[糸井]
さっき、自分の写真集には、看板とか、標識とかの「ことば」を入れないようにしてるって言ってたでしょ?

[うめ]
はい。

[糸井]
それは、なんか理由があるの?

[うめ]
ああ、ええと、なんていうか、
「おもしろ写真」になりすぎちゃうっていうか、ちょっと誤解されるなっていう気がして。
あのー、わかりやすく言っちゃうと、VOW(雑誌、宝島で人気だった投稿コーナー)
みたいになっちゃうから。

[糸井]
あーー(笑)。

[うめ]
VOWはVOWでいいんですけど、わたしがそれをやらなくてもいいっていうか。



[糸井]
よくわかる。

[アニ]
やっぱ、本職が報道だから。

[うめ]
そう、そう、わたしは報道だから。
実際、街で変な看板とか見かけたらつい撮っちゃったりもするんですけど、それを本の中に入れると、ほかの写真もVOW的なものに誤解されちゃうから。

[糸井]
なるほど、なるほど。

[うめ]
なので、わたしは、とりあえずVOWっぽいものは封印して、というふうにしてきたんです。

[糸井]
アニさんは入れますよね?

[アニ]
入れます。

[糸井]
アニさんは、VOWって思われてもいいですか?

[アニ]
それはもう。やっぱ、VOW世代ですから。

[うめ]
ああー(笑)。

[糸井]
VOWの要素もあるぞと。
そこはこだわりなく。

[アニ]
うん、そうですね。
あ、でも、ちょっとこだわったのは、印刷されたものよりも、なるべく手書きのものを入れるようにしたっていうところですね。



[うめ]
え、どういうこと?

[アニ]
本や新聞の誤植とかじゃなくて、手書きの中途半端なものがおもしろいなって。
たとえば‥‥これとか、手書きじゃないですか。

[うめ]
うん、うん。

[アニ]
その人のタッチが出てるほうが、おかしいと思うんですよ。
だから、このへんに載ってる、すごくヘタなグラフィティーとかを街でいっつも探してて。
これなんて、ひどいでしょ?
「鬼」とか、グラフィティーとして、ふつう、ナシじゃないですか。



[糸井]
ははははは。

[アニ]
たぶん、描くことなくて、描いてると思うんですよね。
でも、描くことないんだったら、描いちゃダメでしょ。
これとか、ふつうは中の色を塗ってアウトラインを最後に描くのに知らないからか、逆にやって、めちゃくちゃになってるんです。

[糸井]
(笑)

[うめ]
(笑)



[アニ]
これとかに至っては、
「DREAM」って描きたかったと思うんですけど、途中だし‥‥。



[糸井]
ははははは。

[うめ]
あと一歩だったのになぁ。

[アニ]
そういうところがいいなぁと思って。
これとか、暴走族系だと思うんですけど慣れてないっていうか、はじめて描いたんじゃないか、って感じで。



[糸井]
うかがってると、不慣れな描き手に対して、軽く、愛情がありますね。

[アニ]
そうなんです。

[糸井]
まちがっちゃった人に対して、ありますよね、愛情が。
だとすると、これも報道じゃないですか?

[うめ]
そうですね。
それも報道に入ります。

[糸井]
入りますよね。

[アニ]
ああ、そうですか。

[うめ]
共感します、その視線は。

[糸井]
ということは、本日は、ふたりの報道写真家をお招きしているというわけですね。

[アニ]
(笑)

[うめ]
そうですね。ふたりの報道写真家です。

[糸井]
いうなれば、「新しい報道の形」
っていうことなんでしょうかねぇ。



[うめ]
そうですね。

[アニ]
そうです。報道ですよ。

[糸井]
報道ですよ。
いや、これは気がつかなかった。

[うめ]
でも、ほんと、そうなんですよ。

(続きます)


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