[黒柳]
わたしは、すごく、人の言ってることを疑わないんです。

[糸井]
人にも自分にも、
「裏をかく」なんていうことは、ないんですね。



[黒柳]
人が何をおっしゃても、ふーん、って思うんです。
ですから、わたしは人に騙されたこともありません。
所ジョージさんのエッセイに
「黒柳徹子さんに冗談を言ってはいけません」
と、書いてありました。
「ぼくが『牛ぐらい大きい柴犬を飼ってる』って 番組の中で言ったらば、 黒柳さんが、へーっと驚いていたので 冗談を言ってはいけません」
というようなことが。

[糸井]
きっと、黒柳さんには、比べるものがないんでしょうね。

[黒柳]
そう。比べないし‥‥、だって、世の中には、いろんなものがいるじゃないの。

[糸井]
たしかに、いる。

[黒柳]
だから、牛ぐらいの柴犬だって、いるかもわかんないじゃない。

[糸井]
ライオンだって、ぺっちゃんこになるんだし。

[一同]
(笑)

[黒柳]
フッ(笑)、そうよ、ぺちゃんこになるし、この間、カンボジアに行ったら緑の森の向こうのほうに真っ白の羊がいっぱいいましてね。
「はぁ、カンボジアに羊がいるって 知らなかった。
 やっぱり羊もいるんですね!」
って聞いたら
「牛です」
って通訳の人が言うのよ。
「うそぉ、小さいじゃない」
「あれ、遠くだから」



[糸井]
ははははは。

[黒柳]
最初、その動物は座ってたからよくわからなかったんだけど、どう見ても羊なんです。
何回も「うそぉ、羊じゃないの?」
って言ってたら、前のほうからいっぱい歩いてきたんです、白い牛が。

[一同]
(笑)

[黒柳]
痩せてるの。
すっごい痩せてるの。

[糸井]
牛だった。

[黒柳]
牛だったの。ほんと。

[糸井]
だから、そんな柴犬がいてもいいですね。

[黒柳]
そうなんです。牛のような柴犬が、かわいいかどうかは別として、いるかもしれないでしょ。
世の中には、知らないことがいっぱいあるのでね。



[糸井]
やっぱり黒柳さんは、基本的に比べないんですね。
うーん。
あの、ぼくは、前にあの(笑)‥‥

[黒柳]
なぁに(笑)?

[糸井]
「比べない」で、いま、思い出しました。
黒柳さんが100円ショップで買い物をする番組を見たんです。
黒柳さん、あれこれほんとに、全部買ってました。

[黒柳]
うん。3万円分、買ったんだもん。

[一同]
(驚)

[糸井]
100円ショップでいっぱい物を買うってわりと骨が折れることです。
だけど、黒柳さんはちっとも大変じゃない。
あっちが安いとか、こっちのほうがお得とか思ってないからね。

[黒柳]
「100円の老眼鏡、あ、これ 野際陽子さんにあげよう」
「『徹子の部屋』のスタッフに 100円の傘あげよう」
とか言ってるうちに、3万円分買ったの。
それでびっくりしたことは、3万円のものを100円ショップで買うとマンションのドアに入らないんです。

[糸井]
ああ(目をパチパチ)。



[観客]
(爆笑、拍手)

[黒柳]
大きい袋なもんだから、一度に部屋に入ろうと思ったら無理だから、中でぐじゅぐじゅにして、フッ(笑)、押し込まないとダメでした。
当時はVHSでしたけど、ビデオテープが100円だもの、安いでしょう?
目覚まし時計とか、お鍋とか、いろんなものを買いました。
サンタクロースより袋がもっと大きくなった。

[糸井]
3万円って、300個ですよね。
それをいちいち、何かを思って、買ってましたよね。

[黒柳]
もちろん、そう。

[糸井]
丁寧に選んでましたよ。

[黒柳]
お紅茶やコーヒーをいれるのに上から葉っぱやコーヒーをグーっと押すポットもいつもは赤坂のお店で何千円もするやつを買ってたのに、きれいな色のが100円ですもん。
悔しいと思って。
前持ってたのを、誰かにあげて、これを自分で使おうとか、だから、そのときの色合いとしては、こういうのがいいとか、

[糸井]
いちいち、いっぺんに考えるんですね。

[黒柳]
そう。
すごく考える。

[糸井]
つまり、その、やっぱり敏捷ですね。

[黒柳]
敏捷よ。
「考え敏捷」。

[一同]
(笑)

[黒柳]
もの買うときにあんまり迷ったりすることはありません。
服も、試着しない。


(比べない、いつも楽しそうな黒柳さん。
つづきを読む

前へ 次へ
目次へ    
友だちに教える
感想を送る
ほぼ日のTOPへ