05 六花文庫 その2
前回に引き続き、六花文庫の日浦さんにおもしろそうな本を、紹介してもらっています。
まずは一見、何の変哲もないこちらの本。
『世界のジャガイモ料理事典』
[──]
この本、どこがどんなふうに‥‥。
[日浦]
「著者」のところを見てください。
[──]
国際‥‥バレイショ研究所?
[日浦]
ええ、国際バレイショ研究所。
[──]
そんな研究所が。
[日浦]
ペルーにあります。
[──]
え? あ、それじゃ、ほんとに「国際」なんだ。
[日浦]
だから、正式名称というか、英語表記では
「International Potato Center」と。
[──]
インターナショナル・ポテイトゥ・センター!
[日浦]
そんなところが出している『世界のジャガイモ料理』のレシピ集なんです。
[──]
ははー、つまりジャガイモ料理の「聖典」に当たる本だと。
ポテトパイ、マッシュポテトからジャガイモドーナツ、果てはジャガイモキャンディーまで‥‥。
[日浦]
冷涼で痩せた土地でも育つジャガイモは歴史上、いくつもの飢饉を救ったと言われています。
そういえば、2008年は「国際イモ年」でした。
[──]
「国際イモ年」‥‥。
[日浦]
IPCのあるペルーが、ジャガイモの啓蒙のため、FAOにはたらきかけて実現したようですが。
[──]
「IPC」というのは、
「インターナショナル・ポテイトゥ・センター」‥‥。
[日浦]
あ、そうそう、この絵本、ごぞんじですか?
『チョコレートをたべた さかな』
[──]
えー、「チョコレートをたべた さかな」。
ぜんぜん知らないです。
[日浦]
松本大洋さんの『鉄コン筋クリート』のなかでシロ(註:重要な登場人物のひとり)が読んでるんです、この絵本を。
[──]
へぇ! どの場面だろう?
[日浦]
話の筋にはまったく関係ないんですけどね。
[──]
松本大洋さんが、好きだったのかなぁ。
でも、よく気づきましたね。
[日浦]
『鉄コン筋クリート』を読んでたらなにか、本当にある絵本のような気がして‥‥。
で、調べたら、あったんです。
[──]
ふーーーん‥‥(しばし読む)。
[──]
(ぱたん)‥‥ああ、こんな結末。
[日浦]
ぐっと、きますでしょう?
[──]
なにか、ぎゅーっとします。
[日浦]
シロが読んでいそうな絵本でもあるし。
‥‥とまぁ、このような感じで、いつまでいてもオッケーなことをいいことに、薪ストーブわきでホットコーヒーとリッチランドをいただきながら、ついつい長居してしまいました。
話を聞くと、日浦さんは、札幌のお店で開かれるクラシックコンサートの運営なども担当していたりするのだそうです。
また、小田豊社長から
「フクロウのかたちのお菓子を出すんだけど 何か、いい名前を考えて」とリクエストされ、北原白秋の短歌
梟はいまか眼玉を開くらむごろすけほうほうごろすけほうほう
から「ごろすけホーホー」と名付けたんだとか。
職場には、たったひとりだけ。
本社のある帯広からも離れていますし、手を抜こうと思ったら、カンタンですよね? ‥‥ってちょっといじわるな質問してみたら
「そんなことしたら お客さんが、来てくれなくなっちゃいますから」。
毎日、さぞかし大変でしょうけど、ご自分から「六花文庫をやりたいんです!」って手を挙げたんだそうです。
当時、入社1年目でそう言った日浦さんもすごいけど、そんな新人に任せちゃったのも六花亭らしいところなんだろうなぁと思いました。
「ごろすけホーホーには ごろすけフーフーという奥さんがいるんです。
え? フーフーの中身? あんこです。
こちらは、寺田寅彦の句 ホーといえば フーと応えて 小夜梟 からとりました。
ちなみに、夫婦の間には ごろすけピーピーというこどもも生まれたんです。
でも、ピーピーは親もとから巣立っていきました。
だからいまは、夫婦水いらず(笑)」
六花文庫
所在地 北海道札幌市南区真駒内上町3丁目1−3問合先 011-588-6666 詳しくは
こちら
開館時間 10時〜17時休館日 日曜日・年末年始
<つづきます>
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