21世紀の
向田邦子をつくろう。

<野望篇>

カッコ悪いカット割り

ゴムだけに、長く伸びてこそ力を発揮するのだ、
などとわけの分からない言い訳をしながら
脚本が時間オーバーのまま撮影に突入するゴム岡本です。

えー、そろそろ脚本に構ってられなくなりました。
脚本を削るのは最終的に演出家の裁量だと思うのですが、
これまた演出も僕なもんで、自作品を自分で切るとなると
これ以上はなかなか客観視できなくて、参ってます。
結局「編集で切る」ってことになりそうです‥‥。
(前回から2分ぶんくらいは短くしたのですが、まだ長い)

さて、僕と共同演出をしていただけるプロデューサー様から
「カット割りを作れ」と至上命令が下りました。

カット割り?
スイカ割りもしたことないのに‥‥。
(何言ってんだ?)

どうやら、現場ではカメラさんや照明さんなんかが、
その「カット割り」を元にセッティングしてくれるそうで、
ドラマ撮影には欠かせないものだそうです。はて?

あ、そう言えば、自主映画撮った時も監督が何か書いてた。
どんな絵を撮るかをカットごとにイラストにして、
その横に台詞とか書いてある、あれだ。

なるほど、僕が普段やってる舞台だと一幕全体を通して
役者の動きを演出したりするけど、
テレビってカメラが切り替わるごとに
演技を付けなくちゃいけないのかもしれない。
役者さんもそりゃ、絵があった方が演技しやすいのかも。
(正直、よう分かりません)

とりあえず、映画やテレビドラマなんかから
カットの繋ぎ具合とかをなんとなーく盗み、
『映画撮影法』みたいな市販本を3冊ひぃこら読み、
紆余曲折を経て3日徹夜後に書き上げました、カット割り。
自分の脚本を超具体的にビジュアル化するのって
めちゃくちゃ楽しい! これは面白い!(ポンチ絵だけど)
脚本の余計な部分とか足りない部分もよく見えてくるし。
ああ大きな満足感。もうすっかり撮り終えた気分です。
気が付くと、分厚い紙の束ができていました。

たまたま会ったので、劇団員の園尾に紙の束を見せると、
園尾「絵が下手だなあ」
岡本「なに!」
園尾「小学生が描く4コマ漫画よりひどい」
岡本「え、絵なんか描けなくったって脚本は書けるもん」
園尾「センスなし。うちの舞台美術に文句言う資格なし!」
岡本「ぐっ‥‥」

今度はプロデューサー様に報告。
岡本「絵を描くの大変でした。すごい量になりまして」
P様「は? 何が?」
岡本「いえ、だからカット割り。今から持っていきますね」
P様「おい待て。『絵コンテ』描いたんじゃねーだろうな」
岡本「へ?」

ひえーっ!
描いてました、絵コンテ。

「カット割り」って、実は脚本に直接書き込むもので、
1:どっからどこまでの台詞が1カットか、
2:そのカットではカメラに誰がどう映ってるのか、
‥‥を「絵」ではなく「文字」で書くもの、なんですって。

か、書き直しなのねーっ。

再び徹夜して、仕上げました
「カット割り(文字だぜ!)」。
さっそく制作会社カノックスへ提出に行ったのですが
そこで僕を待ち受けていたのは‥‥。

それは、一向に前へ進まない演出(僕)に対する
スタッフさんからの大質問攻めでした。ひえーっ。

「衣装なんですが、これでいいですかっ!?」
「美和が描いてる絵は、どんな感じ?」
「ロケ地、朝の6時半集合で、この順に撮るけどいい?」
「小道具の卒業アルバム、どんな色がいいの?」
「真壁役の○○さん、学校あるんで13時アップで!」
「明日、役者さん顔合わせですから準備よろしく!」

岡本、パニック!


岡本さんへの直接メールはこちらへ:
okamoto@tacoashi.com

2001-02-04-SUN

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