いいものリレー

9人めのゲスト
西山寛紀さん、黒田愛里さん
プロローグアートと色彩に囲まれた
あかるい空間。

次にバトンを受け取ってくださったのは、
ともにイラストレーターの
西山寛紀さん、黒田愛里さんご夫婦。
おふたりの作品から受ける、
鮮やかな色彩とやわらかな印象が
そのまま表現されたような
素敵なご自宅と、お仕事場で、
「いいもの」を紹介していただきました。

ゲストキュレーター西山 寛紀(にしやま ひろき)
イラストレーター
1985年生まれ。多摩美術大学大学院を卒業。
対象を色面構成で絵画的にとらえる表現を得意とし、
書籍や雑誌、広告、
ウェブなどでイラストレーションを手掛ける。
クライアントワークと並行して
オリジナル作品も制作し、
国内外で展覧会を開催している。

黒田 愛里(くろだ あいり)
イラストレーター
1989年東京生まれ。東京工芸大学を卒業。
同大卒業後、イラストレーターとして活動を開始。
雑誌や広告を中心に、
国内外のアパレルメーカーとの
コラボレーションなどを幅広く手がけている。

好きなものが一緒なふたりがつくった部屋。

――
きれいな色が印象的なご自宅ですね。
ここは、いつ頃から住んでらっしゃるんですか。
西山
去年の8月に引っ越してきました。
6月までは、そんな予定なかったんですけど、
妻がここの物件を見つけて。急遽。
黒田
見つけて(笑)。
――
見つけちゃったんですね。
西山
でもまさか引っ越さないよね、
と思いながら内見に行ったんです。
そしたら、僕もめちゃくちゃ気に入って。
それから1か月半で引っ越しました。
黒田
そうそう。ちょっと大変だったね。
――
こちらが、おふたりの住居スペースと、
西山さんのアトリエ。
黒田さんのアトリエは別の場所なんですね。
黒田
そうですね。私の仕事場はずっと別です。
――
おふたりとも、それぞれ活動されているんですね。
ふたりで一緒のプロジェクトなどはありますか?
西山
それが、まったくないんです。
でも偶然、競合することがあるんですよ。
同じクライアントさんからの仕事で。
黒田
それぞれに同じ依頼、提案が来て、
「あ、競合だね」みたいなことがあったり。
西山
スケジュール的に僕が受けられなくて、
妻を紹介して、受けてもらった事もあります。
フリーマガジンで僕が受けた次の号の依頼が
愛里さんに来て、とかも。
――
それは、お二人のご関係を知っていて?
黒田
それが偶然なんですよ。
打ち合わせのときに、一応、私は
「西山がパートナーなんです」と話したら、
「全然知らなかった」って(笑)。
――
すごい偶然ですね。
おふたりは学生時代から
お知り合いだったんですか?
西山
いえ、社会人になってからです。
TIS(東京イラストレーターズ・ソサイエティ)という、
イラストレーターの団体があるのですが、
それに彼女は先に入っていて、
僕はTISの公募に入選したのをきっかけに、
そこに入会することになったんです。
その中の委員会で一緒になって、
友人になり、という感じでしたね。
付き合う前から、一緒に友達の展示に行ったりとか、
好きなものが似ていたと思います。
黒田
インテリアとか、好きなものの趣味が一緒で。
西山
そうですね、
だからインテリアショップによく行ったりとか。
黒田
あと、展示などの見たいものも、結構似てたりして。
しょっちゅう、いろんなとこに出かけていましたね。

この絵を飾ろう。そこから始まったインテリア。

――
入った瞬間に思ったのですが、
色鮮やかなインテリアが多いですよね。
西山
そうですね。
インテリアも、無彩色よりも、
自分がワクワクするような色を選ぶことが多いです。
黒田
最初、このZUCK(ズック)さんの絵を、
引っ越す前に決めてたんだよね?
――
どういうことですか?
西山
引っ越すときに、この絵を買おうと決めて。
黒田
「この絵にある色を、インテリアに入れていこうか」
という話をしてたんです。
西山
そしたら偶然、もう持ってるチェストの色が、
「あれ?あのピンクだ」って。
黒田
フフフ。
「オレンジは、シェードの色にしようか」って。
西山
黒は、ジェルデのペンダントライトですね。
これは古道具屋、リサイクルショップで買いました。
――
ジェルデは、このあと、
デスクランプを紹介する予定です。
ソファのブルーの色も絵の中にありますね。
西山
そう、「ブルーはソファだね」となりました。
――
1枚の絵からインテリアを選ぶって素敵です。
アーティストのおふたりならでは、ですね。
インテリアは面積とか体積の大きいものから、
などとつい考えがちです。
西山
そうですね。
――
そして、自分が描いた絵じゃなくて。
「お気に入りの」っていうのが、また。
西山
うちに飾っているものは、そうですね。
リビングには木内達朗さん、いとう瞳さん、秋山花さんの作品などを
飾っています。
愛里さんの同級生のデザイナーの
若杉智也さんのカレンダーや本浪隆弘さんの写真もあります。
――
わりと、クラシカルなものというよりも、
同じ時代の人たちからのインスピレーションが
多いでしょうか。
西山
そうですね。クラシカルなのも好きですが、
古びないものが好きですね、飽きがこないというか。
心地いい色とか、馴染みそうな題材のもの。
――
おふたりは、好きな色ってありますか?
西山
黄色か緑が好きです。
黄色は、なんだか明るい気持ちになる。
ちょっとオレンジよりの黄色が、ぼくは好きで。
キーになる色、ポイントになる色は黄色が多いです。
黒田
私も黄色は好きです。
ポイントによく使うのは赤かな。
洋服は、ピンクが好きだったりしますけど、
インテリアだと、青とかが好きですね。
――
これだけ色数があって、この統一感。
うまく調和していて、さすがです。
マネするのは、むずかしそうだなぁ。
おふたりのお仕事とセンスが生きてるんですね。

