── | 二十四節気では「小暑」になるんですね。 「すでに日は短くなり始める」 ‥‥かなしい! 「一方で、暑さはこれからが本番です。 小暑と次の大暑の間を暑気と呼び、 暑中見舞いを出すのもこの期間です」と。 そして「温風至」。 「本格的な夏の到来」と。 もうそろそろ九州南部、沖縄は 梅雨明けしているといいな。 |
スカッとね。青空で。 |
|
── | 飛行機雲を見上げたり。 |
そうですね! |
|
── | そんな季節の旬の魚は‥‥ おお、「鱧」だ! 鱧がきました。 |
一同 | わー。(拍手) |
── | 京おとこさんに、 語っていただきましょう! |
京おとこさん、 1年間待ってたって感じ。 |
|
いやいやいやいや(笑)。 |
|
じゃましませんから もう、どうぞー。 |
|
東京に来て、和食の店に鱧があって、 「あ、鱧ですか!」って ちょっと関西弁で料理人に言ったら 「京都の人はハモハモうるさい」って 言われましたよ(笑)。 |
|
いきなりけんか腰ですいません! 江戸っ子が。 |
|
でも本当に思い入れがありますよ。 |
|
ほーほーほー。 |
|
鱧の季節といえば、 祇園祭なんですよ、やっぱり。 |
|
── | 「祇園祭は鱧祭」と言われるとか。 |
そうです。 7月17日の祇園祭に近づくにつれて どんどんどんどん 鱧の値段が上がっていくんです。 |
|
── | はあー! どうやっていただくのが好きですか。 |
やっぱり「鱧の落とし」が 一番うまいですよね。 それを梅肉で食べるか、 山葵醤油で食べるかなんですよ。 |
|
んんー。 梅肉は独特! |
|
うちの親父は山葵醤油派だったんで、 ぼくもついつい 山葵醤油派ではあるんですが。 時々京都から新幹線に乗って帰る時とか 駅近くで売ってる鱧寿司とか ついつい買っちゃうんですよね。 あの妙な甘さのある寿司っていうのが また、たまらなくて。 |
|
── | 穴子のような煮詰めたタレ。 |
鱧は骨切りっていうのに すごく技術がいる。 |
|
── | ということは、ご家庭では? |
やー、まずしないですね。 |
|
── | しない。 じゃあ、食べに行くか、 買ってくるか。 |
家で食べるときは、買ってきてました。 骨切りした鱧を買ってくるんですよね。 |
|
もう湯引きしてあるものですね。 |
|
ええ、それが鱧を家で食べるときのパターンです。 |
|
── | 骨切りというのは 生の状態でするんですか。 湯引きした状態でするんですか。 |
生の状態でやってますね。 |
|
── | 切って、それを湯引きする。 |
修業に7、8年かかるというくらいの技術だそうです。 |
|
── | 骨を断つけど、肉は切らない。 落としちゃいけないわけですね。 |
そうなんですよ。 あの音がね、また。 ジョリジョリっとした音が いいんですよね。 鱧の骨切りの音。 |
|
いいですねー。 |
|
── | しかも、食べてみると、 一切のどにひっかからないでしょう。 |
包丁に秘密がある? 独特の包丁使いますよね。 骨切り包丁があるらしいんですよ。 |
|
── | 「有次」とかで売ってるんでしょうね、 きっと。鱧切り包丁。 |
刃が厚いんです。 刃の幅が太いというか。 |
|
── | おもしろーい。 |
それを使うことと、 ちから加減の合わせ技で、 あの鱧ができるんでしょうね。 それから、鱧といえば、 「皮を細かく刻んで 胡瓜と合わせた酢の物」。 これはいいですね。 |
|
── | 皮! |
「うざく」みたいなものですね、 それの鱧の皮版。 |
|
胡瓜で酢の物にすると。 |
|
── | 「葛粉をまぶして湯引きした牡丹鱧」 とかは、やっぱり食べてたんですか。 |
牡丹鱧‥‥は、食べたことないです。 |
|
片栗粉をつけると、 牡丹の花みたいにふわっとなるそうですよ。 |
|
