[糸井]
先に写真集を出しているプロのカメラマンとして、アニさんの写真集のことをぼろくそに言ったりしないんですか。
[うめ]
えっ、ぼろくそにですか。
[糸井]
「まだまだこれじゃダメだねー」って。
[うめ]
いや、そんなことは‥‥。
[糸井]
いや、本人の修行のためにもね、言ってあげたほうがいいと思うよ。
[アニ]
勉強になります。
[うめ]
いえいえ‥‥。
[糸井]
「わたしはこれで一本立ちしてるんだけど、 あんたは、音楽を捨てて、 これで食べていけると思ってるの?」
っていうようなことをね、この機会に、ガツンと言ってあげたほうがいいと思いますよ。
[アニ]
お願いします。
[糸井]
ま、ピントのこととかは、あんまり言わないほうがいいと思いますけど。
[うめ]
あ、ピントのこととかは、わたしもまだ、勉強中なんで、あんまり。
[糸井]
「ピント勉強中」(笑)。
[アニ]
ぼくも「ピント勉強中」です。
[糸井]
ピント以外で、なんか、言ってあげることはないですかね。
[うめ]
いえいえ、そんな。
[糸井]
いや、マジメな話ね、もしもこれが、アニさんじゃなくて、後輩のカメラマンかなんかで、
「これ、見てください。
なんか教えてください」って言われたら、黙ってたらダメでしょ?
先輩なんだから、なんか言わなきゃ。
[うめ]
ああ、先輩としてですか。
いや、でも、わたし、アニさんより年下やし。
[アニ]
関係ないでしょ。
[糸井]
関係ないでしょ。
[うめ]
関係ないのかな。
[糸井]
この道はね、年とかそういうんじゃないの。
バット1本で勝負してきた世界なんだから。
[アニ]
そうそう。
[うめ]
バ、バット1本‥‥。
[糸井]
とにかく、なんか言いなさい。
[うめ]
そう‥‥ですか‥‥。
えっと‥‥わたしは、っていうか、自分の写真との違いということでいうと、いつも、自分で本をつくるときは、看板とか、標識とか、落書きとか、そういう「ことば」って入れないようにしてるんですよ。
[アニ]
ああ、うんうんうん。
[糸井]
一方、アニさんの本は、
「ことば」だらけですね。
[うめ]
いや、でも、だから、どっちがいいとかわるいとかじゃなくて、えっとね、あ、わかった、やっぱりあれだ、わたしはやっぱり報道のつもりで撮ってるところがあるんですよ。
けど、この本は、報道じゃないもんね?
[糸井]
どうですか?
[アニ]
報道じゃないです。
[うめ]
いや、でも、こんなこと言ってたら、ほんとうの報道カメラマンの人からビンタされるかもしれないけど。
[糸井]
でも、一般的な報道ってのがどういうものなのかということはさておき、うめちゃんとしては、報道のつもりで撮ってる。
[うめ]
そう。
[糸井]
これ(『うめめ』)は、報道ですよね?
[うめ]
うん。
[アニ]
うん。
[糸井]
これ(『ブリングザノイズ』)は報道じゃない。
[アニ]
うん、そう。
[うめ]
だから、たぶん、そこが大きく違うと思ったんですけど。
[糸井]
なんだろうね、その違いの根っこは。
美意識?
[アニ]
どうだろう(笑)。
[うめ]
あ、でも、そうだと思う。
美意識つーか‥‥えっと‥‥あれだよね、この本は、内側からのもの。
わたし、外側にいる。
[糸井]
うん。
[アニ]
あっ、そうかも。
[うめ]
わたしは外側で撮ってるんですけど。
[糸井]
ああー。
[アニ]
なるほど。
[糸井]
それは、決して、批判的な意味じゃなく。
[うめ]
批判的な意味じゃ全然ないです!
その人が撮りたいものを撮れば誰も批判することはできないと思うんで‥‥。
[糸井]
うん、うん。
‥‥でもね、うめちゃん、今日、ぼくは、そういうほんとうに正しいことばよりも、もっと、批判が訊きたいんですよねぇ。
[うめ]
えっ!
[アニ]
え?
[糸井]
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