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[糸井]
有吉さんが番組でふたたび自分が売れはじめたことを分析していた場面を観たんですが、そのとき、有吉さんは
「バカな人たちが気づきだしたんですよ」って言ったんです。
それを観て、ぼくは、この人はすごいとこに来ちゃったな、と思いました。
つまり、どこかでまず有吉さんのおもしろさに気づく人たちがいて、そのあとに気づくぼんやりした人たちがいて‥‥という状況になった。
そのことに、自分で気づかれたんです。
そのときには、もう有吉さんは、戻れなくなっちゃったんですよ。

[有吉]
うはははは、わかります。



[糸井]
つまり、あだ名をつけることが仕事みたいになっちゃったときは、もう、戻れない。

[有吉]
はい。

[糸井]
あんな自己分析ってね、よっぽど冷や飯食ってた人でなきゃできないですよ。

[有吉]
申しわけないです(笑)。

[糸井]
自分でああいうことがどんどん浮かぶのは、苦労した時期に「コノヤロー」と思ってたことの遺産ですよね。

[有吉]
はい。
あとは、ウソをついてない、ということがあります。



[糸井]
うん、うん、そうですね。

[有吉]
まったくついていません。

[糸井]
なるほどねぇ。
有吉さんは、苦労してた時期に、いい気になっておしまいになっちゃう奴とか、いい気になってるけど大丈夫な奴とか、ずっと見てたわけでしょ?

[有吉]
はい、いっぱい見ました。

[糸井]
そして、普通のお客さんが普通の目で見てることがだいたい当たってるということは‥‥

[有吉]
はい、当たってます。

[糸井]
わかってたんだよね?
有吉さんが芸人だから
「あいつはダメだな」をわかるんじゃなくて、普通の人がみんな普通に、そのあたりを冷たーく見てるんです。

[有吉]
見てますね。
ほんとに‥‥ぼくら、邪悪な気持ちで見られてるんですよね。

[一同]
(笑)

[有吉]
世間って邪悪だな、と、ぼくは思ってます(笑)。



[糸井]
それは、被害があるようにやってるんじゃなくて、なんの思いもなくやってるんですよね。

[有吉]
そうなんです。

[糸井]
その、温度のない意地悪のようなものをね、テレビは、ないことにしてるんですよ(笑)。

[有吉]
はい。

[糸井]
そこに、窓あけて
「ありますよ」という風を入れちゃったのが、有吉さんです。

[有吉]
はははは。
そうですねぇ。

[糸井]
暖房の効いた部屋で今日はあったかいねってみんなが言ってるのに、外は寒いじゃん、って空気入れちゃったんですよ。

[有吉]
はい。ぼくだけ、ノンフィクションの気持ちでいます。
いつもです。



[糸井]
その意味では、冷えた体でテレビ局に行ったほうが、すごみを出せるんですよね。
でも、いまはちょっと幸せそうになってるから周囲から「体あったかいじゃん」って言われちゃう。

[有吉]
そうなんですよ。
そこをちょっとなんとかしなきゃと思ってます。

[糸井]
でも、オレはもう大丈夫だと思ってますよ。
なぜなら、有吉さんはすでに、自分に都合のいい台本を用意できるからです。
それを自分で持ってきて、はまるとこだけやってれば、生き延びることができると思います。
「あだ名」にしても、あれは放送作家の仕事ですから。

[有吉]
はい、はい。

[糸井]
有吉さんは、自分でその権利を持ったんですよ。
有吉さんだけがね。
だとしたら、これは天下ですよ。
その一部分だけだけど(笑)。



[有吉]
はい(笑)。
ぼくは、いま利権をつくろうとしてるんです。
それは、一発屋の利権です。
ぼくが握ってやろうと思ってます。

[糸井]
はははは。

[有吉]
ほんとうに「カネヤン」になりたくて覚悟して、やってるんです。

[糸井]
名球界ですね。

[有吉]
その名球界の利権をぼくは一気に握りたくて、がんばったんですけども、どうもダメで(笑)。

(続きます)
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