いいものリレー

8人めのゲスト
solxsolさん
プロローグ温室で多肉植物に囲まれて
過ごす沼な日々。

なかよし姉妹のパン屋さんcimaiからの
バトンを受け取ってくださったのは、
多肉植物のお店を営む、
solxsol(ソルバイソル)のおふたりです。
松山さんと久保さんのご夫婦が、
植物であふれる温室と、
すてきなご自宅で
愛用のモノたちを紹介してくださいます。

ゲストキュレーターsolxsol(ソルバイソル)
松山美紗さん、久保浩司さんご夫妻で運営する、
多肉植物専門ストア。
多肉植物を専門にして、
温室で大切に育て、販売までを行っている。
ウェブの通販をメインに、イベントへの出店も。
2022年末からは、桶川にHOMESTOREを
不定期でオープン。

温室が建てられる場所を求めて。

――
横にある大きな温室に行きたいところですが、
その前にご自宅へ。
このお家は6年前に建てられたとか。
松山
そうですね。
久保
7年目に突入したところですね。
――
ここの前も埼玉県内だったんですか。
松山
はい。
大宮の近くで、築50年くらいの家に。そこは賃貸でした。
古くて、塗り壁で、同じ形の建物が連なる、
テラスハウスもどきみたいな。
ワンフロアの12畳で、
ただ広くて、なんか白くて四角くて。
そこには私がひとりで暮らしていました。
――
そのときはまだおひとりで。
松山
そうなんです。
結婚して、そこで一緒に住むようになって。
子どもが産まれて、こっちに移りました。
久保
植物のことを考えて探したんですけど、
広い土地で日当たりがよくてっていうのは、
やっぱりなかなか、見つからなくて。
――
その頃、すでに植物のお仕事をされていたんですね。
植物があるとなると、いい環境じゃないと。
久保
あっちこっち、何ヶ所行っただろうって
わかんないぐらい探したよね。
松山
私たちが購入できて、
温室が建てられる広い土地っていうと
ずっと限られちゃうから。
――
いろんな条件をクリアしないとならないですよね。
久保
やっぱりね、広い土地となると高いんですよね。
松山
それで、だんだん北に、移動していく。
――
あ、なるほど、北というと、
都心から離れていく。
松山
そう、だんだん北に(笑)。
彼が都内に勤めてたので、都内にも通えて
さらに温室を建てられる100坪以上の土地‥‥
っていうふうに探して。
もう限界、というところまで北上しました。
松山
で、ここにご縁がありました。
――
お隣の空き地の借景も、すばらしいですね。
松山
そうなんです。これがいいんですよー。
持ち主さんが、ときどき整えてらっしゃいます。

育てやすい、かわいい、多肉植物。

――
もうその頃、solxsolは始まってたんですね。
今は、何年くらいですか?
松山
実は、もう20年ぐらいやってるんですよ。
――
そんなにでしたか。
松山
ずっとやってて、
気がついたら年もとって(笑)。
――
どういうきっかけで、このお仕事を始められたんですか?
松山
もともと植物が好きで、花屋になりたくて。
はじめは切り花の勉強してたんです。
でも、植物を育て始めたらことごとく枯れて。
その頃はあちこちお出かけもしていたので、
気がつくと枯れてるみたいなことが多くて。
水やりが間に合わないんです。
だけど多肉は、あんまり水をあげてなくても、
すっごくきれいに育ったんですよ。
それで、おもしろさに気づきました。
――
話の流れが、意外な展開でした(笑)。
ライフスタイルの中で、
生き残ったのが、多肉だったと。
松山
そう(笑)。
家の近所に、コンクリートの壁いっぱいに、
植物がワイヤーとかで吊るしてある家があって。
今思えば、多肉が趣味のおばあちゃんだったんですね。
1個200円とか100円とか書いてあって、
売ってたんですよ。
その人が自分で増やした多肉だったんでしょうね。
――
おすそ分けを、売ってらしたんですね。
松山
そう、小っちゃい鉢に入れて。
それがおもしろくって、そこに通うようになって。
同じ頃、代官山に行ったときに、
小っちゃい多肉屋さんがあったんです。
小さな鉢とかに、いーーっぱい植物が。
『風の谷のナウシカ』に出て来そうな
小部屋みたいなお店。
そこで、出会っちゃって。
――
またしても、多肉に。
松山
「ここで働かせてください」って言って、
そこで多肉のことは修行しました。
そのあとフリーになって、
それからずっと多肉の仕事をしてますね。
――
多肉に、引き寄せられたんですね。
松山
もう、どっぷりハマって。
これも見たことない、あれも見たことないって、
集めだすと、大変。
――
たまらないですね。
松山
たまんないんです。
お師匠さんが、なんでも好きなものを
自分で組み合わせて楽しむスタイルだったんですね。
私からすると親世代の男性なんですけど。
私は身近な、
ゼリーカップだとか、かわいいものに植え込んだりして。
それで今は、アンティークに夢中なので、
アンティークのものと組み合わせたりして、
やってます。
そんなこんなで、20年。
――
長いです。
松山
いちばんはじめは実家の出窓でやってたんです。
出窓に棚を置いて、育ててた。
そこで足りなくなってきて、
庭に小っちゃいトンネルのハウスを建てさせてもらって。
そしたらまた、そこじゃ手狭になって、
近所のトマト農家さんの、
使ってない温室をお借りして。
いつまでも使わせてもらえないかもしれないから、
小さくても自分の温室が欲しいな、
って思っていて。
そこで結婚して、家も建てるかっていう感じで
今に至るという感じです。
なんかもう、老後みたいになっちゃってますね(笑)。
――
夫婦2人で、温室で過ごす日々ですね。
松山
最終的には、
老後一緒に、多肉屋やろうか
っていう話があったんですけど。
久保
そう。定年してからと思ってました。
でも、いろいろと考えてたことも変わって。
――
コロナの影響もありましたか。
松山
そうですね。コロナ禍で在宅ワークになって、
彼が家にいることも多くなって。
あと、地震があったりすると、
都内から歩いて帰って来るのにギリギリな距離だし。
子どももまだ小さいので、
なんかあったときに怖いなあと思って。
もういっそのこと、って。
久保
新卒で入って、20年ぐらい勤めた会社を辞めて。
もちろん、植物は関係ない仕事をしてたんですけど。
――
一緒にやられるようになってから
いろいろ覚えたんですか?
久保
そうですね。
ま、その前からも、週末に出店する
イベントの手伝いをしたりはしていました。
鉢物で土が入ってるとけっこう重たいし、
搬出搬入を手伝ったりとかね。
植物のことは絶賛、修行中です。

