[宮本]
今日はね、糸井さんから、いったい何を聞かれるのかとドキドキしています。
もちろん、私はまな板の上の鯉で、いいんですけれども。



[糸井]
はははは。

[宮本]
糸井さんの聞き方がなにしろすばらしいので、思わぬことをしゃべってしまうかもしれないです。
それがなんとなく「恐怖」です。

[糸井]
ぼくはいつも、こういう対談ではある程度、出たとこまかせのところがあるんですが‥‥じゃあ、今日はもう、ますます考えないことにします!



[宮本]
考えないんですか(笑)。

[糸井]
うん、なんにも考えないことにしました。
あの要素とこの要素がなくて怒る、というような人は、いませんから。

[宮本]
そうですよね。
よろしくお願いします。

[糸井]
お願いいたします。
‥‥で、どうしましょうか。

[宮本]
そうね‥‥そもそも、自分のことを話す機会が、あまりないもんですから。

[糸井]
女優のお仕事というのは、ふだんの自分は、いわば隠れていますからね。

[宮本]
そう。語らなければならない言葉は台本の中にあります。
こういうニュアンスで伝えたいな、ということはありますが、内容を変えてしまうわけにはもちろん、いきませんから。



[糸井]
女優さんが自分で
「こういう映画をやりたい」
と言うことは、あんまりないですよね。

[宮本]
うーん。

[糸井]
あるんですか?

[宮本]
基本的には、女優はオファーされる仕事ですが、
「こういう役がやりたい」とか
「こういう芝居をつくりたい」という希望は、あります。
例えば日本では、私ぐらいの年齢の女性を描く映画はあんがい少ないんです。
あるとすれば、病気のもの。

[糸井]
ああ、なるほど。

[宮本]
介護をしている方、あるいは自分が病気で悩んでいて家族がどうなっていくだろうか、とか、そういうお話が多いです。
だけども、そればっかりじゃなくてもいいんじゃないかな、と思うんですよ。
私ぐらいの年齢や、もうちょっと上の設定でもいい、元気でいきいきして、前に向かっていくような、そういう役ができればいいのにな、とわりとずーっと思っています。
外国だと、そういう映画や役、女優さんもたくさんいらっしゃるんですけど。

[糸井]
日本では、そういう作品はなかなか難しいですね。
受け身でいると、そうじゃないものが主になっていっちゃうんだなぁ。

[宮本]
そうなんですね。
俳優だった伊丹さんが映画をつくったのも、もともとはそういうことだと思いますし。

[糸井]
だけど、伊丹さんが映画をつくることになったとき、宮本さんのほうは、
「あ、ちょうどそういうのがやりたかったの!」
と、思っていたわけではないんでしょう?

[宮本]
えーっと、ないです。

[糸井]
(笑)



[宮本]
そもそも、私は主演ができると思っていませんでしたから。
だけど、私は伊丹さんには、結婚したときからずっと1本でいいから映画をつくってもらいたかったんです。

[糸井]
うん、うん。

[宮本]
これはね、女房だからだと思うんですよ。

[糸井]
女房だから。当然、ありますよね。

[宮本]
女優としての私をまぁ、いちばん、かってくれてたと思う。

[糸井]
うん。

[宮本]
「いい女優なのに、どうして いい仕事がこないんだろうね、きみにはね」
俳優同士の頃、よくふたりで話していました。

[糸井]
そうか、伊丹さんは、そのときは俳優だったんだ。

[宮本]
結婚したときは俳優同士でした。
だから、
「いい仕事ってなかなかないのねー」
「ないよねー」
と、夫婦で話を(笑)。



[糸井]
伊丹さんも、同じようにご自身のことでもそう思ってらっしゃったんですね。

[宮本]
そうだと思います。
(続きます!)


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