01 六花亭本店
JR帯広駅の北口から徒歩数分、六花亭の本店。
ファンの間では有名な話なのだが、この店には「賞味期限3時間のパイ」がある。
なにしろ買ってから「3時間以内」に食さねばならないため、とうぜん、東京の物産展などにも出ない幻のパイ。
いったい、どんなお味なのであろうか‥‥。
六花亭を愛するわれわれ取材班としては、ぜひとも、食べておかねばならない一品である。
[おっくん]
ついにこのときが来た‥‥。
[タグチ]
来ましたね‥‥。
[スギエ]
来たわ‥‥。
[一同]
こんにちはー!
[店員さん]
いらっしゃいませ!
[──]
すみません、こちらに
「賞味期限3時間のパイ」があると聞いて、東京からやって来ました。
[店員さん]
はい、当店の「サクサクパイ」のことですね。
厳密に言いますと、賞味期限ではなくて
「サクサク」を楽しんでいただくにはぜひ3時間以内に召し上がっていただきたい、というお菓子なんですけれど。
ついに我々は「サクサクパイ」と待望の初対面を果たした。
[──]
おおー‥‥こちらですか! 1本140円。
すでにおいしそうです!
[店員さん]
ふふふ。
[──]
さっそく、弊社の
「食べるフォトジェニック」との異名を持つスギエに食してもらいましょう。
[スギエ]
はーい、今回の出張は、おもにこのために来ました。
いただきまーす! ぱくっ!
[スギエ]
えっ!? うわー‥‥。
[──]
ど、どうですか、スギエさん!?
[スギエ]
‥‥サックサクです。
[──]
やはり‥‥。
[スギエ]
サックサク〜! でも、この中のクリームって、何ですか?
[店員さん]
ふつうのカスタードクリームです。
[スギエ]
えっ、本当にふつうの?
[──]
美味しいんですか? 美味しいんですか?
[スギエ]
美味しい‥‥。
[店員さん]
ありがとうございます。
本当にふつうのカスタードクリームなのですが、バターの代わりにショートニングを使うお菓子屋さんも、よくあるんです。
六花亭ではバターしか使っておりませんのでそういった部分でのちがいは、あるかと思います。
[スギエ]
ははー‥‥。この「サクサクパイ」って1日にどのくらい売れるものなんですか?
[店員さん]
ふだんは、そうですね‥‥300本ですとか。
[スギエ]
300本!
[店員さん]
夏場などの繁忙期ですと1日に1000本などということも。
[スギエ]
1000本!
[店員さん]
この本店はじめ、厨房設備の整っているお店で作って販売しているのですが、その時期、1人はもう
「絞りっぱなし」状態ですね。
[スギエ]
カスタードクリームを? 絞りっぱなしって‥‥。
[店員さん]
あまりないことなんですが、もし1時間、ショーケースに入ったままだったらその商品は下げてしまいます。
[スギエ]
それは、サクサクのために?
[店員さん]
サクサクのために。
[スギエ]
すべては、サクサクのために‥‥。
[──]
なるほど、作ってから1時間以内に売っているから
「買ってから3時間」と案内できるんですね。
[店員さん]
ちなみに、こちらの「雪こんチーズ」は
「買ってから2時間以内」をおすすめしてます。
[スギエ]
こんどは2時間? 急がなきゃ!
[店員さん]
このココアビスケットが湿気ちゃうまえに召し上がっていただきたいので。
[──]
ちなみにこれは、あの「雪やこんこ」から、着想を得て?
[店員さん]
はい。あちらは、ココアビスケットにホワイトチョコレートをサンドしていますが‥‥。
[スギエ]
ええ、ええ、そうですね。
[店員さん]
ベイクドチーズケーキをサンドしたらどうなるんだろう、と。
半信半疑で試したら「あ、いける」と。
[スギエ]
ははぁ‥‥。半信半疑で試した人とは?
[店長]
社長です。
[スギエ]
小田社長‥‥さすがだわ!
[──]
スギエさん、そろそろ食べてみてくださいよ。
[スギエ]
え、いいですか? それじゃあ遠慮なく‥‥。
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