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糸井 |
小泉さんは、勉強する子でした?
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小泉 |
ううん、ぜんぜん。
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糸井 |
ぜんぜんしなかったんだ。
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小泉 |
うん。自分が好きなことだと
ちょっとはうまくできるんだけど、
算数とか、無理。
九九は覚える気すらなかった(笑)。
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糸井 |
無理(笑)。
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小泉 |
うちは親も怒らなかったから、
いいや、と思って。
国語は、漢字の書き取りとか
大きらいだったけど、作文とかは‥‥。
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糸井 |
好きだった。
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小泉 |
はい。作文とか、詩を書くこととかは好きで。
あと、読解問題っていうんでしたっけ、
「お母さんのこの言葉は、
何に対して言ったものでしょう」みたいな、
そういうことは、すぐ理解できたんだけど、
でも、覚えなきゃいけないことって、
ほんとうに、きらいみたいです。
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糸井 |
大人になったら、台詞を覚えなきゃいけないとか、
覚えることが山ほどあるでしょう。
それは平気でやってるわけだよね。
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小泉 |
そうですね(笑)。
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糸井 |
うん、そうなんだよなぁ。
結局、子どものときからずっと、
勉強しないとできないぞ、
大人になってから困るぞ、
って言われてきたけど、
じつはできるんだよね。
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小泉 |
できる。
算数でも、
友だちとごはんを食べに行くようになって
割り勘とかしはじめると(笑)、
できるものなんで。
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糸井 |
なにもロケット飛ばすわけじゃないからね(笑)。
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小泉 |
そう。生きていくには十分だから。
むずかしい算数は必要な人には必要だけど、
わたしみたいに生きていくには
ぜんぜん必要なかった、ってことかなぁ。
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糸井 |
でも、勉強がきらいだった子どもでも、
大人になってから、
自分が知りたくて勉強することって
ぜんぜん嫌じゃないんだよね。
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小泉 |
そうですね。
わたしは社会科もきらいだったから、
歴史もよく知らないんだけど、
お芝居でやる役によっては、
時代背景とか、おのずと興味がわいてきて、
そこだけ詳しくなってる(笑)。
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糸井 |
自分で知りたくてやってると、
たのしいし、身になってる。
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小泉 |
うん。わたしは、全部あとからの勉強です。
あとから実践で身につけてきた。
だって、通信簿って、5段階評価で、
5とかとったことないから(笑)。
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糸井 |
おー、いいねぇ。
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小泉 |
4も、ほとんどないぐらい。
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糸井 |
いいっすねぇ(笑)。
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小泉 |
体育なんて、ずっと1だったし。
ぜんぜんやる気がなくて。
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糸井 |
あぁ、そう。
でもそのわりには、
運動っぽいこと、してなかったっけ?
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小泉 |
運動神経は悪くないみたいなんです。
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糸井 |
なのに1だったの?
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小泉 |
人前で本気の顔を見せるのが
嫌だったんです。
本気で走っているとき
顔とかね。
だから、いっつもヘラヘラしてて。
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糸井 |
そうかぁ。
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小泉 |
球技もね、人とボールを
取り合ったりするのが嫌だったんです。
すごい醒めちゃってて、
「どうぞどうぞ」みたいな感じだったから、
体育はずっと1だったんです。
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糸井 |
競争そのものが嫌だったんだね。
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小泉 |
そんな感情にふれるのが
めんどくさくて。
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糸井 |
それはもう、一生そうなんだろうね。
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小泉 |
たぶん(笑)。
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糸井 |
文章を書くことというのは、やっぱり、
好きだからつづけられているわけですか。
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小泉 |
文章を書くのも、もし人に言われなかったら、
めんどくさいという気持ちはあるんですけど、
でも、やりだすとたのしいし、
こうやって言葉でしゃべるよりも
文章を書くほうが
ちゃんと言いたいことが言える
自由さみたいなものを感じるときはあります。
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糸井 |
小泉さんの文章を読んでいて、
それは、すごい感じます。
黙ってる子の怖さを感じる(笑)。
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小泉 |
ええ(笑)?
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糸井 |
小泉さん、基本的には
たくさんのことをしゃべってないですよね。
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小泉 |
ああ‥‥すごい無口だとか、
おとなしい印象はないと思うんですけど、
あんまり口では‥‥
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糸井 |
しゃべってない。
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小泉 |
口が重いほうかもしれないです。
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糸井 |
そう、無口というのじゃないんだよね。
だけど、根本的にはしゃべってないんだと思う。
この場では、ね。
だけど文を読むと、
あのしゃべってないあいだに、
こういうことを考えていたのか(笑)、という、
女の怖さを感じます。
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小泉 |
はははは。
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糸井 |
男って、そのときのを都合で、
思ってもいないことしゃべったりするんですよ。
でも、それはまったくつまらないことです。
自分のなかに溜めていたことが
熟成してから、スッと出てきたものが、
やっぱり、一番おもしろいんです。
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小泉 |
『原宿百景』という本に書いた
エッセイはとくに、
小さいときのことが中心になっているので、
ものすごい溜まってたんだなと
自分でも思います。
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糸井 |
黙ってたんだね。
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小泉 |
(笑)
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糸井 |
そうやって溜めていたことって、
たぶんこれまでも、
小泉さんがお芝居するときなんかに、
応用されていたと思うんですよ。
この役のこの子はこういうときこうなんだ、
というのを、
監督さん以上にわかってるときが
きっといろいろあったと思います。
その表現が、『原宿百景』では
文章のほうに向かったんだ、
ということなんでしょうね。
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小泉 |
うちの親もわたしの本を読んでそう思ってるかも。
「そういうこと、そんなふうに見てたのか」って。
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糸井 |
あの子はいつも
にこにこして心配ないと思ってたけど、
あのとき、ほんとは傷ついてたんだ、とかね。
思ってるかもしれないね。
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小泉 |
うん、そうかもしれない。
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糸井 |
ぼくは、おばあさんになった小泉さんというのも、
たのしみだなぁ、って思います。
いいおばあさんになってください。
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小泉 |
はい。それが目標です。
がんばります。
ありがとうございました。
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糸井 |
いいおばあさんにね。
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小泉 |
はい(笑)。
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糸井 |
今日はありがとうございました。
(おわります) |
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