21世紀の
向田邦子をつくろう。

<野望篇>

怒っちゃやーよ

さっ! キャストも決まってあとは撮るだけ!
ってワケにいかないのでした。
舞台もそうですが、ドラマも打ち合わせが多いようです。

まずはロケハン。
ロケーションをハンティングするという
訳の分からない英語なんですが、
見てきました、ロケ予定地。

演出部の方々に色々なところ探していただき、
最終的に役者の方全員がOKな日程で使用できる場所が、
ロケ現場となるわけです。

今回はおおざっぱに3箇所。海、学校、家屋です。

海(砂浜)
寒いです。人もいません。
脚本上、海の場所を特定できないようにしたかったので、
「どこかどういう風に撮れば背景が映り込まないか」
ってな議論をします。

海(港)
脚本上、港という設定になっているので、
同じ場所で今度は港っぽく見せる必要があります。
コンクリートの波止場らしき場所があったので、
これもなんとかなりそうです。でも、寒い‥‥。

学校(校庭)
たいへんです!
この季節、どこの大学も高校も中学も入学試験!
ロケ用に場所を提供してくれないんですっ。
困った演出部AD中島さんが選んだ場所は、なんと公園。
行くと、野球場2面分がフェンスに囲まれている所でした。
一部を見れば(地面とか)、そりゃ学校に見えるんですが、
全景を入れた時にどう見ても公園‥‥。
これは別にADさんが悪いわけではありません。
そういう脚本を書いた僕が悪いわけでもありません。
そこを学校に見せれない演出が悪いわけでもありません。

誰も悪くなく、仕方のない状況では、それを打破するための
議論が必要になってきますよね。
ここで「こんな場所でやってられるか!」とブチ切れたら
人として嫌われますし、そんな安易なヤツ、僕は嫌いです。
そもそも、集団でお金をかけて何かを作る作業の楽しさって
こういう逆境にこそあるんだと思います。
カメラ、演出、脚本、照明、美術、役者が色んなアイデアを
持ち寄って、その場で「最高の苦肉の策」を産み落とす。
これこそが物作りの神髄だと思うんですよね〜。

ロケハン隊は悩みます。
高野P「学校の実景を挟むか‥‥?」
「実景を挟む」というのは、他のところで撮った
学校の映像をそのシーンの頭に付け加えることで、
あたかもそこを学校かのように見せるぜ、という技です。

カメラさんはグランドを歩き回ります。
「いい場所はないか?」
ゴムも考えます。
「脚本を変更して打破できないか?」
「しかし、どこまで妥協できるか‥‥」
「このシーンで伝えるべきことは何だったのか?」
そうしてみんなが悩んだ結果は‥‥、本編でお楽しみに!
(だってこれ以上書くとネタばれになっちゃう‥‥)

美術室
とある美術専門学校をお借りできました。
窓からグランドが見えると最高なんですが、
まあ、校庭でなく空が映ってもなんとかごまかせます。
ではさっそくみんなで窓の外を覗いてみましょう。
「!?」
「な、なんじゃこれは‥‥」
「い、家‥‥?」
そう、
窓の1m向こうに民家がデンと構えてるじゃないですか。
下がってよく見ると
壁一面の窓にはその屋根の影が大きな三角形を描いて‥‥。
けれどこれも照明さんやカメラさんのスーパーテクで
どうにかなるとのことでした。ホッ‥‥。

家屋
これはもう無問題。
ハウススタジオと呼ばれる専門のスタジオがありまして、
人が住んでそうなアパートや家が、撮影用に改造され
ているというシロモノ。ふう、これで安心ですね。

と脚本を見直し、もう一度スタジオを見て気が付きました。
脚本には階段を歩くシーンがあって、結構重要なんですが、
「階段がない‥‥」
そう、このスタジオには「階段」がないんです!
今から作るわけにもいかないし廊下で代用するのも難しい。
岡本「階段がないんですけど、どうしましょうか」
高野P「なんとかなるよ」
岡本「あ、そうですか。で、どうやるんですか」
高野P「うん、ねえ」
カメラ「そう、大丈夫だいじょうぶ」
岡本「え、だからどうやって!?」
ADさん「こういうのはよくありますから」
岡本「いや、よくあるとかそういうことじゃなくて‥‥」
高野P「うん、じゃあロケハン終了。
    今日のロケ場を踏まえて脚本直してきて」
岡本「は、はあ‥‥」


ほぼ日ドラマは14日(水)から、
流しっぱOn Wave!
3/14までいつでも見放題だぜ!
詳しくは放送開始日に!



岡本さんへの直接メールはこちらへ:
okamoto@tacoashi.com

2001-02-13-TUE

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