糸井 |
今、初めて思いついたことなんだけど(笑)、
思いつきなんだけど、矢野顕子が、
誰に似てるかで言ったら、
明石家さんまだわ。
矢野顕子=明石家さんま論。 |
坂本 |
あ、そう?
それちょっとわかんない。
そうなの? |
糸井 |
明石家さんまって、
俺、勉強してるとは思わないんですよ。
自分のお笑いの番組とか
自分のギャグを見て大笑いしながら、
自己回転して‥‥。 |
坂本 |
って言いますよね。 |
糸井 |
で、アッコちゃんも
自分の練習の音を
一番聞いてるんじゃないですか? |
坂本 |
うーん。 |
糸井 |
たぶん、一番聴いてる音楽は
自分の音楽だと思うんですよ。
練習してる分量が多いから。 |
坂本 |
うんうん。 |
── |
音楽の話も全然しないんですか? |
糸井 |
て言うか、あの人と何の音楽の話
していいかわかんないもん。
すごいなーとか言うだけで。
坂本くんだと、日本語としては
こういうんじゃないかっていうのをね、
ちょっと親切に言ってくれるわけよ(笑)。
おまえにはわかんないとか言わないわけよ。
アッコちゃんは、
「いや、そんなこと言えないから!」
でおしまいにしちゃうと思うよ(笑)。 |
坂本 |
(笑)努力しない(笑)。 |
糸井 |
しない(笑)。 |
坂本 |
だけどね、好みはもちろんすごくあるんですよ。
好きな音、嫌いな音。
嫌いな音は本当にもう、
この世から消し去りたいくらいの(笑)。 |
糸井 |
うん(笑)。 |
坂本 |
だけど、彼女の場合は
ピアノと歌だけで成立しちゃうんで、
そういう他の音色は
なくても別にいんですよね。
僕の場合は、
歌とピアノっていうんじゃないから、
音色も含めて自分の音楽だから、
より重要なんだと思う。
色とか音色みたいなものがさ。
彼女は原石ぱーんと持ってきて、
いいでしょう? っていう感じ。
そういう存在のしかただよね。
だから、別に音色にこだわんなくても、
自分の声がね、ほとんど9割。
楽器だからね。 |
糸井 |
それはやっぱり、音楽やってる人にとっては、
何これ? って思うようなもんなんだ? |
坂本 |
うん。ま、僕は、あの、勉強したでしょ。
それこそ系統立てて勉強して、
それを勉強せずに勘だけでやってるのがさ、
すごいなと思いますよね。 |
糸井 |
坂本くんは、
一方で勉強でしょって言うけども、
そこを逸脱する楽しみっていうのを
ずーっと見つけてこようとしてて、
お、できた、とかっていうことでしょ? |
坂本 |
僕の場合はそうです。 |
糸井 |
ですよね。だから、
そこでは同じ世界に瞬間瞬間いたわけだよね。 |
坂本 |
うん。一応共有できることはあるんですよ。
つまり、勉強だけの人は
矢野顕子のすごさってわかんないと思うのね。 |
糸井 |
うんうん。 |
坂本 |
だから、勉強しないで
そういうことやってる人のすごさっていうのは、
やっぱり逸脱しないと、
そういうの見えてこないとこがあって、
例えばね、レゲエを好きになるのに
2年くらいかかってるんですよね、僕ね。 |
糸井 |
あ、そう(笑)?? |
坂本 |
最初はもう、嫌いでしょうがなかった。
こんなアホな音楽あるか? と。
冗談じゃないって感じで(笑)。
最初に聴いたときに。 |
糸井 |
うん、うん(笑)。 |
坂本 |
こんなものをね、ありがたく取り上げてる
音楽雑誌とかさ、
もうたまんないと思ってたんですよ。
もう許せなかったのね。
でも、なんとか好きになろうと
努力したんだよね(笑)。 |
糸井 |
うん、うん。 |
坂本 |
何かあると思って。
で、2年くらい毎日のように聴き続けて、
やっと2年目くらいにして、
表面的にはさ、
ドミソとレファラしか使ってない
音楽なんだけど、
その奥にちょっと立体的なね、
幾何学的なおもしろい世界が‥‥ |
糸井 |
絵が見えたんだ! |
坂本 |
見えてきた。ああ、そうなのか、
こっちでやってんだなって。 |
糸井 |
2年かかって(笑)。 |
坂本 |
だって、系統から見たらさ、
ドミソとレファラだけ
延々10分くらいやってる音楽だよ!
でもね、よく聴いたら、
そのむこうに立体的な色んな図柄があって、
そっちを楽しんでるってことがわかったわけ。
ある日。 |
糸井 |
でもさ、そんなのさ、坂本龍一だったら、
2年かかんなくたってさ‥‥。 |
坂本 |
うん。否定しちゃってもいいんだけど、
でも、わかった方がおもしろかったよ。 |
糸井 |
ていうか、わかるのに
時間かかりすぎてねぇか? |
坂本 |
うん。それだけやっぱり、抵抗が。 |
糸井 |
それだけ嫌だったのかね。
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