にじ色とハニーパン。
にじりちゃんは、
両前あしが骨折または脱臼したままの状態で
治療されないまますごしていた犬です。
手首がブラブラのままセンターに保護されていて、
ミグノンにやってきました。
そんなにじりちゃんの家族になったのは、
ほぼ日の事務所から1時間半ほど
車で行ったところにお住まいの方でした。
ちょうどご自宅の引っ越しをなさっている最中で、
ご夫婦とも仕事がお休みの日がある、とのこと。
そんな引っ越しの貴重な忙しい日に、
「犬のことならぜひ」と
会ってくださることになりました。
にじりちゃんはいま、家族となったご夫婦
かんちゃんさんとボーさんと、
ハニーパンちゃんというきょうだいと
いっしょに暮らしています。
ハニーパンちゃんは、
ミグノンにいたときにはひじりちゃんという
名前でした。
2匹はもともと同じ場所の
(おそらく)多頭飼いの家にいて、
実の姉妹で、8年間いっしょにすごしていました。
なぜこのご夫婦は、
2匹を迎えることになったのでしょうか。
ええっと、左がハニーパンちゃんで、
右がにじりちゃん‥‥?
かんちゃん
「はい。にじりちゃんはうちにきて、
にじ色という名前になりました。
先にハニーパンがうちにやってきて、
そのあとにじ色が家族になりました。
以前、うちにはキャバリアがいたのですが、
亡くなってからしばらくたっていて、
また犬を迎えたいなと思っていました。
ミグノンのインスタで、にじりちゃんの写真を見て、
これまで大変だったんだろうなと思い、
気になりはじめました。
うちは共働きなので、
犬がお留守番しなくてはならない環境です。
譲渡会で友森さんに相談したら、
にじりちゃんはお留守番のない家を探している、
とのことだったので、
いっしょに譲渡会に出ていた姉妹のひじりちゃん、
いまのハニーパンを迎えることにしました。
そのあとも、にじりちゃんのことは気になって、
ずっとインスタや預かりさんのドコノコを
チェックしていました。
にじりちゃんはなかなか
家族が見つかりませんでした。
預かりさんがネットにアップしてくださった写真が
すごくかわいくて、
私はPCに画像保存したりしてました。
だからきっと、ずーっと気になっていたんでしょうね。
ある日、にじりちゃんの預かりさんのレポートに
『お留守番できます』
という項目が付け加えられたんです。
お留守番ができるんだ! と思って、
そこでもう一度友森さんに相談しました。
『ハニーパンとは一緒に住んでた姉妹だし、
いちどトライアルしてみましょうか』
と言ってくださいました。
それで、にじりちゃんはうちに来ることになりました」
なぜ、にじりちゃんのことが
そんなに気になったんですか?
「まずはやっぱり、顔がかわいかった。
この吸い込まれそうな目がかわいいでしょう(笑)。
多頭飼いだったみたいだし、手が不自由で、
おそらくこれまで充分に
かわいがってもらったことはないんだろうなと思いました。
保護されたとき、この子たちは8歳でした。
ワンちゃんはだいたい10歳すぎれば
高齢に入るといわれるので、
『いまだったらまだ
いろんなところに連れてってあげられる!』
『なんでもしてあげられる!』
早く早く! と、
いても立ってもいられない気持ちになりました」
前のキャバリアのワンちゃんは、たしか
片目が不自由だったんですね。
「はい。先代の子はボーニュという名前で、
片方の目がありませんでした。
ミグノンの譲渡会でボーニュを最初に見たとき、
ちょっとギョッとしたんですよ。
左目がなくて、背中に大きな傷があって、
毛もはげてて痛々しかったです。
それはいまから8年ほど前のことなんですが、
恥ずかしながら、私たちは当時、
保護犬のことをそんなにくわしく知りませんでした。
でも、犬を迎えたくなったことを機に、
譲渡会なんかもあるみたいだし、
よくわからないけど
行ってみようかということになりました。
ふたりの休みが合う日に譲渡会をしていたのが
たまたまミグノンさんでした」
たしかボーニュはそのとき
すでに高齢だったんですよね?
