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[糸井]
柔道ネタで番組に出ていた頃は、
「食えてないけど、出る機会はゼロじゃない」
という状態だったんですね?

[有吉]
はい。それが、ずーっと、ずーっと、続きました。



[糸井]
それは「ひまでしょうがない」ということがまず、ありますよね?

[有吉]
ほんとうにひまでしたね。
仕事は、週に‥‥あ、いや、月に、3本ぐらいでした。
だから、ほとんどが休みです。

[糸井]
営業とかは?

[有吉]
ぼく、営業がほんっっっとに苦手で、人前が大っきらいで。

[糸井]
‥‥ははははは。

[有吉]
お客さんのダイレクトな反応が怖いんですよ。

[糸井]
うん、うん。

[有吉]
だから、営業は絶対やらないから、とスタッフの人に伝えていました。

[糸井]
それで、事務所の人たちは、
「いいよ」って言ったの?

[有吉]
はい。
だいいち、ヘタなんですよ。
だから。



[糸井]
自信があるんだ(笑)。

[有吉]
客いじりがヘタなことには自信があります(笑)。
やっぱり、お客さんに
「イヤだな」という気持ちが伝わっちゃうみたいです。
ぼくの所属している太田プロには、伝統的に営業のテクニックがあるし、それはもちろん教えてもらえます。
どんな人でもこうすれば確実に笑いを取れる‥‥だけど、それさえできないんです、ぼくは。

[糸井]
へぇえ。

[有吉]
そういうわけで、営業も行かず、まったく仕事がなかったので、ほんとうにおかしくなっちゃってました。
毎日、テレビ観て、ラジオ聞いて、パソコン開いて、ゲームやってました。

[糸井]
そうやって時間をつぶしてるときは、たのしいんですか?
苦しいんですか?

[有吉]
気持ちはすごくもやもやしてるんですけど、ぼくはどうやら努力家ではないらしく、どんな境遇でもけっこう快適になって、慣れちゃうんですよ。

[糸井]
うん、うん。

[有吉]
たまに仕事に呼ばれたかと思うと、
「あの人はいま」とか、ネガティブな仕事ばっかりでした。

[糸井]
なるほどねぇ(笑)。



[有吉]
仕事が来たのはうれしいんですが、そういう番組の収録に行くと、嫌だな、と思っちゃいました。

[糸井]
ああいう番組って、みんな嫌じゃない顔をしてますけど、やっぱり出るのは嫌ですよね。

[有吉]
嫌です。
そうじゃない番組でも「一発屋」とか呼ばれてちょっとはネガティブなんですが、それはぜんぜん嫌じゃない。
挽回のチャンスがありますからね。
だけど、ほんとうの過去の人として呼ばれたときは、苦労話をして、同情されて終わりでしたから、すごくつらかったです。

[糸井]
歌手の人もよく出演されますが、お笑いの人はきついですよね。
「案外いいやつだったんだ」
とか言われたら、かなわないですよね。

[有吉]
はい(笑)。
結局、「あの人はいま」のような番組は10回近く出ました。

[糸井]
はははは。

[有吉]
「レギュラー」って言われてたんですよ。

[糸井]
すごいな(笑)。
上島さんと知り合う前も、その時期はあったんですよね?

[有吉]
はい。「前」もありました。

[糸井]
そのときは、暗かったんでしょうね。

[有吉]
もう、絶望です。



[糸井]
(笑)

[有吉]
救いがなくて、ホントに、どうしようもない時期でした。

(続きます)
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