21世紀の
向田邦子をつくろう。

<野望篇>

まるで収まらない

あと20日ほどでネットドラマが始まります。
正直、やばいです。

ドラマを実際に撮影してくださる制作会社さんへ
行って来たのですが、そこは
やれ美術打ち合わせだ、やれロケハンだ、やれ出演交渉だ、
とまるで戦場と化していました。
僕はと言えばその横で
「ほけえーっ」と突っ立って聞いているだけ。
だって何にも分かんないんだもん‥‥。
ああ、僕って木偶のゴム。

脚本家って、制作にほとんど関われないんですね。
知りませんでした。けっこう寂しいです。
‥‥あれ、僕はこのドラマの監督じゃなかったっけ?
なぜに放ったらかしなんだー! 現実は厳しいのです。

それに今、僕は意見を言えるような状態ではありません。
なぜなら、
密かにとんでもない失態をやらかしているのですから。
それは、
「脚本が長すぎたみたい‥‥」

そうなんです。
今回の脚本、ぜんぜん所定時間に収まってなかったんです。

と言うのも、先日わが劇団「タコあし電源」の役者に
台詞パートのみを読んでもらい、その時間を計ったらなんと
計17分42秒。
ほぼ日ドラマの規定時間は18分21秒(=1101秒)。
余り、39秒
しかないってことが判明してしまったのです、いまさら!

39秒では台詞以外の場面がとても収まりそうもありません。
それにタコあし電源の役者はなぜかみな、早口なんです。
普通に話したらきっと18分は軽く越えます。
ああ、どうしましょう。
このまま撮り始めるとドラマが途中で終わってしまいます。
それもクライマックスでブチッっと。

あ、そうだ!
久世塾講師の脚本家=清水先生に御相談だ!
久世塾で夏に書いた脚本だって、
先生の端的なアドバイスあっての完成ぢゃないか。
ああ恩師よ、私めはどうすればいいのですかっ?

子曰く「無理よ。この脚本、余分なシーンないもの」
ガァーン。本当ならそれは誉め言葉なのに‥‥。
子曰く「書き直せば?」
うっ。そ、そんな殺生な‥‥。もう時間ないんですぅ。
でもそんなこと言ってられん。
こうなったら一か八かやってみるしかないんちゃうの!
えーい、書き直すなら今ぢゃ!

と覚悟した矢先、制作会社様よりお電話。
「撮影場所を決めたんだけど、脚本って変更ないよね?」
ガァーン! ガァーン!

そうして僕は途方に暮れたのです。
カラスの鳴き声すら聞こえてきます。

けれどここで負けたらアカン。
「こりゃ編集で切るしかないな」と制作会社の方。
ダメ! そんな甘い言葉に誘惑されたらアカンでぇ、ゴムよ。
なんてったって、おめえのデビュー作じゃねえか、ええ?

「お願いします。もう一回書かせて下さい!」
「バカヤロー、ロケ場所は変更できねえっつうの」
「そこを何とか! 平に、ひらに〜」
と突然、僕の携帯電話がリリリ。
よりによってこんな時に、誰だよまったく。ピッ。
「もしもし? ‥‥あれ、先生ですか?」
子曰く「コホン。さっきの脚本だけど、台詞減らせば?」

おおーーっ! その手があったかぁ!!
台詞を各シーンから少しずつ削ったら、
ロケ場所も変更しなくて済むやんか!
すげー、さすがは先生だあ。
よーし、やるぞー。

最後にプロデューサーが一言、
「あんまり削ると説明的な手続きを踏むだけになって、
 岡本らしさがなくなるから、まあ気を付けて」

い、意味が分かりませーん。


岡本さんへの直接メールはこちらへ:
okamoto@tacoashi.com

2001-01-23-TUE

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