[佐伯]
美容の仕事というのは、9割がカウンセリングです。
なぜなら、顔というのは、健康のカルテであって、心の証明であって、生きてきた人生の看板です。
もしもブツブツができたとしたら体調のここがおかしいんだ、というふうにみんな、顔が教えてくれるんです。



[糸井]
それは、経験でわかるんですか。

[佐伯]
そうです。

[糸井]
じゃあ、チズさんは、答案を知っててただ読んでるだけ、という状態なんですか?

[佐伯]
はい。
顔に、全部が出てきてるんです。

[糸井]
うわー!

[一同]
(笑)

[佐伯]
わたしはそれを美容部員に伝えようと、分厚いマニュアルを作って会社に置いてきました。

[糸井]
その置きみやげ、すごいですねぇ。
みんなが「ください」って、言いたくなると思います。
でも、それは、チズさんがどれだけお客さんに接してきたかという、歴史が作り上げたものですよね。

[佐伯]
ただ、独立してから5年間、いろいろなことをいろいろな場所でお話させていただいてきたんですが、いまだに
「高ければ高いほど効果的」という考えは世間から消えていないんですよね。
それでいて、
「ちっともきれいに近づけない」という方が多い。
こちらは少しでもきれいに近づいていただきたいと思っているのに。
その歯がゆさを解消するには、やはりマニュアルが必要なんだと、わたしが美容部員に作ったマニュアルを、今度は世間のみなさまにお作りすればいいんだ、と思ったんですよ。

[糸井]
弟子じゃなくて、一足飛びに、孫弟子に向かって話しはじめたということなんですね。

[佐伯]
そうなんです。

[糸井]
うん、わかります。
いま、その時代に入ってるんですね。



[佐伯]
ええ。
最初の本を出してからもう5年経ちますが、ここまで何冊も本を出してこれだけ言っていても
「もっと具体的に、どうするのか知りたい」
とおっしゃる方が多い!

[一同]
(笑)

[佐伯]
そういうことで、今度はDVDを出すことになったんです。
これは5年間の結果でございます。

[糸井]
DVDだと一気に学べるわけですもんね。
ぼくは先日拝見しましたが、すごくわかりやすいですね。
ひとつの手順を、ちゃんと時間かけてやるということがわかりました。

[佐伯]
お化粧も同じことが言えるんですけれども、パッパッパっとやったら、手抜きの顔になっちゃうんです。

[糸井]
ばれちゃうんですか(笑)。

[佐伯]
あのDVDは、ここは手を抜いたらダメ、というところだけコンパクトにまとめてあるんです。

[糸井]
みごとにポイントが絞られてますよね。
やったらいいに決まってるのに、なぜ人はやらなくなるんでしょう?

[佐伯]
うーん。

[糸井]
ぼくは、いい習慣って、たいてい風邪ひいてやめるんですよ。

[佐伯]
風邪で?

[糸井]
風邪ひくと、やめる言いわけがたつからですね、きっと。
美容のことについてもそういう言いわけが多そうな気がするんですが。

[佐伯]
はい、言いわけ、ホントに多いです(笑)。
言いわけする人は、きれいになれないんですよ。

[糸井]
ああ、ほんとうに、そのひと言ですね。

[佐伯]
きれいな人は簡単にきれいになれるんです。
言いわけに負けるようだったら、きれいさを捨てねばなりません。
ここだけやってね、と、絞り込んで継続できることしかわたしは教えてないんですから。

[糸井]
きっとあらゆることがそうですよね。
自分でも、できてることと、できてないことがあって、
「どこが違ったんだろう?」と比べると、やっぱり鍵は「言いわけ」にあるとわかります。

[佐伯]
そうですねぇ。
鍵は言いわけです。

[糸井]
チズさんにとって、
「あれはダメだったな」というご経験は、ありますか?

[佐伯]
うーん‥‥わたしは、できないことはすぐやめちゃうのでね。

[糸井]
すぐ?

[佐伯]
はい。
ダメだと思ったら、引っ張られないようにして、すぐに方向転換します。
3日続けられないことは、どうやっても続かないだろうと思っています。
できないものを、悩んで一生懸命考えても無駄ですから、ちがうものにトライしたほうがいいと思います。



[糸井]
どんなことをやめましたか?

[佐伯]
フランス語、習ったんですけどね。

[糸井]
外資系の会社にいらっしゃいましたから。

[佐伯]
発音も難しければ、単語も難しい。
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