21世紀の
向田邦子をつくろう。

<野望篇>

裸でも王様

脚本家養成講座久世塾で糸井賞をいただいた
岡本貴也(おかもとたかや)です。
このコーナーの前任者「文責さとう」さんから
乗っ取らせていただきましたぁ。

この夏まで僕は『Mac Fan internet』っていう
楽しい雑誌を編集していて、
ほぼ日「紙版」の担当編集者だった関係で、
久世塾以前に糸井さんと面識がありました
(ほとんどメールでのやり取りだけでしたが)。
糸井さんは当時まだ見ぬ僕を、
「岡本」という名前だけで「ゴム」とあだ名を付けて
(理由? ほらもう寝なさい)、その上さらに、
「ゴムだけに風船みたいな太っちょい奴に違いない」
と鼠穴で笑い者にしていたそうです(笑)。

ところで、
その勤めていた編集部の先輩に昔言われたことがあります。
先輩「男が目指すべきで最も気持ちのよい職業って、
   何だか知ってるか」
岡本「総理大臣、社長、弁護士、医者、パイロット、
   スチュワーデス、看護婦、女子高生‥‥」
先輩「バカ違うよ、
   ロック歌手と映画監督だよ」

そんな彼はなぜか「同時通訳になる」って編集部を辞めて
渡米したのですが、その二つの職業は確かに
気持ちがよさそうだなあと思うわけです。
どちらもある種、王様じゃないですか。
王様は気持ちいいんです、裸になるくらい。

ところが僕は歌がとんでもなく下手くそ。
もしもピアノが弾けたとしても音痴は治りません。
実は高校時代からずっとバンドをやっていますが、
いつも楽器部専門。
コーラスすらもできないほど音程が取れないんです。
そして私はもう28歳。
歌手デビューには歳とりすぎてます。
で、ロック歌手にはなれないと
(大体いまどき「ロック歌手」て言い方するぅ?)。

残るは映画監督。
こう見えても映画なら撮ったことあるんです、ビデオで。
え、それは映画じゃない?
ですよねえ。やっぱフィルムじゃなきゃね‥‥。
あ、写真は撮れまっせ、ほら十年前に買ったカメラで。
え、それもダメ? じゃあどうすれば‥‥。
先輩は言いました。
先輩「映画ってなあな、
   脚本がよけりゃ何やっても面白いんだよ」

彼曰く、役者が棒読みでもカメラがブレてても、
脚本が面白いければそれだけで物語に引き込まれる、
けれど、
どんな凄い監督が撮るとしても脚本が面白くなければ
何をどう料理したってつまらない作品にしかならない、と。

だから、私は脚本家を目指すことにしました。
幸いにして専攻も物理学なので打ってつけです(無関係)。
さっそく劇団を作って演劇をやることにしました。
公演を何度かやってみて、
満席でも全く儲からないことに、やがて気がつきました。

よし、こうなりゃ次はテレビだ!
あそこならいっぱいお金持ってるぞ。

‥‥こうして、
僕は「テレビの脚本家」を目指すことにしたのです、
いつの日か映画監督になるために(だからなれないって)。

2000-12-17-SUN

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