ハマると沼の、多肉の世界。

――
では、温室を見せていただきます。
わあーーーーーーー!
植物がワーッとあるんですね。
松山
わしゃー、っと。
地面にあるって感じですね。
――
なんという空間でしょうか。テンションあがります!
ほんとにいろんな種類があるんですね。
久保
そうなんですよ。
松山
ヤバいんですよ。沼なんで。
――
沼。
ハマったらヤバい。
松山
見たことないのがあると、
欲しくなっちゃうんです。
もう、病気ですね。
――
今これで、何種類ぐらいあるんですか?
数えられるもの‥‥?
松山
200ぐらいかなあ。
――
200。あー。すごい、これは。
増やすのが難しいのもあれば
簡単なのもあるんですか。
松山
種から育てたりとか。
あと葉っぱからね、子どもが出たりするんですよ。
葉挿しっていうやり方で増やせるんです。
――
あ、えー、すごい。
ひとつひとつ、めちゃくちゃかわいいですね。
松山
ねー。
葉っぱ1枚からこうやって子どもが出て。
それが大きくなると、養分を取られて
大人の葉っぱは枯れるんですよ。
それで子どもがまた大きくなるっていう。
やればやるだけ、
手間をかければかけるほど、こうやって。
――
わあー。
なんだか美味しそうなのもありますよ。
松山
「ミドリガメのたまご」っていうんですよ、これ。
1個1個がちょっと卵っぽいでしょ。
葉っぱの周りの膜の枯れた感じとか
ディテールがおもしろい。
――
へえー。見るだけでもたのしいですが、
解説が聞けると、さらにおもしろいです。
新種とかも出てくるんですか。
松山
新種も出てきますし、交配種も。
いいものといいものを掛け合わせて
ちょっと個性的なもの作ったり。
だからもう、沼なんです。
――
ああー、そうですよねー。
ここを見てると、わかります。
あ、オレンジの花が咲いてるのがある。
かわいいなあ。
久保
かたちが変わってて、渋いのとかも。
これはこれで、好きな方がいて。
――
超不思議なフォルムですよねえ。
久保
そうなんですよね。
葉のかたちもそうだし、
数珠みたいなのもありますしね。
松山
ね、だからハマるとヤバいんです。
――
はい。もうわれわれ、ヤバいです。
松山
葉の、透明っぽくなってるところがあって、
この部分を窓っていうんですけど、
窓の模様もみんな違っていて。
それが個性なんですよね。
――
なるほどー。
こんな細かいところにも個性が。
松山
虫眼鏡で見るとこれがまた、
ヤバいんですよ。
また別の世界がね、広がっちゃうんです。
――
もう、ずーっと見てられますね。
久保
ミクロはミクロで全然ちがう世界ですね。
よく見ると、こんな斑点があるんだとか。
――
すごい。楽しい。
ぜんぶの種類について、聞いていきたいぐらいです。
多肉の魅力が少しわかった気がします。
松山
まあ、いろいろな園芸がありますからね。
楽しみ方のひとつとして、多肉もね。
――
なんだか自由ですよね。
植物そのものも、楽しみかたも。
松山
そうなんですよ。
自分の好きなようにやっていいんです。
こうしなきゃいけないっていうのは、
ないんですよね。
――
ちょっと不思議でおしゃれな植物ですよね。
ありがとうございました。
ずっとこの温室で多肉のお話しを
うかがいたい気持ちをおさえて。
おすすめのアイテムのご紹介をお願いしましょう。

(つづきます)