ほぼ日刊イトイ新聞

動物はみんな、 ほかにはないものを 持っている。

私たちが、人や犬や猫や鳥などの動物と
いっしょに暮らしたいと思うのはなぜだろう。
ある日、ミグノンに目のないねこがやってきました。
すごくかわいくて──それがこの夏の、
動物の旅のはじまりでした。
担当は、去年は鶏に親しんだ、ほぼ日の菅野です。2018年も「いぬねこなかまフェス」@人見記念講堂と
「なつのミグノン展」@TOBICHIを開催します。
ぜひみなさん、いらしてください。

第3回メンマのとーちゃん。

前あしにハンディがあるワンちゃん
にじりちゃんのご家族に連絡を取りつつ、
「メンマのとーちゃん」の
森川幸人さんにお会いすることにしました。

ほぼ日では
「メンマンガ」でおなじみのメンマですが、
後ろあしが動かず、排尿排便が
調節できない女の子の猫です。
夜中に狸に襲われていたところを森川さんに発見され、
いっしょに暮らすことになりました。

▲森川幸人さんです。

森川幸人さんはグラフィック・クリエイター。
主な著書に『絵でわかる人工知能』や
『マッチ箱の脳』などがあります。
ほぼ日は創刊当初からお世話になっていて、
「猫が好きな人」という印象はありました。
怪我をした仔猫のメンマが
森川さんの家のすぐ近くで発見されたことを知り、
「猫が好きな人の近くでそんなことが起こるなんて」と、
その経緯をもっと訊いてみたくなったのでした。

▲メンマちゃん。オムツをつけてます。

メンマの写真は「ドコノコ」のブック
たくさん見られます。

そもそもメンマの後ろあしが動かなくなったのは、
狸のせいなんですか?

森川さん

「結局はわからないんです。
夜中に緊急で病院に連れていったときは
まだあまりにもちいさくて
レントゲンが撮れませんでした。
だから原因はわからないままなんだけど、
たぶん、骨折です。
腰椎と脊髄のあいだに出っ張りがあるんで、
そこが折れてるんだと思います」

出会いは生後どのくらいだったんですか?

「先生の見たてでは3週間。
まだミルクをやんなきゃいけない時期です」

最近、東京でも狸やハクビシンが
猫を襲う話を聞きますが、メンマも
狸が食べようとしてたんでしょうか。

「たぶんそうでしょうね。
でもね、うちはわりと都心なので、
まさか狸が出るなんて思ってませんでした。
家のすぐ外に狸がいて、
『わ、狸だ! 写真撮りたいな』
なんて思っていたらスーッと逃げちゃった。
そのあとに黒いのが転がってて、それがメンマでした」

森川さんは、以前も猫といっしょに暮らしていたと
うかがったことがあるのですが。

「はい。もう6~7年前になります。
前の猫が亡くなったあと、
保護動物の里親にならないかと、
みなさんに何度かすすめられたのですが、
しばらく動物を飼うのはよそうと思っていました。
だから、メンマと出会うまでは
猫と暮らす気なんてぜんぜんありませんでした。
子どもの頃から実家にずっと犬や猫がいて、
動物の生き死には経験していたし、
寿命が来たら逝くということにも慣れていたから、
自分はまさかペットロスにはならないだろうと
たかをくくっていました。
でも、前の猫を自分の手の中で看取ったとき、
けっこうショックで、
『俺、こんなことで落ち込むんだ』と驚きました。
これはちょっとマズいと思って、
これ以上経験するのはやめようと思っていたんです」

そんなときに、メンマが現れて‥‥。
最初に瀕死の怪我からはじまったので、
きっと考える余地なんてなかったですよね。

「ないです。まったく余地はありません。
病院に行って処置をしてもらったあと、
『保健所に連れてくか、飼うか、どっちにします?』
って訊かれるんですよ。
保健所で里親が見つかることもあるでしょうけど、
保護できる期間が短いらしいので
下半身不随の猫がもらわれる可能性って、
もう、誰が考えても低いでしょう。
自分が家に連れて帰らないと、
この子の命が終わってしまう。
迷うとか計画するとかいうことはありませんでした」

▲「最初の頃」のメンマ。

メンマのあしが治るめどはあったんですか?

「発見したときからありえない方向に曲がっていたし、
つねっても反応がなかったので、
下半身が不随なのは最初からわかりました。
緊急の救急センターの先生は、
治るかどうかはわからない、とおっしゃっていました。
そのあとすぐに
かかりつけのお医者さんを決めて訊ねたら、
『おそらく無理だろう』という意見でした。
ミグノンさんで鍼治療もやってもらったけど、
歩けるまではぜんぜんいきません。
オシッコをしている感覚がなく、垂れ流しなので、
最初はシートを部屋じゅうに敷きつめて
生活していました」

そこからはもう、
ウンチとオシッコとの‥‥。

「闘いですね。
これはいまももちろん続いていて、
『この方法でOK』という結論はありません。
ふつうの動物用のオムツとは流す方向が違うので、
オムツもメンマ用に改造しなきゃいけません。
そもそも引きずるから脱げちゃうし。

