21世紀の 向田邦子をつくろう。 |
■「久世塾おぼゑがき」58号 打ち切りなんてコワくない! 「当時僕は“打ち切りの元さん” なんていわれたもんですよ」と、 山元先生は苦笑いしながら言った。 「でもね、『青が散る』が13回で 打ち切りが決まった時には、 正直言って“助かった〜”って思ったね」と、 今度はイタズラ小僧のような笑顔で言う。 えっ?『青が散る』って打ち切られたの? 結構話題になったドラマなのに、どうして? 「連ドラの視聴率が20%平均だった時代に、 あのドラマは毎週5〜6%しか取れなかったんだから しょうがないんだけどね」 でも僕はドラマが面白かったから原作を買ったのに。 「あのドラマで一番喜んだのは宮本輝さんだね。 なにしろドラマ放映後に原作がバカ売れしたんだから」 そうか、僕も宮本さんを喜ばせた一人だったのか。 そういえば劇中で「人間の駱駝」を歌っていた 大塚ガリバーってどこ行ったんだろ? この日の特別講師は、 『青が散る』や『はいすくーる落書』 『パパとなっちゃん』、それに向田邦子終戦特別ドラマも 数本手掛けるベテランの山元清多先生。 とても気さくな雰囲気の方だったんですが、 本番前の控室で、 「『青が散る』も好きだったんですけど、 『はいすくーる落書』に思いっきりハマッたんですよ」 と言う僕に、 「あぁ、『はいすくーる落書』ね。 あれはいわく付きのドラマでね」と意味ありげに呟く。 それっていったい…と聞きかけたときに、 「失礼しまーす!」と元気な声が入り口から聞こえた。 そこにはなぜかあの「あさりど」の二人が。 「今日は見学に来ました〜!」と これまた元気にごあいさつ。 う〜ん、『久世塾』にも いろんなお客さんが来るようになったな。 ところでさっきの“いわく”って? 結局控室で聞けなかったその答えは、 講演会の中で明かされた。 「あのドラマが放送されて スグにいろんなところから抗議の電話が来た。 放送中ずっと電話が鳴りっぱなしで、 対応するスタッフも大変だったんですよ。 するとそのうち励ましの電話も来るようになった。 まさに賛否両論渦巻いたわけですよ。」 ふんふん、それでそれで? 「僕は、“オモシロイ! いずれにしろ反響があることはいいことだ” というようなことを言ってたんですが、 結局テレビ局の方が折れてしまってね。 あれは未だに再放送できないドラマなんですよ」 なるほど、ということはあのドラマは もう二度と見られないのか。……残念! でも確か「2」があったよね。 と思ったら、続編は小松江里子さんとの共作とのこと。 そういえば少し毒が抜けていたか…。 本職はあくまでも舞台だという山元先生。 「でも舞台じゃ食えないから 仕方なくラジオやテレビで書いていたんですよ。 あの時代はみんなそうだった。役者も、作家も……」 そういいながらも、 どれが一番好きですか?という質問には 「ラジオドラマ!」との答えが。 「だって予算を気にせずにホンが書けるからね」と これまたカワイイ笑顔で。 講演会終了後は、久世塾長と共に廊下で たくさんの塾生たちに囲まれて熱心に脚本談議。 「このホン読んでください!」と脚本を渡されたりして、 塾生パワーにちょっと押され気味。 「この世界で長くやるコツはね、 あんまりたくさん書かないことだよ」 と言い残されて、静かに塾を後にされました。 ダンディーやなぁ、元さん! (失礼、ちょっと馴れ馴れし過ぎました) ところでこの日は通常の講義終了後に、課外授業として、 事務局長でもある高野プロデューサーによる シナリオ実演ゼミが開かれました。 テーマは「三角関係」。 男女二人ずつの俳優さんが参加し、 高野監督の演出の元、 塾生の書いたさまざまなシチュエーションの 三角関係が即興で演じられていく。 実際に演じられたシナリオについて、 みんなが好き勝手に「いちゃもん」を付け、 それに高野さんが演出家の目でコメントを入れていく。 まさにゼミナールっていう雰囲気で、とってもホット! しかしこんなたくさんの人が見ている前で 突然演技に入れるなんて、 「やっぱ役者ってすげえな〜」と感心しきり。 と思っていたらさっそく次の日に、 複雑な三角関係を演じた田中千絵さんから メールが届きました。 【こんにちは! 今回は課外授業ということで、 前回のコメントに書いた 「もっとみなさんのシナリオが読みたかった!」 という希望が届いたのか、 実現できて非常に嬉しかったです。 しかも今回は「三角関係」がテーマだったので 板倉(香)さんたちと一緒にお芝居もすることができ、 私自身楽しみました。 その中でも印象に残ったのは カゴシマ君(ゲイの役をした方です)と 一緒にやらせていただいた 「娘と夫と妻の三角関係」でした。 正直自分が想像していた以上に難しかった〜! 当たり前かもしれませんけど。 私もこれからたくさんの人生経験を積んで あの気持ちが素直に表現出来る役者になりたいです。 という訳で、「みなさんのシナリオを読みたーい!」 という思いが届いたので、 調子にのってたお願いしちゃいましょう! 「また、課外授業をやってくださーい!」 それでは、また久世塾でお会いしましょう!!】 あの若さで“妻&母”の役は大変だったでしょうけど、 頑張っていただきました。 千絵ちゃん、また遊びに来てね。 (余談ですが、上のメールでも登場している 新人俳優のカゴシマくん。男前ですが、 その名の通りかなりの“濃い”キャラです) そしてこの次の日には『久世塾』の “遠足”ともいうべきスタジオ見学が、 TBSの緑山スタジオで行われました。 あの久世塾長が「燃えた」その時のお話は、また次回で。 それでは。 文責 さとう ★久世塾正式サイトへのアクセスは http://www.kanox.co.jp/へ。 |
2000-08-23-WED
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