普通に湯引きしてもそういう感じになりますけど、 よりきれいに見えるんでしょうね。 |
|
── | いいなあ、京都の人~。 鱧はやっぱりうらやましいです。 |
去年、京都水族館ができたんですが、 「鱧展」ってやったんですよ。 |
|
── | でえー! さすが京都! |
夏休みなので こどもとかいっぱいいるんですけど、 こどもたちが鱧を見て 「おいしそう!」って 言ったんですよ(笑)。 いけすじゃないんだから、この水族館は。 |
|
それ、ヨーロッパ人のこどもが 牛を見て「おいしそう」って言うみたいな? |
|
── | それにしても、東京ではいただきませんね。 |
ほんっと食べさせるところ、ないですよね。 |
|
── | 関東に住んでいると、 大人も大人、二十歳そこそこじゃなくて、 三十路をとうに越えてからですよ、 鱧を初めて食べたのは。 |
だって、「京阪以外では、味は良いが 骨が多く食べにくい雑魚」とされているんですもの。 |
|
── | 蒲鉾にされちゃったり。 もったいのうございます。 |
やっぱり骨切りしてなんぼ、って そういうもんなんでしょうね。 東京には板さんに、 骨切りの技術があるひとが 多くないんだと思いますよ。 だからちょっとした店に行かないと なかなか出てこない。 |
|
── | ちゃんと関西の料亭や割烹で修行しないと 技術は学べないんでしょうねえ‥‥。 さあ、野菜でございます。 「獅子唐辛子」。 「ししとう」ですね。 |
夏っぽいですね! |
|
おいしいですよね。 |
|
── | これ、なんで時々辛いのが あるんですかね。 |
当たりはずれがありますよね。 |
|
── | あれ、「当たり」なんですか。 「はずれ」なんですか。 |
ふふ。どっちでしょう(笑)。 同じ木についてても変わらないのかな。 「10個の中に1個ほど辛いものがある」 んだそうですよ。 |
|
── | 食べもののロシアンルーレット。 つまり、どんなに品種改良しても 全部が甘いししとうはできない? 最近はそれでも、少なくなってきている、 という実感はあるんですが。 「カラ!」っていうのに 当らなくなった気がしますから。 |
むしろ辛いというのを 売りにしたほうがいいんじゃないですか。 全部辛く揃えたほうが。ね? |
|
── | 全部辛くちゃ 「あおとう」じゃないですか!(笑) |
あははは。そうだそうだ。 |
|
── | 10個に1個辛いくらいがいいのかも。 |
ちょっとイベント性もありますし。 |
|
── | きらいじゃないですよね。 だから食べない、っていう人 あまり聞かないですよね。 ええと、調べましたところ、 「栽培中に水分ストレスがかかったり、 受精せず実が大きくなることがあり、 そうなった時に辛いものが発生する」 そうなんです。 |
あらら。 |
|
── | 実を守るために辛くなるのかな。 |
じゃあ、ありがたい気持ちで 食べたほうがいいですね。 |
|
── | 「ああ、辛っ!」って 思いながらも。 「きみもつらかったね」と。 |
これもまた「万願寺」とか 京野菜に、親戚がいますよね。 |
|
── | あ! 京都の万願寺とうがらし! 万願寺ははずれなしにおいしい! |
そうですね。 おいしいですよねえ。 |
|
うん、甘い。大きいし。 なんで京都って、 ああいう独特なものが育ち、 残ったんですか。 まあ、加賀もそうですけど。 |
|
古くから品種改良が施されていた? |
|
── | 精進料理が発達したから? 魚が手に入らないうえ、 お寺では野菜を食べるから、 精進としての野菜料理が発達して、 ひいては、野菜を工夫した文化が 残ったのかな? |
ほかにうまいものが なかったんでしょうね。 だから野菜に熱中するしか なかったんじゃないですか。 |
|
── | ‥‥京都の方に、 「ほかにうまいもんがなかった」 って言われても(笑)! |
