[佐伯]
いろんな営業マンを見てきましたけど、その方ほど上手に「ヒモ」になってる人はいませんでしたね。
女性の使い方、天下一品。
普通の営業マンって、言われたことや命令されたとおりに動くだけの
「作業人」になってしまっている人が多いのに。
[糸井]
その方は、
「できる」ようには見えないんですか?
[佐伯]
外見に「できる」オーラが出ているわけではないんですよ。
背は高いわけではないですし、ヘルニア持ちだったために、力仕事は苦手でした。
ご本人には申し訳ないのですが、顔もアバタが多くあって、決して女性から「イケメン」と呼ばれてたわけでもないんです。
[一同]
(笑)
[佐伯]
おまけに声にも特徴があって、ガラガラ声の上に山形弁が抜けてなかったんですよ。
[糸井]
ははは。
女性への接し方、どこで覚えたんでしょう?
[佐伯]
どこかで苦労されたんでしょうね。
とにかく、人にやさしかったです。
わたしも、イヤなことは一切言われなかったですし。
[糸井]
その逆の男だらけだったでしょうに。
[佐伯]
残念ながら(笑)。
でも、だからこそ、彼は目立っていたのかもしれないですね。
とにかく数字を出さなくては認められない、そういう世界でしたから。
とにかく、どんなときでも
「数字数字」って言われるんですよ。
女性は数字がほんとうに苦手なんです。
「前年対比いくら」とか言うでしょう。
[糸井]
はい、言いますが‥‥
[佐伯]
そんな対比がわからないから、この業界に来てるのに! ってみんな、思ってるわけですよ。
[一同]
(笑)
[佐伯]
自分はパソコン使えない、計算も苦手。
そういう自分を理解しているからこそ、この化粧品業界の中でも、販売業に来てるのに!
[糸井]
なるほど、なるほど。
[佐伯]
それを、男性の方たちはなかなか理解してくださらないんですよね。
前年対比の%の数字よりも、あといくら売れ、あと100万ですよ、と言ってくれたほうがよっぽどわかるじゃないですか?
たとえば、女の人に
「あと1.5kmですから」と言うよりも
「あと20分歩きますよ」と言ったほうがわかるんです。
[糸井]
量でつかめる感覚がほしいんですね。
数になる前の段階の量感をわかってない人がいくらものを言っても説得力がないですし、その心理をわかってないとダメですね。
[佐伯]
だけど、逆に、女性の方にもダメなところがあるんですよ。
わたしは、仕事でたくさんの若い女性とごいっしょしてきましたけど、女性の方は、区別しないでものを言ってしまうことがあります。
[糸井]
というと?
[佐伯]
「この人にこのことを言っちゃいけない、 あの人に言わなきゃダメよ」
ということがあるんですけど、区別しないで言っちゃう。
一見区別しないことはいいことのように思えるのですが、それでトラブルが起きてしまうんです。
このことを理解されていない方が、実は結構な数いらっしゃるんですよ。
[糸井]
そうなんですか。
[佐伯]
そういうトラブルに遭って
「悔しいー!」って泣き寝入りしてしまう女性の方って多いんです。
[一同]
(笑)
[佐伯]
その方に、「誰に何を言ったの?」と訊くと、案の定、言う相手を間違っていたりするんですよね。
「そのようなことを、あの方に伝えたとしても 意味が無いんですよ。
それは、伝えたあなたが悪いんです!」
「悔しいー!」
「自分の考えだけで、物事を考えてしまうと そう陥りやすいんですよ。
まずは、相手を見ること。
相談すべき相手はその方でいいのか?
物事を誰に相談したら、 スムーズに展開していくのか?
相手を見れば、おのずとわかってくるはずです」
[糸井]
うん、うん(笑)。
[佐伯]
相手を知らずに、ものを言っちゃう。
女性の方のトラブルは、ほんとうにそれが多いです。
[糸井]
逆に男は気が弱いから、言わないことばかりになったりしますね。
[佐伯]
たしかに、言わなくてもわかるだろう、ということになりがちですね。
[糸井]
そっちに頼りすぎですよ。
やっぱりお母さんにやさしくされすぎたんでしょうか。
(つづきます)
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