── |
糸井さんと矢野さんは素の関係ですか。 |
糸井 |
やや。アッコちゃんは、
外に出てくるジャージじゃない人ですから。
アッコちゃんは、
女の子の塗り絵の中に出てくる
女の子みたいな人ですから、
お出かけって時には、
バックをこうーいう風に置いて、みたいな。 |
── |
糸井さんは、その相手役を演じるんですか? |
糸井 |
いや、別に。僕はいつも
同じ役しかできないんです(笑)。
なんかやろうとすると失敗しますから、
はいっつって聞いてるわけですよ。
アッコちゃんは、いい意味で
気取り屋さんの時間があるから、
ぐずぐずになんないんですよね。
テレビに出て、女の人同士で
座談会してるみたいな番組を見てる時の
アッコちゃん、そのアッコちゃんを見てると、
ほんっとに気取ってるよね(笑)。 |
坂本 |
ああ。「徹子の部屋」みたいなこと? |
糸井 |
そうそうそう。
ちゃんとした白いシャツを着て、 |
坂本 |
お出かけ、って感じだよね。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
── |
糸井さんが
個人的世界で知っている矢野さんと、
教授が個人的世界で知っている矢野さんと
かなり違いますかね。 |
糸井 |
違うでしょ! |
── |
かなり違います? |
坂本 |
どういうことだか、知らないもん。 |
糸井 |
僕はほとんど知らないですよ(笑)。
この人は、全部知ってるでしょ(笑)。 |
坂本 |
ま、よくさ、誰でもそうかもしれないけど、
日本人だと電話に出ると
声のトーンがぽーんて上がるじゃない?
(高い声で)「あ、こんにちは」
ってなるじゃない。 |
糸井 |
うん。 |
坂本 |
ま、女性の方がそうなりやすいけど。
けっこう矢野さんは極端だよ。
でもさ、そんなこと
暴露してどうすんの(笑)? |
糸井 |
いや、全部がそうでしょう。基本的には。 |
坂本 |
みんなそうでしょ? |
糸井 |
女の人は特に。 |
坂本 |
でも矢野さんは、
けっこうそういうとこあります。
だから、お出かけっていうのは
いい表現だなって思う。 |
糸井 |
坂本くん、じゃない、
さっき言ったさんまさんが語る
大竹しのぶさんもそうですよね。 |
坂本 |
‥‥ちょっとやめようよ、
そういう(笑)。
不気味な感じになってきたよ。 |
── |
矢野さんの歌って
お出かけって感じがしますよね。 |
坂本 |
いや、歌は‥‥、 |
糸井 |
両方あるんですよ。
ミシンの表糸・裏糸みたいに
うまくできてんですよ。
人間て、ぐずぐずになればね、
カジュアルになって
ジャージになっちゃうように
できてるんだと思うんですよ。
だけど、なっちゃうの知ってるから、
ちゃんとお出かけポーズ持ってる
みたいなところでは、アッコちゃんは、
やっぱり、すばらしい表現者ですよね。 |
坂本 |
言葉‥‥、詞の表現もさ、
ま、散文もそうかもしれないけどさ、
その、何て言うの、暴露すればいいっていう、
それ、ジャージなんだけど、
そういう文章とか詞ってのは、
やっぱ、やですよ。 |
糸井 |
つまんない。 |
坂本 |
不潔ですよね。
で、やっぱり、それはそれとしてさ、
その、日常がなくなっても
ちゃんと存在してるようなさ、
言葉として存在価値のあるような言葉って、
やっぱり気持ちいいわけですよ。
そういう感じだよね。矢野さんの言葉は。
そういうとこ目指してると思うし、
考えてないけど、
直感的にそういうものを目指してる。 |
糸井 |
それはきれいか、
それはきれいじゃないか
みたいなことはやっぱり、
ものすごい厳密ですよね、きっとね。 |
坂本 |
そうそう。それに、思い出したけど、
好き嫌いがすごくはっきりしてるの。
厳密に、これが好きこれが嫌いって。
で、別に理由はないの。
理由までは考えないんだけど、
ものすごく厳密。 |
── |
もうそれは決まってるんですね。 |
坂本 |
僕たちってたぶん似てて、
好き嫌いに関して、
自分の好き嫌いもちろんあるけども、
少し疑ってるところがあるのね。
自分の好き嫌いだから、
もしかしたら明日好きになってるかもしれない。
で、理由を考えていくとさ、
果たして本当に好きって
言えるんだろうかっていう
ところに入ってっちゃう(笑)。 |
糸井 |
坂本くんもそうだよね。 |
坂本 |
僕は完全にそうですね。 |
糸井 |
さっきのレゲエとのつきあいもまったく(笑)。
自分を疑うっていうことと、
その、何か思うってことが一緒にあるから、 |
坂本 |
(パンと手を打つ)
矢野さんはね、自分を疑うことは絶対しない。 |
糸井 |
うんうんうん。 |
坂本 |
と思う。僕は。 |
── |
教授は疑います?
だからレゲエを聞くんですもんね。 |
坂本 |
疑います。僕は。
信じられる自分なんてのは、
あんまりないですから(笑)。 |
糸井 |
世の中で一番信じられないのは自分だ、
くらい思ってますよね。 |
坂本 |
と思ってますよ、そりゃ。
矢野さんはね、そういう問い自体がないと思う。
自分を疑うことなんて、したことないと思うし。 |
糸井 |
だから、どう言ったらいいですかね。
小林秀雄か誰かの文章にあったんだけど、
指導者というのは、自分を売り渡して
正義を買い求めた人間だっていう言い方がある。 |
── |
うん。 |
糸井 |
で、それは政治家であろうが、
バンドリーダーであろうが。 |
坂本 |
うん。 |
糸井 |
みんなそうだと思うんですよ。
社長であろうが。
で、ほんとはそっちになれない
タイプの人だと思うんですよ。
坂本くんとか、たぶん、俺もそうなんですよ。
で、女の人はみんななれるんだと思うんですよ。
売り渡さないままですから。
その、指導者になる時は、
はっきり売り渡しますよね。
や、うらやましいですよ、それは(笑)。
‥‥ほめてんのかね(笑)?
ほめてんだろうね。 |
坂本 |
それは、一つの能力じゃないかな。 |
糸井 |
うん。
|