[糸井]
手入れを続けるコツってあるんでしょうか?

[佐伯]
とにかく、まずはやってみることです。
1回でいいからやってみる。
そして、即効性があると、つづけることができます。
ちゃんと鏡を見てる人は、ビフォーアフターの違いがわかります。



[糸井]
いい加減にしか、顔を見てない人は
「違い」に気づかないということか‥‥。

[佐伯]
「やったんだけど」の
「けど」がつくんですよ。

[糸井]
「けど」ね。
サボっちゃったから、とあきらめる前に、言われたとおりにやって、ちゃんと自分を見たらいいんでしょうね。

[佐伯]
その「見る」も、シミ、シワ、たるみ、といった自分の欠点を見るんじゃなくて、もっとちがうところ、自分の肌の本質を見てほしいんです。

[糸井]
欠点が目についちゃうんですね。

[佐伯]
欠点しか見ない人は、つい高い化粧品に手を出してしまいがちなんですよね。
それは、欠点をカバーすることしか考えられないからなんです。
逆の立場で考えると、そのような方には化粧品を売りやすいってことなんです。
「シミを消すにはこの化粧品」
「たるみを消すにはこの化粧品」‥‥と言われてしまうと、誰でもあわてて買ってしまいますよね?

[糸井]
「脅迫」で売れちゃいますから。
見る場所は、そこじゃないのに。

[佐伯]
どこ見てほしいかというと、3つのお尻です。
目尻、眉尻、口尻。
このお話の最初のほうに、きれいのもとは食べることだと申し上げました。
食べることのもとは、噛むことです。
噛むことをしっかりやってる人は、きれいですよ。
噛み癖が、シミ、くすみ、シワ、たるみになっていきますので。



[一同]
(驚)

[佐伯]
3つのお尻を見ていると、こっちのほうでは噛んでないな、トラブルはきっとこれだろうな、とわかります。
それをみなさんは、化粧品のせいだと思ってるんです。
だから思わず、高い化粧品のほうが効果があるのではないだろうか?
という考えが生まれてしまうんですね。

[糸井]
じゃ、欠点じゃない自分を見るということがスタートですね。

[佐伯]
自分をよく見つめて知ってほしい。
みんな、絶対にきれいなところやキュートなところ、いっぱい長所があるんです。

[糸井]
なぜ人は悪いことのほうが見えちゃうんでしょう。

[佐伯]
それは、自分しか見てないからだと思います。
自分がいちばんかわいいので、自分のいいところだけ見ていたい、という気持ちが強くなりすぎちゃってるんです。
だから、欠点を隠したいんですよ。

[糸井]
全部をよくしたいから、隠したい、隠したいと思うと見えちゃうという悪循環。

[佐伯]
そうなんです。
隠す必要があるから、目をつけないといけなくなるんです。
日本人のメイクアップというのはみんな隠そうとします。
だけどね、わたしはもうすぐ66歳ですよ。
このわたしに
「シワがない、シミがない、たるみがない」
って言ったらウソだと思うんです。

[糸井]
うん。

[佐伯]
隠したりメスを入れることもできるでしょう。
そうやって隠した顔をいくらお客さまにお見せしてもウソをお教えすることになってしまうし、お客さまだってそれをおわかりになると思うんです。
そんなことだったら、もう、こんなにしんどい仕事、やらないほうがいいですもん。

[糸井]
チズさんがここまでやってこられた支えはずっと
「お客さんがいた」ということなんですね。

[佐伯]
ええ、お客さまのほうを向いててよかったです。
会社のほうを向いてたら、いま現在のわたしはいないと思います。

[糸井]
会社の中にばかりいたんじゃ、この答え、出ないですよね。

[佐伯]
出ないです。
もう、肩書だとか、個室だとか、ひじ掛けだとかにこだわってたら‥‥

[糸井]
またひじ掛け(笑)。
チズさんの誕生日にひじ掛けをプレゼントしたほうがいいんじゃないだろうか。

[一同]
(笑)

[糸井]
お客さんを見てたら、ぶれない。
これはだれでもできることです。
ということは、その機会をみんなが逃してるんですね。

[佐伯]
やっぱり人間ですからね。
お金も欲しいし、肩書も欲しいし、地位や名誉も欲しい。
それはすごく必要なことだと思うんですが、分不相応なものを持つと、どんどんそっちに気を取られてしまうんじゃないでしょうか。

[糸井]
ずっとお客さんといっしょにやってこられたからでしょうか、チズさんには、つっぱった雰囲気がないんですよ。

[佐伯]
つっぱる対象がありませんものね。



(つづきます)


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