「7~9歳くらいかな? と言われていたんですが、
そのあと痙攣を起こすようになって検査したら
もうちょっと年齢がいってそうですね、と言われました。
でも、長生きしてくれました」
ボーニュを迎えるとき、不安はありませんでしたか?
「ボーニュは左目がないだけでなく、
心臓も悪かったんですが、
ベロの色で低酸素状態をみることなど、
日常生活で気をつけることを
友森さんが教えてくださいました。
私は人間のほうの看護師でもあるので、
だいたいの症状はわかるかもしれない、とも
思っていました。
その後、ボーニュは
耳が聞こえないこともわかりました。
片目で、耳も聞こえないんです。
けれども本人はご機嫌で、気にしていない。
ほんとうに『いまを生きてる』って感じでした。
ボーニュの正式譲渡のとき、
当時ミグノンにあったドッグカフェのキッチンの方が、
とても驚いていらっしゃったことを憶えています。
どこがよかったんですか? 決め手はなんですか? と
いろいろ訊かれました(笑)。
もともとは譲渡会で、
まずは主人が、
ボーニュにピンと来ていたんです。
私はボーニュを抱っこするまでは、
ちょっとかわいそうだな、という気がしていました。
でも、抱っこした瞬間、
ふわ~っと何かが出て、
天使を抱いた感じがしたんです。
『ああ、天使だ!』
あの瞬間はいまでも忘れられないです」
ご主人はボーニュのどこに
ピンと来たんでしょうか。
ボーさん
「その日の譲渡会にいた犬のなかで、
片目だけどいちばん元気そうだったから。
いっしょに走ってくれると思ったんです。
かわいかったし愉快そうな犬でした」
かんちゃん
「ほんとに、あの笑顔にね‥‥やられました。
友森さんも決まると思ってなかったらしくて
とても喜んでくださいました」
ボーさん
「ぼくも最初は、
片目がないことを気にしてたと思います。
散歩したりインスタに写真をアップして、
みなさんに『かわいい』と
言ってもらえることがあっても、
片目がないからかな、とか、
振り向くとギョッとされるかな、とか思ってました。
でも半年経つとぜんぜん気にならなくなって
『かわいい』と言われたら、
そのまま受けとれるようになりました」
にじ色もハニーパンも、ボーニュと同じく、
いまを生きる、という毎日ですか?
かんちゃん
「最初はちょっと不安そうでしたけど、
そのうちゴハンも食べるようになって。
ハニーパンは、いまトレーニングに行っています。
お互いに理解できることがどんどん深まって、
それがいまはとてもうれしいです。
トレーナーさんに、繊細で頭のいい子だと
言ってもらえるんですが、
そこが人間からするとちょっと問題で、
お留守番のときにクレートの鍵を開けたり、
鼻でくぐり抜けて出ちゃったりするんです。
でも、トレーニングにその能力を向けていけば、
どんどん通じ合えることがわかりました。
人間からみれば困ることも、
ただ抑制するのではなく、角度を変えて、
得意なことを活かしてあげればいいんですよね。
そうやって人間と犬の両方が
幸せになる何かを見つけていけばいいんだ、と
思いました。
にじ色は、ハニーパンがトレーニングしているのを
クレートでお留守番しながら見ています。
そのとき『私も歩けるんだけど!』という感じで
出ようとするので、車椅子をつくってみました。
まだ練習中ですが、うれしそうにやってます。
いまはにじ色はバッグに入って散歩に行ってますが、
車椅子がもうちょっとうまくいけば、
ハニーパンといっしょに歩いて散歩ができるかもしれない。
おすわりも、あしの負担になったら嫌だと思って
教えなかったんですが、
ハニーパンがやっているのを見て、にじ色もやるんです」
ぼーさん
「意外と動くんですよ、にじ色。
思ってたより歩けた。
もうちょっと手がかかるかなと思っていたら、
ぜんぜんでした。
おいでと言ったらちゃんと来るし、
外を移動するとき抱っこする、ただそれだけです」
(つづく)
2018.08.21 TUE