いえ、これは本当に、京都の人間って、 生魚とか新鮮な魚のおいしさは、 わかりにくいと思うんですよ。 |
|
── | そっか。鰹の刺身とか 困っちゃうかもしれないですね。 |
ですよね、うん。 |
|
── | 伏見、田中、山科、万願寺、 鷹峯(たかがみね)。 いろいろあるんですね。 |
そうですね、伏見とうがらしっていうのも ありますね。 |
|
── | では、次にいきましょう。 「李(すもも)」! |
あら、この間似たもの‥‥。 杏か! この間お話しした。 |
|
「プルーン」も李ですね。 |
|
── | 「バラ科サクラ属で、 梅やサクランボに近い」そうです。 李は味が淡泊というか、 酸味が強く、甘み少なく。 |
最近は「ソルダム」がよく並んでます。 |
|
── | ソルダムはすっぱくて 実がかたくて大きくて味が濃い。 緑っぽいやつですね。 李は、全体的にすっぱい印象がありますよね。 この間、スーパーで李を買ったら 「ガラリ」って書いてあったんですよ。 |
「ガラリ」? 品種ですかね。 |
|
── | えーっと(調べる)、 あ、ガラリは、南方系、台湾の李なんだそうです。 |
李とかプルーンって どうしても女子のイメージが 強いんですよね、なんか。 |
|
ああ! あんまり男子は食べない? すっぱいから。 栄養面では葉酸、鉄分、 ナトリウムを排泄する働き、 カリウムが豊富ということで、 妊娠中の女性によいと言われますね。 |
|
あ! 確かに、 うちの妻は妊娠中 やったら食ってました。 プルーンを。 |
|
── | プルーンはお通じにもいいですね。 |
それでなんとなくぼくのなかでは 女子イメージなんですね。 |
|
── | 李系のくだものは、皮をむかずにがりがり。 種はあるけど、食えるので好きですよ。 皮をむくめんどくささがない。 |
そのままかじれる。 |
|
── | 知り合いにバナナもイヤだっていう 人がいますからね。 めんどうだからって。 |
その人は蜜柑も食べない? |
|
── | 食べない。 そういう人もいます。 ま、ちょっとかわってるかもね。 |
その気持ち、なんとなくわかります。 バナナって、なんかこう 食べてる姿が間抜けな感じがして(笑)。 |
|
モンキーな感じ? |
|
── | ふふふ。 そして季節の行事は「お中元」ですね。 お中元のいわれが書かれています。 「中国では1月、7月、10月の15日を 三元といい、それぞれ上元、中元、 下元と呼んでいました。 それがお盆と結びついたのがお中元」。 もともとはお盆に親類や知人を 訪ねるときに品物を贈る習慣、 これが今、日頃の感謝の気持ちを 伝える贈り物としてなったと。 でも‥‥。 |
減りましたね。 |
|
一同 | 減りましたね。 |
── | デパートなんかも 年々売り場がちっちゃくなってる。 |
困っているでしょうね、 デパートにしてみるとね。 |
|
ほんとですね。 |
|
── | だんだんと虚礼に なっちゃってる部分もあるのかもしれないですね。 でもね、お中元、お歳暮の ちょっと後にデパートに行くと それを分解したものを 安く売ってるんですよ。 |
いいこと聞いた! |
|
ハムとかですか。 |
|
── | そーう。 けっこういいハムとか ばらして安く売ってるので 高島屋の地下とかで けっこう遭遇しますよ。 それ狙いのおばさまたちが 城壁のようにセール売り場を囲ってて 大変なことになってますけど。 素麺とかも普段買わない 桐の箱入りのいいやつとかが えらい安い値段で出てたりして。 そういうのに遭遇すると買います! |
お中元の時期って、 関西と関東で違いますよね、確かね。 |
|
関西は旧暦じゃないですか。 |
|
そうですよね、遅いですよね、確か。 |
|
── | ということで、また次回! 「蓮始開(はす はじめて ひらく)」です。 7月12日にお会いしましょう。 |
2013-07-07-SUN |