくらいいい本です。
── はい、わかりました。
Amazonはこちらです
京おとこ 祇園祭の話も出てきますよ。
サントリー学芸賞をとったんです。
── ありがとうございます。
京都、深いなー!
では次回は「鷹乃学習」。
7月17日にお会いしましょう!
2013-07-12-FRI
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