つなげる仕事。
クリエイティブはつながらなくちゃ。

第1回 仕事は、「してもらう」もの。



『木のいのち木のこころ』という本を、ごぞんじですか?

宮大工の棟梁、弟子、孫弟子の3代の言葉を拾う、全3巻。

出版されて、すでに9年が経ちますが、

歳月を経ても、あまりにも言葉が生き生きとしています。



「すべてを木から教わり、

 木のことしか知らないと言ってもおかしゅうない」

そう言うのは、法隆寺宮大工の棟梁・西岡常一さん。

7年前に亡くなられたこの人は、

1300年建ち続ける法隆寺を前に、

木とはどういう癖があるか、いい建物とは何か、

古人が何を考えたか……木を通して対話をしつづけました。



どの木にもそれぞれ癖があり、右や左にねじれようとする。

右にねじれた木は、左にねじれたあの木とくみあわせたい。

何百年後の木の性質と相談しながら、

それぞれの癖を見抜いて使ってあげたい……。



たとえば、こんなような話題に満ちているのが、

『木のいのち木のこころ』という本なのです。



西岡さんが、を動かして木に触れつづけ、

また、大工としてチーム仕事をしつづけながら、

生命はどう輝くのか、人はどうあったらいいか、

そう深く考えたことが、ビシビシ伝わってくるのです。



そこで今回の、「つなげる仕事」の第2シーズンは、

この本を通して、「人と人が仕事でつながってゆくこと」や

「やりとげた仕事が未来につながってゆくこと」について、

考えていきたいと思います。5日連続でお届けします。



初回の今回は、

『木のいのち木のこころ・天』(西岡常一・新潮OH!文庫)

こちらから、人と仕事についての宮大工棟梁の言葉を

引用して、問題提起をして、明日につなぎたいと思います。








(※『木のいのち木のこころ・天』より)



若いとき「西岡は鬼や」とよくいわれました。

昔は自分一人で

できるような気になるもんですから怒るんですな。


何でこんなことができんのかと思いましてな。

誰もが自分と同じようにできると思うんですな。

また頼んだことを全部

完全、完璧にしてもらわな、許せんのですな。

ところが実際には、

そないわけにはなかなかいきません。
(中略)



仕事はしてもらうんですな。

建築という仕事は芸術家が

自分一人の責任で造るのとは違いますから、

気にいらんというて

壊したり投げ出したりはできませんのや。

そのうえ大勢の人がおらんとできませんからな。

やってもらわなならんのです。
(中略)



いいところばかりではなしに、欠点や弱点も生かして

その才能を発揮させてやらなならんのです。

いいとこだけを拾い出して、

いいとこに並べるというのとは違いますからな。

人を使うにはそれだけの心構えがいるってことですわ。








この西岡さんの考えは、

若いころおじいさんにくりかえし伝えられた

「百論をひとつにとめるの器量なき者は

 つつしみおそれて匠長の座を去れ」


という法隆寺大工の口伝に影響を受けたそうなんです。



この引用部分だけでも、

仕事において人と人とをつなげることのヒントが、

ずいぶん出ているような気がするのですが、

みなさんは、どう読まれましたでしょうか?

感想などは、postman@1101.com までぜひどうぞ。

では、明日にまた、このコーナーでお会いしましょう。



(つづきます)

2002-07-15-MON

BACK
戻る