▲オムツコレクション。

メンマのオムツは、動物用のオムツに、
人間の生理用品を貼りつけて自作しています。
1回のオシッコの量がだいたい16cc、
1日3~4回するので、
1日のめやすは40~50cc。
最悪1日1回しか替えられないこともあると考え、
生理用品はパッケージに吸収量が書いてあるので、
そこから計算してつくります。
俺、改めて自分がかなり理科系だなと思いました」

やっぱり完全に理科系ですね(笑)。
じゃあ、オムツはぜんぶ手づくりなんですね。

「ぜんぜん正解は見つかってませんけど、
手づくりです。
ヒマがあるときにいっぱいつくって、
いつもキープしています。
ほんとに、通販がある時代でよかったです。
毎週のように生理用品を
買いにいくおっさんって‥‥(笑)」

あ‥‥そうですね、人間は月に1回ですが、
メンマは毎日ですもんね。

「自分が仕事上、不規則な生活をしてるので、
夜遅くまで帰れないこともあります。
どのなかで、どういうタイミングでオムツを替えるか、
いっそオムツはやめるか、
そうすると床をどうしよう、
いろんな組み合わせをひと通りやりました」

森川さんがTwitterかインタビューかで
1日1日をたのしくやっていくという意識で、
とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

「最初は3時間おきに授乳しなきゃならなかったので、
それがすごくしんどかったです。
お医者さんに『しなかったら死にます』と
言われていたので、必死でした。
オシッコもどんどん垂れ流すし、
やっぱり深刻だったんだけど、
あまりにも深刻になっちゃマズイな、
これはもう笑うしかねぇな、と思いました。
そうじゃないと耐えられないでしょう」

メンマのかわいいところはどこですか?

「ふつうにかわいいからね」

そうですね。

「ツンデレで、意外と気性が激しいです。
白黒はっきりしていて、
人間の女性だったら苦手なタイプです(笑)。
嫌なことされたら瞬間に怒るし、ほかの猫にも厳しい。
でも、甘えてくるときはちゃんと甘えてきます」

どうやって甘えるんですか?

「あしが動かないから、ふつうの猫みたいに
歩きながらスッとスリスリするのは
できないんですよ。
そのかわり、ちいさかったときは
俺の横に来てパタンって、よく倒れてました。
いまは大きくなったから、
自分で体を傾けて、俺がなでるのを待ってます」

かわいいなぁ。
メンマがいることで、
森川さんが変わったことはありますか?

「何が変わったんだろう? 
ちょっといま、
メンマがいなかったときに自分がどう生きてたか、
わからないくらいになってます。
ま、確実に、部屋がくさくなったのと(笑)、
ちゃんと家に帰るようにはなりました。
なるべく早くオムツを替えてやんなきゃいけないし、
おしりをふいてやんなきゃいけない。
寄り道しないで帰る、いいお父さんになりました。
ずっとひとり暮らしだったし、
たぶんいま、たのしいんだと思います。
『大変』と『たのしい』がくっついちゃってて、
どこまでがたのしくて、
どこまでが大変なんだかわかりません。
演歌をくちずさみながらメンマのおしりを拭いてて、
『何やってんだ俺は』とは思うけどね(笑)。
そんなことはいままでありえなかったですよ。
メンマのおしりを拭いている顔だけは
人には見せられないなぁ(笑)」

(つづく)

2018.08.19 SUN

TOBICHIでやるよ!なつのミグノン展 2018

2018年8月24日(金)~26日(日)
TOBICHI「すてきな4畳間」
11:00~19:00

今年の「なつのミグノン展」は、
ミグノンと吉祥寺にある紙もの屋さん
「ペーパーメッセージ」とのコラボです。
「ペーパーメッセージ」のデザイナーさんが
ミグノンの保護動物のイラストを描きおろし、
いろいろな紙雑貨をつくってくださいました。
紙雑貨の販売はもちろん、原画の展示販売も行います。
おなじみ、ミグノンのチャリティグッズや、
9月9日に開催する
「いぬねこなかまフェス」のチケットも
特典つきで販売します。
(TOBICHIで申し込むと、座席を選べますよ)
ぜひお越しください。

いぬねこなかまフェス 2018~動物愛護週間に集まろう~

2018年9月9日(日)昭和女子大学人見記念講堂 
16:00開場 17:00開演 
全席指定4,500 円(税込) 

■出演者
akiko/糸井重里/スティーヴ エトウ/坂本美雨/
清水ミチコ/鈴木杏/椿鬼奴/富樫春生/友森玲子/
畠山美由紀/町田康/水越美奈/矢崎潤/渡辺眞子
(五十音順)

■お申込み
e+
ローソンチケット
0570-084-003 Lコード:76291
チケットぴあ
0570-02-9999 Pコード:118-615

動物愛護週間に向けて、
動物たちのために学び、考え、助けるイベントです。
動物を愛するさまざまなジャンルの出演者が集まり、
毎年協力して作りあげています。
チケットの売上から制作費を引いた全額と、
オフィシャルグッズの利益全額は
ミグノンの保護動物たち約160頭の医療費と
シェルター家賃、光熱費などに充てられます。

出演の方々の演奏や朗読に加え、
災害時のペットについての講演、
動物を看取ることについての
パネルディスカッションもあります。
いま動物と暮らしている人も、そうでない人も、
これからの人も、
学びながら保護動物に支援をください。
ロビーではオフィシャルグッズに加え、
今年は出演お休みの矢野顕子さんの
ガレージセールも予定しています。