キョンキョンと原宿を歩く。

小泉 糸井さんたちにとっての
「レオン」みたいな場所って、
いまもあるのかな。
少なくともわたしたちの世代までは、
けっこう、そんなふうに集まる場所があって、
いろんなジャンルを目指してる子が
いっしょになって遊んでて、
そのなかから、それぞれの道が決まっていったり、
見つけたり、っていうのがあったんだけど‥‥。
糸井 そうだね。
小泉 わたしたちの場合だと、
そういう先輩、たとえば、
小暮徹さんみたいな人が
そういう場所をつくってくれていたから、
そうなっていたのかもなぁと思う。
糸井 こぐれひでこさんと小暮徹さん、
あのふたりの存在は大きいね。
小泉 スチャダラパーの
BOSEくんとも話してたんだけど、
思えば、あの頃の徹さんたち、
いまのわたしたちの年頃だったんだよね、って。
自分たちはそういう大人になってないことが、
ふがいないよね、って(笑)。
みんな個人的には集めてるんだろうけど、
ちょっと、そこまでの度量がない。
糸井 ぼく自身も、そういうつき合いはなくなっていて、
家でひとりで落ち着いている時間が
ものすごく増えているんだけど、
なんだろう‥‥あの頃って、
家族という概念がなかったような気がする。
みんなが独り者で、
夜中までいっしょにいてもいい、って。
いまは、みんなちゃんと家に帰るよね。
小泉 うんうん。
糸井 ぼくは昔、ゲームの会社もやってたんだけど、
あの頃は、スタッフ全員が
独身だったんじゃないかな。
こいつら結婚したらこの会社潰れるな、
と思ったもの。
いまは自分の会社の社員がみんな結婚して
家庭をもってくれればいいと思ってる。
それは、ものすごい大きな変化で‥‥。
小泉 そうかぁ。
糸井 家庭をかえりみずに、みたいなことを、
自分でもあたり前に思ってたからね。
世の中に家ができたんだ。
小泉 そうかもしれないですね。
糸井 都会の家というものができた。
たとえ結婚してなくても、
彼女や彼との暮らしは
大事にしてるでしょ、みんな。
ぼくらの時代には、そういうのなかったもの。
小泉 わたし、いまだにもてない(笑)。
糸井 小泉さんは、「ホーム」っていらない人なの?
小泉 うーん、たぶん。
だから、それこそ
東京に住む意味も感じられなくなって、
いまは東京を離れて暮らしてみてるところ。
糸井 ああ、そうなのか。
小泉 東京を離れたら、
どんな気持ちになるんだろうって。
まだお試し期間なんですけど。
糸井 うちの奥さんが、昔そうやって
鎌倉に住んでたよ。
小泉 うんうん。
糸井 海鳴りの音がさみしくて、すぐ戻ったって。
小泉 あ、ほんとー。
糸井 江ノ電に乗って行くような場所でね。
ひとりじゃさみしくてしょうがなくなって。
小泉 わたしはちょうど1年経ったところなんです。
糸井 ああ、1年いられたなら大丈夫だね。
海鳴りが聞こえるか
どうかはわからないけど(笑)、
さみしくならない?
小泉 うーん、ぜんぜん。
風が強い日なんかは、
すきま風の音もするけど、
あんまり気にならないし。
糸井 小泉さんは全体的に、
弱そうにみえて、強いですよね。
小泉 そうですか。
糸井 かっこいいんですよ。
あのさ、こういう人が、
学校の先生になればいいと思う。
小泉 学校の先生?
ええーっ。
糸井 授業とかしないで、
一日中ただいっしょにいるだけで、
なんとなく子どもが育っていくみたいなね。
小泉 うーん、それはどうでしょう(笑)。
糸井 いいと思うよ。
子どもたちだって、
短い間しか覚えていられないような知識を
詰め込まれたところで、
あまり意味がないからね。
それよりも、いっしょに過ごすなかで、
なにか大事なものをひとつでもふたつでも
見つけられたら、
それはその子の財産になるから。
小泉 たしかに、学校を出たあと、
大人になってから思い出すことって、
保健室の先生のことだったりするから‥‥
保健の先生とすごして、
こんな大人になりたいなぁ、って。
なにかを感じてたんですよね。
糸井 そういうのがあるかないかって、
大きいでしょう。
ぼくは学校のなかに家があって、
そこに人が住んでいたらいいと思うんだよね。
小泉 あー、うんうん。
糸井 生徒がさ、なにか悩みがあったり、
やりたくないことがあるときなんかに、
そのうちに遊びに行くわけ。
そうすると、そこのおやじが、
そりゃまぁ、じゃあ、
ここに隠れていればいいじゃないか、と(笑)。
そういう場所があるといいよなぁ、って、
前から思ってたんだけど、
いままた、ちょっとやりたくなってきてるんです。
小泉 それ、いいかもしれない。
昔は学校には宿直室があって、
用務員さん、いましたよね。
糸井 そうそう、うちの子どもは、
用務員さんを「よしださん」とか、
名前で呼んでた。
たのしそうに
「今日はよしださんとこに行ってー」とか。
小泉 うん、わかる。
あと、幼稚園のバスの運転手さん、
いまでも、すっごくよく憶えてる。
うちのバスの運転手さんは、
おざわさんといって、
おざわ先生って呼んでたんだけど、
みんな、おざわ先生のことが大好きで。
すごいいい人だった。
糸井 幼稚園の子だって、
そういう大人を見倣ってるんだよね。
小泉 うん。やっぱりそういう人のこと、
よく憶えてる気がする。
糸井 学校でね、生き物を飼ったりするでしょう。
でも、算数とか社会、国語とか、
学科を教えるのが得意な人が、全員、
生き物をじょうずに飼えるかといったら、
それはまた別のことだからね。
それはそれで、得意な人がいてくれたらいいよね。
小泉 学校のなかに、いろんな大人が
うろうろしているといいのかもしれないね。
糸井 そう思う。
だからほんとは、街と学校って、
そんなにきっちり分けなくてもいいんだよ。
ご近所という関係性が、いまは地域にないからね。
小泉 たしかに。それはとっても興味深い。
(つづきます)


2011-03-09-WED