シミュレーションはフォトショップで。

――
ラグは、かたちもユニークですね。
黒田
ラグは、すごい探して。
西山
これは、バルセロナのTARTA GELATINAというブランドのものです。
ウェブサイト見つけて、「かわいい!」と思って
引っ越してすぐに注文しました。
2か月待ちぐらいでしたかね。
――
このかたち、動きが出て、いいですね。
黒田
ソファとテーブルと、動線も考えて、
置く場所とサイズを、ふたりで相談して。
西山
欲しい家具の候補が見つかったら
フォトショップで部屋の写真と製品の写真を合成してみて
シミュレーションするんですよ。
――
え!そんなことを!
西山
正面から撮った写真を、部屋のパースに合わせて変形させて、
「色味大丈夫かな」とか、
「やっぱり赤が強すぎるね」とか、
「すごく彩度が高い色がほんのちょっとしかないから、
あとは大丈夫じゃない?」とかを検証して。
黒田
よくやるよね、フォトショップ上で(笑)。
――
なるほど、そういうやりかたで。
意見が合わないことはないんですか?
西山
インテリアのことで相談しても、
ケンカすることはないですね。
――
すばらしい。
好きなものが合うって大事ですね。
黒田
西山さんが一人暮らししてたときの小物なども
私的には結構ツボなものが多くて、
そのへんは感覚が近いんだなぁと思っていました。
――
インテリアも揃って、部屋作りは
今のところ落ち着きましたか?
黒田
あとは、いい植物がほしいかなぁぐらいですね。
西山
おっきい植物をね。
今あるのは、僕が一人暮らしのときからのものと。
黒田
買い足したものと。
西山
あとは絵をちょこちょこ変えたり。
これは現在進行形で増えてる感じですね。

生活の変化。

――
おふたりの生活って、
どんなリズムなんでしょうか。
西山さんはこちらにお仕事の部屋があって、
黒田さんは毎日、アトリエに。
「行ってきます」って出かけるんですよね?
黒田
朝、出かけます。だいたい10時半くらい。
お昼ご飯はそれぞれ、ですね。
――
休憩や気分転換はどうされてます?
西山
ぼくは買い物行って、料理して、
というような、「家事」が息抜きになっていますね。
黒田
夜ご飯は、西山さんが担当みたいな感じなんです。
私はあんまり、リフレッシュしてないかもな。
たまに散歩をするくらいです。
西山
夕方6時くらいからご飯を作り始めて、
7時には帰ってきて、一緒に食べる。
黒田
もしまだ作業が残っていたら、
こっちでやることもあります。
なるべくアトリエで終わるようにしたいですけど。
――
あんまり持ち込まないようにしたいですか。
黒田
そうですね、私はこっちに帰ってくると、
夜はゆっくりするようにしています。
――
健康的というか、規則正しい生活ですね。
黒田
西山さんは一人暮らしのとき、
ずっと外食の生活だったみたいです。
西山
外食だったし、夜型だったんです。
制作も夜通しでやることが多くて。
――
じゃあ、ずいぶん変わりましたね。
西山
そうですね。「徹夜禁止」って言われて(笑)。
黒田
仕事の状況によって、生活リズムが
多少変わるのはしょうがないんですよね。
個展前とかは特に忙しくなりますし。
搬入搬出とか、梱包とかも手伝ったり、
お互いにカバーし合ったりしてます。
――
チームワークですね。
西山
あと、作品の相談もしますね。
「ちょっとどうかな」みたいに(笑)。
黒田
うんうん。
作品と仕事は、もうほぼ見せ合ってるというか、
それで客観的な意見もらえるのは、
すごくありがたいことだと思っています。
――
ふたり暮らし、いいことばっかりですね。
お部屋も心地よくて。
おふたりが選んだアイテムを
ご紹介するのが楽しみです。

(次回、黒田愛里さんのアトリエから「いいものリレー」がはじまります。)